巨大モニターに映る一機の戦闘機。
それが徐々にロボットモードに変形していくと、高層ビルを次々と撃ち倒していく。
ほぼ黒一色のボディが爆炎に照らされ、その姿を露わにしている。
そのトランスフォーマーは達には見覚えがない。
<そういや、この星に来る前グリーが言ってたな。ディセプティコンにいつリーダーになってもおかしくない
"No.2"がいるって。>
名はライトスクリーム。
それ程の強者がこの地球に来ることをオートボット達は理解できなかった。
デッドラインのような中級戦闘員レベルの者で十分であるのに関わらず、だ。
何か狙いでもあるのだろうか。
「・・・とやかく考えても仕方ない。現在応戦しているグリーの元へ急ぐんだ!
今はマスコミや一般人には漏れていないが、いつ公にされてもおかしくない。」
ライトスクリームが暴れている街には至る所にスパイク達が作り上げた『カモフラージュ装置』が設置されている。
その包囲されている場所はその域以外の人間からでは何も変わらない景色として目に映される。
ただし、その装置が破壊されてはおしまいだ。
<さあ!皆分かってると思うが本当の実戦だ!気を引き締めなよ!>
「(・・・実戦か・・・)」
敵のトランスフォーマーとの直接対決―――それは彼ら人間にとって初めての経験である。
は以前デッドラインとの戦闘を繰り広げたが、
その時はまだ『存在変換』の力を発揮していなかったり、TF化したものの自我がなかったりとあやふやだ。
「こんな状況に言うのも何だけど・・・いきなり実戦未経験の私達が行って逆に足手まといにならない?」
<・・・僕らにとっちゃ必要だよ。悔しいことにディセプティコンは戦闘のためだけに生まれ、
その技術センスも長けている。ライトスクリームのような高等クラスには多勢でなければ勝ち目ない・・・。>
「・・・そんな相手に初戦か・・・。」
まさに絶望的と言ったような声色でディランは思わず息を吐いた。
既に暗い雰囲気に陥っている彼らにスパイクはロランJに非難の声を上げる。
「こらロランJ!もう少し気の利いた言葉が言えないのか!?」
<・・・実際会えばどんなフォローも効かないよ。>
あの強気な態度はどこへ行ったのか、今のロランJも乗り気でないように見える。
被害が広がる前にこの状況―――非情にまずい。
セツとの仲間割れ、戦意喪失―――それはこの地球に最悪な未来が待っていることを意味している。
「あっ・・・あの・・・っ!」
静寂の中、俯いていたが震える声を上げた。
「私を・・・・・・戦場へ連れていって下さい。」
その言葉に皆の視線を一気に集めた。今の状況からして、かなり無謀とも取れるセリフであった。
「地球を守れるかどうかはともかく・・・そのディセプティコンをどうにかしなきゃいけない・・・。
でも私一人だけじゃ多分無理です・・・。本当は皆さんと力を合わせて行きたいのですが・・・・・・
何とかやってみます。」
自分一人だけでも立ち向かうと言うの握る手は震えていた。
だが、そう伝える彼女の瞳に偽りはない。
「―――待ちなさい。誰が一人行かせるって決めたの?」
「シニョリーナだけ戦わせるなんて俺にはできないね。」
相沢に続いてディランが前に出る。
タイミングを見計らってスパイクはロランJに「言ってやりなよ。」とこっそり告げた。
<あっ・・・当たり前だよ!僕をのけ者にして良いところを持っていくなんて100万年早いよ!>
いつものロランJのセリフに思わず全員笑みを浮かべた。一人だけ浮かない表情でいるセツを除いて・・・。
たった一人の20歳にも満たない少女の一声で殺伐とした空気が一変したことは人間側から見ても、
『奇跡』としか言い様がない。だが、彼らならやってくれるかもしれない。
「君達に名称を与えよう。トランスフォーマーに変身する人間―――Trans Human Formers『THF』!!」
達はヘリコプターに乗り込み、ロランJは単独で海中に入り、それぞれ同じ目的地へ向かった。
飛行中、彼らは何も発しなかったが、先程の不安の色はなかった。
「(怖くないと言えばウソになる・・・。でも、それは皆同じ―――)」
唯一心残りがあるとすれば、セツのことだ。本当なら彼と共に行きたかった。
でも彼はまだ達に心を許していない。
そう考えている内にも、遠くから轟く音が機体を振動させた。
目的地すら見えないその先で激闘が待っている―――。
もう後には退けない・・・。やるしかない・・・ッ!!
まだ見ぬ敵を想像しながら、自分にそう言い聞かせるよう拳を震わせるのだった。
***
達を乗せたヘリコプターを見送ったスパイクはすぐさま自分ができる限りのことに尽くそうと研究所内へ戻った。
その時、ふと何か違和感を覚えた。何か変だだ・・・・・・何が・・・?
「どうしたんだスパイク。」
「チップ・・・・・・ヘリに乗ったのは全員か?」
スパイクの言葉に怪訝な表情を浮かべつつ、「そうだ。」と答えた。
「に相沢総司、ディラン・マックケイトの計三名のはずだけど・・・。」
「ああ、そうなんだ。そうなんだよ。」
頭を振って眉間を押さえる親友に、チップは益々表情を歪めた。
「いないんだよセツが―――この研究所内に!」