「私の体が・・・・・・トランスフォーマー化・・・!?」 とても信じ難い話だ。何故昨日まで人間だった(はず)自分が機械人間にならなきゃいけないのだ。 だがが言うセリフに<ちょっと違う。>とグリーが指摘する。 <完全な機械・・・までは言えないな。何せ君の体は今でも生身の肉体のままだ。 考えられるとすれば偶然、オールスパークの欠片とロランの破片が共鳴して融合(ヒュージョン)した・・・としか言えん。> 本人はありのままに言っているつもりのようだが、今の自分の頭では理解し辛い。 だが彼の言うには、こういうことは今まで経験上ないと言う。 <君は意識がないって言っていたからね。ここで試しに変身してみようか。> 「えっ・・・?」 そう言うや否や、彼が指だけで支えている何かの部品を体に押し付けられる。 全く無防備だった彼女の体が即座に反応した。 <そうだ!これだよ!この光が・・・!> 「っ―――何を勝手なことを・・・!」 <責任はちゃんと私が持つよ、スパイク・ウィトウィッキー君。> <君達だって確かめたいんじゃあないのかい?>返す言葉がない。 複雑な思いを抱える中、トランスフォーマーが変形するあの独特な機械音が響く。 そしてロランJにとっては二回目の披露となる白い機体を現した。 人間の肉体ではなく本当にロランJ達と同じ金属だ。 「まさか本当に・・・こんな・・・!」 「信じられない・・・。」 「当たり前だけど・・・生物化学でもこれは解き明かせそうにない・・・。」 それぞれ感想を述べる一方で進行した張本人は意外にも無反応だった。 だがよく見ると感極まった様子で手を震わせていた。 <・・・美しい・・・。> <はあ?>と言いた気なロランJだが、グリーは至って真面目だ。 <有機生命体から金属生命体に変わる瞬間を目にするなんて貴重(レア)な経験だ! あんなちっぽけな鉄クズでも科学反応を起こすのか!> 冷静に的確に判断して仲間の救命活動をしているグリーが今、訳のわからない言葉を交えて興奮している。 見たことない一面を目のあたりにしていると、のカメラアイがグリーに移す。 ただよらぬ雰囲気にロランJは慌て出す。 <気をつけろ!意識がないどころか敵味方区別さえつか―――。> 言い終える前にの巨大化した機体が崩れ落ちる。 グリーのいるであろう先に電磁砲の火花を散らす彼がいた。 <なるほど・・・ロランの言う通り自我はまだ目覚めていないようだ。> 「なっ・・・・・・!」 「なんてことをするんだお前は!!もし彼女に何かあったら・・・!!」 <少し痺れさせただけだ。何、我々と同じ体である今ならこのくらい平気さ。> 「・・・そうだといいんだけどね・・・。」 さっきまで『美しい』だの『貴重』などと口走っていた同一人物(人ではないが)とは思えないこの切り換えぶり。 しかし、これで簡単には済まない問題がまた一つ増えてしまった。 「これでまた被害が広がってしまった・・・。彼女の保護者にもどう説明すれば・・・。」 「オールスパークの欠片を取り除くというのは可能なのかい?」 <可能ではあるが・・・もしそれが人間の心臓とリンクしていれば命を落とすリスクが高い。> 絶望的だった。我々だけでは成す術はないのか。すると気絶していたのカメラアイに光が走る。 ロランJとグリーが身構えると突然スパイクが待ったをかける。―――何か様子が違う。 <ジ、自分・・・の意志で・・・・・・変形(トランスフォーム)するこトは・・・でキる、ノ> 「貴女・・・意識を!?」 <もちろん逆も可能だが何故?> 先程の彼女のセリフを思い出し、の立場からすれば考えられないことだった。 震える機体をゆっくり起き上がらせるに皆の視線が集まる。 <どうセ、今の私ヲ見て悲しむ人はいナイ・・・。それに自分の身は自分で守ラないと・・・!> この短時間で自我を取り戻すことは相当時間を使うはずだ。 だが今では若干片言が入ってるものの、聞いてても理解できていた。 それでも金属の体に慣れていないが、そのカメラアイから強い意志をひしひしと感じる。 <どうしても、と言うのなら協力しよう。まずその状態をもう一度確認しようか。> 「まっ・・・待ってくれ!君はっ・・・!」 焦るスパイクの姿がのカメラアイに映り込む。 「君は『被害者』なんだ・・・。これ以上傷つく必要はないだろ?」 最初は不信感しか抱いていなかった彼らだが、 スパイク達は本当に全く面識のない自分をこんなにも気遣ってくれるんだと今改めて実感した。 蔵人以外にも、こんなに優しい人はいるのだと。けれど―――。 <・・・ありがとうウィトウィッキーさん。 でも悩みを抱える貴方達の手助けするためにも『強さ』が必要だから。> 今、彼女の顔は本当に機械と一体化しているように能面でフェイスマスクをしているせいか、 人と違って表情が読めない。だが今の彼女の目はとても穏やかに見える。 早速グリーの指示通りに動くの背中を見るスパイクにチップが軽く体を叩いた。 「たったこの短期間の内に置いてかれちゃったな。」 「・・・そうだね。」 僕が知らない間、彼女は何を見て、何を思ったのか。 辛い現実に目を逸らしたくなかったのだろうか。不安に思わなかったのだろうか。 もし自分が同じ立場だったら・・・周りに仲間がいなかったらどうすることもできなかっただろう。 最愛の育て親と別れ、赤の他人でもある僕らのところへ出向いた。 彼女にとって孤独であるはずだ。 一体『何が』、彼女を動かしたのか―――。 「(・・・そんな人間をサポートするのが・・・僕らの役目じゃないか!!)」 予想外の連続に戸惑ってしまったが、もう心配はいらい。 それにこれ以上、置いてけぼりにされる訳にはいかないんだ。