*ややうろ覚え
*突発的なので続かないと思う
朝ご飯を食べようと食堂に着いた時から謎の違和感を覚えた。
皆で食べる光景はいつも通りのはずなのに。昨日左近とホラー寄りのミステリー映画を観たせいだろうか。
そのモヤモヤを抱えたまま時間だけが過ぎ、さあ帰ろうと下駄箱まで来て、ふと校門を見た。
「あれ・・・」
「ちゃんとこの左近の兄ちゃんだべ?」
いつきの言葉には頷く。
あの赤いメッシュが入った茶髪とあの顔を見間違うはずがない。
彼は此方に気付くと手を振った。達は手を振る彼の元へ駆け寄る。
「おう、いつき久しぶり」
「左近の兄ちゃんどうしたべ?」
「んーちょっとな。さ、帰ろうぜ!いつきも途中まで一緒にな」
は首を傾げつつも、いつきの手を握って左近の背を追った。
周辺が賑やかになってきた所でいつきと別れた。
「何かあったの?」
「・・・うちのオフィスに犯行予告が来てた」
「は?」
以前から世間の注目を浴びている怪盗キッド。
今朝会社のロビーの中心に置いてある植物から巨大なイ◯ヤスくん人形に置き換えられていたという。
その人形に予告カードを添えて、だ。どういう意図?
「ただのイタズラだって最初は思ったけどさ、
そもそもセキュリティを突破して馬鹿でかい人形を中に入れるとか無理だっつーの。
同じ豊臣の人間がやりそうとは思えねえし」
「どうすることにしたの?」
「一応警察に対応してもらうことになった。
うちに堂々と不法侵入されてっからな、三成様なんてずっと目だけで殺しそうな顔だったぜ?」
「ああ、うん・・・」
相手が手練れの奇術師だろうと、逮捕だけじゃ彼は許しはしない。
なんて脳裏に浮かべていると社宅の周りに見たことのないスーツの男たちが先程左近が話していた
三成のような目つきでウロウロしていた。十中八九、左近のいう警察の人たちだろう。
「わあ、すごい」
「三成様には負けるけどな」
「そこの君」
近くにいた男性に声を掛けられ、左近がやや緊張した顔つきで振り向いた。
「へい、何スか?」
「そちらのお嬢さんはどこの子だい?今朝は見かけなかったが」
「です。竹中副社長の養女で俺らと社宅に住んでますよ」
「といいます、初めまして」
半兵衛の養女と紹介されるのはあまりない。
竹中と名乗っても周りが大袈裟に反応するわけでもないので気に留めていなかったが、
相手方はこの状況というのもあって眉をひそめていた。
「竹中副社長の・・・」
「なんか気になることでも?」
「いや、竹中副社長もこの会社の顔だからな。あのキッドが手を出すことはないだろうが、
今夜は部屋から一歩も出ないようにしてくれ」
「了解ですっと。だってさ、」
「わかりました。お仕事、大変そうですけどがんばってください」
「おお、ありがとうな」
の頭をくしゃくしゃに撫でて、飴玉を渡して去っていった。
子供扱いされるのはぎこちないが満更でもない。対して左近は真剣な表情だった。
「豊臣の顔、か・・・その親族関係者にも挑戦を!って解釈しなくもない、か・・・」
「そうかなあ」
「いや、わからねえぞ?豊臣に泥棒するとかとんだ命知らずだぜ?
そいつが一体何しでかすか油断できねえ・・・」
「そうだね!」
「うわあ!」
突然現れた男の子にこれまた大袈裟にリアクションする左近。
ほんと飽きないなあと苦笑していると、男の子と目が合った。
「こんばんは!お姉ちゃん」
「こんばんは、君はどこから来たの?」
「東都からだよ!ボクは江戸川コナン、よろしくね!」
「あ…竹中です」
小さいのにハキハキしてるなあと感心する。小学生でいうと低学年のように見える。
「おい、今東都からって言ったか!?」
「うん!さっきは驚かせてごめんなさい」
「え?ああ、気にしてねえよ。いや、それよりも坊主は誰と来たんだ?」
「えっとねー」
コナンが答えるよりも先に拳骨が落ちてきた。すごく痛そう…。
「こんのクソガキは!うろちょろすんなっつったばかりだろうが!」
「すみません!この子がご迷惑をかけましたか?」
さっき声をかけてきた刑事よりも年上の男性とその娘であろう少女。
この二人がコナンの保護者であるのは確実だった。
「いんや?こっちは何の問題ないっスよ、な?」
「うん、見つかってよかったねコナンくん」
「ボ、ボク迷子ってわけじゃ・・・」
「これから豊臣社長たちと大事な話がある。蘭、こいつから離れるなよ」
「う、うん、いってらっしゃい」
コナンがボクも行くと声をあげるが、皆に迷惑かけちゃだめと少女が引き留める。
先程の礼儀正しさとは一変して駄々をこねる姿はなんだか妙に思えた。
あの男性はこれから怪盗キッド対策として具体的に何するか話し合うのだろう。
「蘭さん・・・だっけ?ここに突っ立てもしょうがねえし、俺らと夕飯食べません?」
「え、でも・・・」
「大丈夫大丈夫!社長たちが今回はってことで特別に他の人たちにも食堂開放してるから!」
自分が学校にいっている間にそんな話があったのか。
この会社の社員の数だって少なくはないのに、やはり豊臣は格が違う。
「大丈夫ですお姉さん。見た目はチャラいですけど中身は律儀です。
うちも一緒にいるので安心してください」
「ちょっと一言余計だぞー!」
「・・・ふふ、ありがとう。じゃあお言葉に甘えよっか、コナンくん」
「う、うん・・・」
コナンは完全に納得していない様子だが、
がっちりと肩を掴まれて逃げられないのを理解してため息ついていた。
何故そんなにも行きたいのだろう。キッドのファンなのかな?
(けど島さんも参加しなくて大丈夫なんですか?)
(あー・・・俺は入社したばっかの新人なんで待機っスね・・・
そんなに人をよこす必要ないから上層部しか集まらないんじゃあねえかな)
((それ言っていいの・・・?))
(左近兄ちゃん、本当は参加したかったんじゃない?)
(そりゃあな!三成さ・・・三成課長も出てるんだからいずれ左腕の俺だって・・・!)
((石田さんか・・・あのおっちゃんがたじろぐなんて、まるで拗ねらせた戦国武将のような人だったな・・・))
2019/05/16