*公姫さん宅の莉乃ちゃんと二部IFルートの自宅夢主の長女と長男しか出ません
*夢主は名前のみ
「リノー絵本読んでー。」
「ジュリはさっき読んでもらったでしょ。今度はわたしの番!」
自分の腕に収まる絵本を持ってきた弟を押しのけ、小さな姉は莉乃の前にぐいっと出た。
莉乃は二人の視線に合わせ、体を屈んだ。
「なあに?」
「これ・・・まだ未完成なの・・・・・・いっしょに描いて?」
そう言って棗が見せたのは白い画用紙。
下側にちょっと大雑把に広がる緑は原っぱをイメージさせた。
莉乃はにっこりと微笑んだ。
「いいよ。ジュリアスくんもいっしょに、ね?」
棗は一瞬むすっとなったが、渋々いいよと言った。
ジュリアスはやった!と軽くジャンプすると、莉乃もつられて微笑んだ。
***
「おかえり棗ちゃん。ご飯、食べる?」
棗は無言で玄関から入ると、莉乃がにこにこと出迎えてくれた。
それは小さい頃からずっと変わらなかった。
沈黙が続く中、「後で」と棗はそそくさと自分の部屋へ戻っていった。
その様子を見ていたジュリアスがごめん、と莉乃に謝った。
ジュリアスが謝ることは何もないと、莉乃は首を振った。
「帰りが遅かったからね。疲れてるんだよ。だから、そっとしてあげて。」
「…うん。」
二人が思春期に入り、「リノ!リノ!」と遊んでくれと訴えていた小さな女の子から
いつしか笑みが消えていた。
莉乃に対して、これといった反抗的な態度は見せないものの、昔のような無邪気さはなかった。
莉乃は彼女に気遣っているだけで、本当は気付いているのではないかとジュリアスは思った。
そんなある日、家事を終えて部屋の電気を消そうとした時、突然ブツッと目の前が真っ暗になった。
停電かな?二人は大丈夫かな?と少し心配しつつ、目が慣れて来た所で部屋を出ようとした。
「棗ちゃん・・・?」
ちょうどドアの向こうに棗が毛布を持って立っていた。
何だか様子が違うことに気付き、おそるおそる声をかけた。
「リノ・・・リノは・・・・・・。」
「うん?」
「リノはいなくなったり・・・しないよね・・・?私達を置いてかないよね…?」
震える声で言う棗の言葉に莉乃は全てを悟った。
棗とジュリアスは幼い頃、莉乃の知人である―――つまり母親が突然姿を消したのだ。
どんなに探しても見つからず、まだ小さかった二人の面倒を莉乃が見ることになった。
何故そうしようと思ったのか、莉乃自身もよくわからなかった。
自分も時を超えて生きているのだから・・・いつ、また時を超越してもおかしくない。
「大丈夫だよ、私はまだ、ここにいるよ。」
まだ、まだ自分はここにいる。
そう自分にも言い聞かせるようにしゃっくりを上げる棗の背中を優しく撫でた。
「ほんとに?」涙目で莉乃を見た。
「だったら棗ちゃんの目の前にいる私は誰なのかな?」
「そんなの・・・決まってるじゃんか!」
棗は莉乃の服にしわができるほど抱きしめた。
ぎい、と音を立てて別のドアが開いた。
「ん〜・・・棗ーリノー・・・どうしたの?」ジュリアスが眠気眼で聞いて来た。
棗はごしごしと強く瞼をこすった。
「別に、なんでもない!」
強気な発言だが、いつもの棗に戻ったと笑みをこぼした。
ジュリアスは訳が分からず首を傾げた。
二人におやすみと告げようとしたが、棗が莉乃の裾を引っ張った。
「一緒に寝ちゃ・・・だめかな・・・。」
弟に聞かれたくないのか、かなりの小声だった。
莉乃は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。
「リノと寝るの?僕も寝るー!」そんな空気を読まないジュリアスが莉乃と棗の間に割って切った。
棗はぶすっとしたが、反対はしなかった。
「また三人と寝るの久しぶりだね。」
狭いベッドの上で横になりながら、サンタナ達ともこうだったかなあ、と思いながら重い瞼を閉じた。
***
#ふぁぼしてくれた人のお子さんとうちの子で小話書く