何だろう・・・頭―――というより額が冷たくて気持ちいい。
このままずっと心地良い眠りに身を任せたいところだが、どうしてこんなことになったんだっけ・・・?
「あ・・・よかった!大丈夫?家の前に倒れていたんだよ?」
「(へっ・・・?)」
見覚えのない髪の長い女の子に、知らない家。ジョースター邸と負けないくらいの広さだ。
―――私は何故にこの家に・・・?
「あの、お水飲める?」
お言葉に甘えて用意してくれたコップ一杯の水を飲み干す。
・・・この感覚・・・まさか脱水症状を起こしてた・・・!?
「私はジョアン!あなたは?」
≪―――です。≫
日本語で喋っているので、「(いつもの言語で大丈夫かな)」久々にその文字を書いた。
すると少し驚いた表情で私を見た。(うん、その反応だよね、普通・・・)
「―――本当に覚えてないの?」
≪お恥ずかしながら・・・。≫
どんなに頭の思考を回転させても、以前までの記憶がない。
嗚呼っ・・・私は何回他人に迷惑かけたら気が済むんだ!
「そんな落ち込まないで。パニックで思い出せないだけじゃないのかな?それまで休んでって!」
≪―――本当にいいんですか?≫
「ふふ、もちろん!」
何ていい子なんだ!日本(さっき聞いた)にもまだ彼女のような人がいたなんて―――誇らしいね!
(何か引っかかること言っちゃったけど気にしないで)
「でも・・・。」
「(?)」
「年近いんだし・・・敬語はなしにしよ?と言うより始めからいつも通りに喋っちゃったけど・・・・・・だめ?」
≪―――そんなことない!!≫
そう言いながら私を見つめるその瞳はハッキリ言って反則だ。犯罪級だ!!
例えるならそう、某CMに出演するあるチワワのようにうるうるしたあの瞳。
頷かない訳がないッ!!!
「ただいまー。ジョアン、いるかい?」
「(この声・・・!)」
「おかえりジョナ兄ー。」
「(ジョナって・・・・・・まさか!?)」
振り返ると予想通り、ジョナサンがいた。(ただ現代の服装をしているのが少し気になるが・・・)
ようやく知っている人物が現れて嬉しくなる私をよそに、
「ジョアン。その子は友達かい?」
まさに鈍器で殴られたような衝撃に、私の視界がフェードアウトした。
「―――本当に大丈夫かい?病院に行かなくて・・・。」
≪平気です・・・。≫
精神的ショックで再び倒れた私はもう一度現状把握のため、記憶を整理した。
@ここは現代の日本
A家族構成は父ジョージさん、長男ジョナサン以外かなり異なっている(ちなみに彼女は末っ子だと言う)
B19世紀ジョナサン≠今のジョナサン
・・・ざっくり言えば『パラレルワールド』―――と仮定するしかない。(これ以上考えたらパンクしそうだし)
「(そうなるといつ元に戻れるか分からないな・・・)」
「ちゃん!」ジョアンの声に我に返って顔を上げると、キンキンに冷えたカップアイスを手渡された。
「いつまで考えてもしょうがないし、とりあえず火照った体を涼ませないとね。」
「あ、それバニラ何だけどチョコもあるよ?どっちがいい?」
流れからして完全にそういう形にさせたいようだ。
別の世界のジョナサンも、そして妹のジョアンも・・・なんて優しいんだッ!!
ジョースター家はどの世界でも天使のようだ!
「(私はいつも優しい人のお世話になっちゃうなあ・・・)」
感激のあまり思わず涙を浮かべると、具合が悪いと誤解した二人は慌て出す。
「(本当に兄妹だなあ・・・)」と思いながら、くすくす笑った。
そんな笑い声すら出せない奇妙な光景にジョナサンとジョアンは優しく微笑み返した。
ジョアンと他愛なお喋りをして幸せな時間に浸っていると急に違和感を覚える。
さっきまで涼しかった室内にいたはずなのに、生暖かい風が肌を通った。
「―――ッ!ああっ・・・よかった!」
「(あ・・・あれ?ジョナサンの服装違う・・・)」
「いつまで経っても戻って来ないから様子見たら庭で倒れてたんだよ!ちゃんと帽子被ってた!?」
・・・そうだった。いつものように庭でほうきで掃いてたら意識を手放してたんだっけ・・・。
じゃあさっきのは・・・夢だったのかなあ・・・?
「今度庭に出るのは―――外出するのは禁止だからね!」
まるで母親のように叱咤するジョナサンが、別の世界の(いや夢の?)ジョナサンと重なる。
何だか寂しい・・・。もし夢ならまた二人に会えるかな?
「聞いてる?・・・もしかしてまだ気分が悪かった!?ああ、ごめんよ!気づかなくて・・・!!」
「(どっちもどっちで落ち着きがないなあ・・・)」
***
「ジョッ・・・ジョナ兄!ちゃんがっ・・・き、消えた!!」
「え?もう帰っちゃったの?」
「違うの!本当にたった一瞬で・・・・・・もっとお話したかった・・・。」
「大丈夫だよ。理由はどうであれ、会えたのも突然からなんだよね?また近い内に会えるんじゃないかな。」
「・・・そうだといいな・・・でも、変なこと言っちゃうと何か・・・『遠い存在』じゃないって感じだったな。」
「本当に不思議だね。ぼくもそう思ったよ。」
「たっだいま〜ジョアン!兄貴!」
「あっ、ジョセフ兄おかえり!」
「おかえりジョセフ。」
「あー今日も暑苦しいぜ・・・っておれのバニラ!誰だ喰った奴は!?」
「(あ・・・そういえば・・・・・・)」
「邪魔するぞジョジョ。ジョアンはいるか?」
「やあディオ。できればノックしてから入って―――。」
「てめーかDIO―――ッ!!おれのバニラァァアアア!!」
「い、一体何の話だ!?WRRRYY!!」
そう遠くない未来に会うであろうジョナサンの孫と、100年前の因縁の相手。
この時、顔を合わせずに済んだと安堵していいのか悪いかは神のみぞ知る。
未来の家族との邂逅
***
完全に次の誘拐フラグ立ててすみません。(土下座