*普遍的世路『その存在が安心する』の続編もの
今日はぽかぽか陽気なので、≪縁側に座ってお喋りしよう。≫とジョアンを自分の膝に乗せた。
無愛想だが、本当は妹が可愛くて仕方がないシスコンな承太郎に見つからないか内心ヒヤヒヤしている。
(それにも関わらず彼女を下ろさない私もよほど溺愛してるな)
「それでね―――」
「よっ、可愛いお嬢さん方。」
「あっ、丞華兄ー!」
彼の『足音』はあちらから姿を現す前から聞いていたので驚くことはない。
丞華と呼ばれたこの人は、承太郎とジョアンの実のお兄さんだ。
外見は文句なくカッコいいのに、若い頃のジョセフみたく―――ポジティブに言えば陽気だ。
此間なんて一緒に買い出しに出かけた時は普通にナンパしていたし、
さり気なくセクハラ発言もかますのだから最初は本当に苦労した。
そんな残念なイケメンお兄さんであることを、妹であるジョアンは知らないだろう。
「お姉ちゃんどうしたの?顔が怖いよ?」
≪―――いや、何でもないよ。ごめんねジョアン。≫
「ううん。お姉ちゃんがそう言うなら平気!」
ジョアンはそう言って向日葵が咲いたような笑顔を向けてくれた。
なんて癒される子なんだろう。
私がほっこりしていると、珍しく静観していた丞華君の視線が痛く突き刺さって来たので、
そちらの方を向いた私は心の底から後悔した。
「ジョアンは可愛いなあ〜。いっそ2人の間に挟まれて幸せ死なれたら悔いはない・・・!」
丞華君が真顔でそう言うのだから、もう意味がわからない。
幸いジョアンは私に聞かせたいと言わんばかりにお喋りに集中していた為、
彼の長い(意味不明な)独り言は聞いていないようだ。
一回、波紋入りの種を撃ち込んでやろうかとポケットに手を突っ込んだ。
私の思惑がバレたのか、丞華君が冷や汗を流して一歩後退りしていた。
(後退りしたいのはこっちだよ・・・)
さんさんと射していた陽の光が気持ちいいのか、
膝の上で話していたジョアンの口から小さな寝息が聞こえてきた。
(服掴んで寝るジョアン可愛いッ!!と隣から聞こえたがあえて無視する)
「ジョアン運ぼうか?」
≪平気。もう少しこのままでいい。≫
「ん、そっかー。」
丞華君はそう言って私の隣に座った。
190もある長身だが、今ではちょうど目が合わせられる位置になっている。
こうして見ると、本当に整った顔だなあとまじまじ見ていたせいか
丞華君と目が合ってしまった。
「ん?どうしたのー?」
≪ごめん、何でもない。≫
「ふふ、正直に言っていいんだよ?俺の顔に見惚れていひゃい!」
イラッと来たので、つい彼の頬を抓った。
(此間同じことしたら笑い返されたので、すぐ手を離した)
コレさえなければ本当にカッコいいのに勿体ない。
暫くずっとこのままだったが、これと言って会話はなかった。
考えてみれば私は、何がきっかけで丞華君と接するようになったのか。
寧ろ、無理やり押しかける形で居候している私に何故、
彼は声をかけてくれるのか不思議でたまらない。
「ちゃん、俺に何か言いたいことあるんじゃないの?」
内心ドキっとしつつ、≪何で?≫とあくまで平常心で訊いた。
「いやーだってすごく思いつめたような顔してるから・・・・・・
あ、もしかして日頃の行いにとうとうプッツンですか!?」
本当にそうだったら私はストレスで精神病んでるぞ。(あと自覚あったのか)
顔を横に振れば、ホッと安堵する丞華君に、こちらも何故かホッとした。
何だかんだ言って、彼は人の顔をよく見ている。
思い切って打ち明けようか。そう思った矢先に寝息が聞こえてきた。
もちろん、これはジョアンのではない。
「(・・・・・・・・・・・・・・・マジか)」
こんなタイミングで寝るなんて―――少し泣くぞこれは。
寝てしまった当の本人に至っては、律儀にも座った体勢のままである。
頭が何度も動いて、いつ床にぶつかってもおかしくない。
ジョアンには悪いが方膝の方に移動させて、
丞華君にはその余ってるスペースに頭を乗せた。
いわゆる、『膝枕』だ―――(私の硬い膝で悪い夢でも見なければいいんだけど)
「何じゃおまえら。こんなとこにおったのか―――っと。」
70歳手前になっても足音が大きいジョセフを思わず睨んだ。
2人が起きたらどうすんだ、バカ。
「ん?丞華も寝とるのか?」
≪見てわかるでしょ?≫
何故そんな当たり前なことを訊くんだ、と怪訝な目で見た。
「いや、わしの記憶じゃ他人前で寝るのは一度もはないと思うんだが・・・。」
「一人は怖いし悩みもたくさんあるし不安ばっか抱えてる訳で・・・。
―――だから他人の前じゃ寝れないんだよね警戒して。」
そういえば―――こんな似たような形で丞華君がぽろっと言ってたのを思い出した。
普段はああやって明るく振る舞っているけれど、一人不安を抱え込んでいるんだ。
その部分が、後ろ気味である私とかなり似ている―――。
「あの丞華がなあ・・・・・・珍しいこともあるもんじゃ。」
≪悪いけど、しばらく寝かせてやってくれないかな?≫
「仕方ない。夕暮れには起こすんだぞ。」
大股に去っていくジョセフの後ろ姿を見届けると、もう一度丞華君を見た。
本当によく眠っている。この定期的な寝息が、論より証拠だ。
「(でも本当に狸寝入りしたことがないなんて、本当かな・・・・・・)」
丞華君のふわふわとした青い髪を撫でた。
この顔を見る度に、酷似しているジョナサンを思い出す。
それが強く出ているせいか、承太郎とジョアンとは全く似ていない。
けれど―――私が丞華君の側にいるのは、『彼』に似ているからではない。
「(私が言うのも何だけど・・・・・・結構無茶するんだよね)」
放っておけない。
理由を挙げるとすれば、『それ』かもしれない。
ストッパーとなった理由
***
余りにも素敵なお話だったので、お返しとして続きものを書かせて頂きました・・・!
丞華君のストッパーとなってた夢主の心境はどんなものか、というものなのですが
全く意味のわからないとんだ駄文ですみません・・・!!
丞華君とジョアン嬢と仲良くいられるだけでも幸せです。
個人的にボツしたその作品もいつかお目にしたい、です・・・!←
悠月さんが宜しければお持ち帰りどうぞ!