クリスマス休暇ということもあって、ほとんどの生徒達が荷物を持って学校を後にしていた。 廊下ですれ違う同級生達と短い挨拶を交わしながら 大広間に向かう途中、帰宅するハーマイオニーと会った。 「あら、も残るの?」 「うん。最初は戻ろうかと思ったけど、もう少しここにいたくて。」 本当に楽しいよ、と笑みを浮かべばハーマイオニーも微笑んでくれた。 「でも、その方がいいかもしれないわ。  此間までマルフォイにしつこく勧誘されていたんだから。  下手したらあなたの家に押しかけるかもしれないし・・・。」 「・・・確かに。」 今日になるまで私はマルフォイに 「家でパーティーをやるから君も来ないかい?」 「父上にもちゃんと紹介したい。」など、何度やんわり断っても粘って来るのだ。 会話の中に「何故お前の父親が出て来るんだ。」など突っ込む部分が多々あり、 一体何を伝えたのか変な不安に陥った。 今はハリーやロンみたく嫌ってはいないが、変な誤解を招くことになるのはご免だ。 「よかったら手紙送って。私も出すから。」 「わかったわ。良いクリスマスを。」 手を振ってハーマイオニーと別れると、 クリスマス一色である大広間にいるハリーとロンと合流した。 ちょっぴり、リーマスに会えないという寂しさもあるが、 しばらく二人で談笑するだけでも気が和らいだ。 そうでもしないと自分がおかしくなりそうだ。 「(12月24日・・・・・・何でこんな微妙な日が私の誕生日なんだろう)」 クリスマス・イブの夜になっても、手紙すら来なかったのだ。 もしかしたて忘れてしまったのかと思ったが、それとは別の不安が過ぎった。 まさかリーマスに何か―――?そう思うと震えが止まらなかった。 ようやく眠りについた翌朝、ロンの声に起こされガウンを着て部屋を出ると、 先に談話室に下りていたハリーとも目が合った。 「メリークリスマス。」 「ハリー、ロン。メリークリスマス。」 「君もこっちにおいでよ。ママが君の分のセーターも編んだって。」 「私にもあるの?」 すると、手作り愛の感じるセーターを着たロンが頬を赤らめて、 「実は君のことをママに報せたら何か気に入っちゃったみたいで。」 まだ会ったこともないロンの母のことを伝えた。 何だか悪いなと思いつつ、後でお礼の手紙を出そうと意気込むと、 別の椅子の上に小さなプレゼントの山があるのを見つけた。 ハリーとロンの分ではなさそうだが・・・・・・。 「これ全部、君宛だよ。」 「えっ・・・!?」 思い当たる人物は一人しかいないのにこんなに多くもらえる程、知人はたくさんいないはず。 しかし、私宛というのもあって喜びは隠せなかった。 プレゼントの山に近づくと、その中からゲコゲコと蛙の鳴き声が聞こえてきた。 確実に蛙チョコレートだと分かりつつ、一番目に留まったリーマスからの小包みを広げた。 暖色系の触り心地のいい素材で出来た手袋だ。 親愛なる こちらの事情で君の誕生日当日に届けられなくてすまない。 もし雪遊びをする際はこれをつけるように。 夏休みに帰って来るのを楽しみにしてるよ。 リーマス・ルーピン この手紙を読んで、ホッとせずにはいられなかった。 元気でよかった―――早速返事を書かなきゃ。 他にもハーマイオニーから熊のぬいぐるみや 何故かこの学校の一部の先生達からの物まで揃っていた。 そして残るのは例の蛙チョコレートだ。 ハリーとロン宛にハーマイオニーから大きな蛙チョコレートをもらっていたが、私のは全く別だ。 大きな箱の中に大量の蛙チョコレートが入っている。 一斉に合唱する蛙チョコレートに、じっと見ていたロンが苦笑いしていた。 「何かすごいね・・・。一体誰から?」 「それが・・・・・・名前が書いてないんだよ。」 蛙チョコレートと一緒に添えられていた手紙にはこう書いてあった。 当日に祝えなくてすまなかった。 誕生日おめでとう。 メリークリスマス。 内容はそれだけだ。 分からない、と口では言うものの、 この書き文字を見て、不思議と懐かしさを感じていた。