ウィーズリー一家は皆明るくて、楽しくて、 一緒にいるだけで心が温かくなる。 私は通学するまで、ロンの家で絶賛お泊り会をしていた。 ハリーも来る予定なのだが、いつまで経っても返事が返って来ない。 ここでロンの双子の兄、フレッドとジョージのお出ましだ。 「ロン、この車・・・・・・。」 「うん、パパのだよ。」 「大丈夫なの?勝手に使っちゃって。」 「へ、平気だよ!運転は兄貴たちに任せるし。」 それに、ハリーが心配だ―――。 ロンの強い意のある言葉に、私も頷いた。 深夜になってこっそり抜け出したと知ったら ウィーズリーおばさんはカンカンになって怒るだろう。 「友達のご家族に迷惑のないように。」 出かける当日に言われたリーマスの言葉が 後になって繰り返された。 何故なら空飛ぶ車に乗って普通にはしゃいでいた自分が いたからだろう・・・・・・。(でも本当に悪いと思ってるんだよ?) ハリーがいるダーズリー家に一ヶ所だけ鉄格子がついていた。 その鉄格子越しから窓ガラスを押し上げるハリーの姿を目にした。 元気そうで何よりだ。 「も一体、どうしたの?」 「迎えに来たんだよハリー。  そういう君こそ何故鉄格子なんかに・・・・・・。」 そう言うと、ハリーは暗い顔をした。 無理しなくていいよ、とすぐに謝った。 時間がないというのもあるけど、 嫌な記憶を思い出させるのが嫌だった。 ロープを使って鉄格子を外し、ハリーを後部座席に乗せた。 彼の荷物も一緒に収めると、小太りの男性がやって来た。 ハリーが言っていたバーノン叔父さんだ。 怒れる猛牛のように飛びかかって来たが、 そのまま窓から草の上に転がった。 思わず、ハリーと一緒に笑った。 *** 翌朝、私の予想通り、ウィーズリーおばさんに説教された。 ・・・・・・と言っても実際怒られていたのはロン達の方だ。 私も一緒に行ったのに、皆に申し訳ない。 水曜日―――ハーマイオニーも一緒に新しい教科書を買いに (ちょっとしたハプニングもあったが)ダイアゴン横丁へ来た。 教科書のリストにはロックハートの本のオンパレードだ。 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店の中は黒山の人集りで、 押し合いへし合いしながらであった。 「本物の彼に会えるわ!」 ハーマイオニーが黄色い声をあげた。 「だって、彼って、リストにある教科書をほとんど  全部書いてるじゃない!」 人集りはほとんどがウィーズリーおばさんぐらいの 年齢の魔女ばかりだった。 一冊ずつ引っつかみ、 ウィーズリー一家とグレンジャー夫妻が並んでいるところに こっそり割り込んだ。 そして間もなく、噂のギルデロイ・ロックハートの姿が見えてきた。 なんとまあ自己主張の強い人だ。笑顔も胡散臭い。 ハーマイオニーはこんな男が好きなのか・・・・・・ 今時の女の子の好みはよく分からないなあ。 「もしや、ハリー・ポッターでは?」 突然勢いよく立ち上がったロックハートは列に飛び込んで、 ハリーを正面に引き出した。 一斉にカメラのシャッターフラッシュを覆ったハリーの顔が火照っていた。 何だか、ハリーをダシにしている感じで気分が悪い。 ようやく抜け出したハリーを迎えて、早く店から出ようとした所に、 マルフォイの声が聞こえた。 「有名人のハリー・ポッター。  ちょっと書店に行くのでさえ、一面大見出し記事かい?」 「ほっといてよ。ハリーが望んだことじゃないわ!」 ジニ―が言った。 そういえば、ハリーの前で口をきいたのは初めてかもしれない。 「ポッター、ガールフレンドができたじゃないか!」 マルフォイがねちっこく言ったことに、我慢ができなかった。 私はハリーの背から前に出て、 「少しは口を慎んだらどうなんだ?」と言ってやった。 すると、マルフォイは私を見るなり顔を顰めて、 「いや、それは・・・・・・。」と言い難そうに視線を逸らした。 さっきまでの威勢はどこへ行った? するとロンとハーマイオニーに、 ウィーズリーおじさんがフレッドとジョージと一緒にこちらに来た。 「何してるんだ?ここはひどいもんだ。早く外に出よう。」 「これは、これは、これは―――アーサー・ウィーズリー。」 懐かしいようで、それ以上に忌々しいという声だった。 ルシウス・マルフォイ―――名前の通り、ドラコの父親だ。 この人のことも知っているんだと考えると、 尚更思い出したくもないというのが本音であった。 「おや、君が嬢かね?」 まさかの本人に声をかけられ、 もう少しで「うげっ。」と声を上げそうになったが、何とか持ち堪えた。 「息子から話は伺っている。」と聞き、思わずマルフォイを見た。 未だにこちらと目を合わせてくれない。一体何を話したんだコイツ。 「噂通り、気高き誇りある者と見られる。  本当によく似ている・・・・・・。」 ん?今、何て―――? 「しかし、可哀そうに。こんな連中と付き合うのは  さぞかし苦痛であろう。」 「何・・・・・・?」 「ちょっと、!」 ハーマイオニーが私の上着の背中をしっかりとつかまえた。 マルフォイ氏はジニーの大鍋に本を戻すと、マルフォイに目で合図をして、 さっと店から出ていった。 もし、ハーマイオニーに止められてなかったら、 そのままマルフォイ氏に掴みかかっていたに違いない。 ようやく、怒りで火照った体が冷めていくのを感じた。 「本当にあなたは危なっかしくて見てられないわ。  大人にまで手を出そうとするなんて・・・・・・!」 「ごめん。でも、皆のことを悪く言われて、黙ってられなくて・・・・・・。」 「・・・。」 「ありがとう。君がロンの友達で本当に心から思うよ。」 ウィーズリーさんが微笑むと、続いてウィーズリーおばさんもお礼を言った。 そして止めと言わんばかりに、「我がウィーズリー家のヒーロー嬢!」と フレッドとジョージが叫んだ。 私はたまらず、顔を真っ赤にした。