夢を見ていた。
1年生の時、皆でユニコーンを探しに入ったあの禁断の森に、私はいた。
しかし、今私が探しているのは別の生物であった。
これもまた希少価値のある、赤い毛並みを持つ馬だ。
その夢を見るまで、私はその馬を、
何十年も前から、森の中で飼っていたのを忘れていたのだ。
朝起きて私はすぐウィーズリーおばさんに、
「用事ができたので先に行きます。」と伝えた。
新学期まであと1日、という所で私だけが出ていくのだから
当然、不思議に思うだろう。
上手く言ってウィーズリー家を出ることができたが、
「ペットの危険生物を迎えに行く。」とは流石に言えなかった。
久々の地下鉄に乗って、薄汚れたパブに入ると、
店内で一際目立つ大男の元に駆け寄った。
「ハグリッド!」
「おお、!此間ぶりだな。」
「新学期前日に呼び出してごめん・・・。」
「いいや、支障ねえから大丈夫だ。
それで肝心の用件は?」
「フクロウ便の通りだよ。」
私が彼を呼んだのは、ホグワーツ内にある森まで
空飛ぶオートバイに乗せて貰うためである。
手紙を出す以前から、危険生物を飼っていることを知っているので
ハグリッドが適任であった。(勿論、リーマスには伝えていない)
「言っておくが、こういうのは今回だけだぞ?
おまえさんを贔屓してると思われちゃ困るんでな。」
「ん?ハリーの方じゃなくて?」
「そ、それとこれとは別だ!さ、早く出発するぞ。」
余裕で二人乗りができる巨大なオートバイに跨って、
一時の空中飛行を楽しんだ。
暫くしてホグワーツが見えて来た。
校内を覆う森があんなに広いとは―――。
小屋の側にオートバイを停め、一旦荷物を中に入れさせて貰った。
真昼の森は以前入った時と比べて、大分印象が変わった。
不気味さを漂うオーラが一欠片もない。
周りが明るい分、私は忍らしくスイスイと木々の隙間を横切った。
『赤い馬』改め、『レヴァンノン』の好物である
赤ニンジンが入った袋を揺らしながら、
キョロキョロと動かした視線を止めた。
「レヴァンノン・・・・・・?」
思い出したと言っても、未だ断片的な記憶でしかない。
だが、朧な記憶の中にいる私とレヴァンノンの光景は、
とても微笑ましいものだった。
今、私の目の前にいる赤い馬こそ、レヴァンノンであった。
私の気配に気づき、首を上げてこちらに振り向いた。
何回か瞬きして、駆け足でこちらに向かった。
一瞬、蹴飛ばされるんじゃないかとヒヤっとしたが、
レヴァンノンは距離が近くなるにつれてスピードを落とし、
私の顔に擦り寄った。
「レヴァンノン、なんだね?」
震えた声に対し、レヴァンノンは嬉しそうに自分の鼻を押し付けた。
何十年も置いてけぼりにされて怒りを抱いてもおかしくないのに、
この子は・・・!自分のことさえ思い出せない私を、ずっと待っていたんだ。
「ごめん。・・・・・・本当にごめんね。」
ちゃんと、全て思い出せたら、もう一度謝ろう。
そして、うんと甘やかして、たくさん遊ぶんだ。
私が来るまで、十分な食事が取れなかっただろう。
けれど、どう見ても痩せていない。
先程レヴァンノンがいた方へ視線を向けると、
なんと、この子の好物である赤ニンジンが疎らに、
地面に転がっていた。
ニンジン、と言っても特定の地域にしか栽培されない野菜で、
まず、この森にあるはずがなかった。
「誰かが、この子に餌を・・・・・・?」
そうだとしても、一体何の為に?
何故、危険指定されている魔法生物を今まで放置させているのか、
ますます疑念が深まるばかりであった。
***
今更ながら自分の内容がちゃんと伝わってるか不安です・・・。