マクゴナガル先生の『変身術』のクラスで、
動物をゴブレットに変える課題の中、ハーマイオニーが手を挙げた。
「『秘密の部屋』について聞かせて下さい。」とはっきりした声で言った。
私は一回瞬きして、ハーマイオニーからマクゴナガル先生を見た。
先生は全生徒を見渡すと、「いいでしょう。」と噛み締めるように語り出した。
「すでにご存じの通り、ホグワーツは一千年以上も前―――
四人の偉大な魔女と魔法使いにより、創設されました。
ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、
ロウェナ・レイブンクロ―、そしてサラザール・スリザリン。
創設者のうち三人は協調し合っていたのですが、一人は別でした。」
「想像はつく。」とロンの呟き声が聞こえた。
「スリザリンは入学する生徒を厳選し、
魔法教育は純粋に魔法族の家系のみ与えるべきだと考えたのです。
三人の反対で彼は学校を去りました。
そして伝説によると、
スリザリンはこの城に『秘密の部屋』を作ったと言われています。
彼は学校を去る前にその部屋を封印し、彼の継承者の出現まで閉じたままにして、
真の継承者のみが『秘密の部屋』の封印を解き、その中の恐怖を解き放ち、
それを操ることで追放すると言われています。
魔法を学ぶ資格がないと彼が考える者をね。」
「『マグル』ですね。」
ハーマイオニーの声が静かにクラス中に響いた。
スリザリン生の殆どがマグルを軽蔑する理由がなんとなく分かった。
そう理解した同時に、何故だか悲しくなった。
「当然、何度も調査がなされましたが、その部屋は見つかりませんでした。」
「その部屋にはどんな恐怖があるんですか?」
「スリザリンの継承者のみが、操ることのできる何か。
そこに棲むのは恐ろしい怪物だと。」
***
「『秘密の部屋』があるって、本当にそう思う?」
「あるんじゃないかな?だってマクゴナガル先生の顔・・・・・・
明らかにおびえてたよ?」
いつも厳格なあの先生があんな表情をするなんて・・・・・・。
『秘密の部屋』―――そこに棲む怪物というのも気になるな。
でも継承者って、一体誰なんだろう?
「我々の知っている人の中で、
マグル生まれはくずだ、と思っている人物は誰でしょう?」
わざと嫌気のある言い方をするロンを、私はまさか、という顔で見た。
「もしかして、ロン、マルフォイのこと?」
「モチのロンさ!」ロンが言った。
「マルフォイが、スリザリンの継承者?」
ハーマイオニーが、それは疑わしいという顔をした。
「あの家系は全部スリザリン出身だ。あいつ、いつもそれを自慢してる。
あいつならスリザリンの末裔だっておかしくはない。
あいつの父親もどこから見ても悪玉だよ。」
「それは激しく同意。」と私は深く頷いた。
(失礼だとか、この時は完全に抜けていた)
「あいつなら、何世紀も『秘密の部屋』の鍵を預かっていたかもしれない。
親から子へ代々伝えて・・・・・・。」
「そうね。その可能性はあると思うわ・・・・・・。」
「でもどうやって証明する?」
「方法がないことはないわ。」
いつの間にかマルフォイが継承者扱いされているのだが、
どう考えてもあいつじゃない気がしてならない。
ハーマイオニーの件に関しては本当に許せないが、
人を恐怖に至らしめる、というには程遠い。
「何をやらなければならないかというとね、
私たちがスリザリンの談話室に入り込んで、マルフォイに正体を気づかれずに、
いくつか質問することなのよ。」
「だけど、不可能だよ。」
「いいえ、そんなことないわ。ポリジュース薬が少し必要なだけよ。」
「それ、何?」ロンとハリーが同時に聞いた。
「ああ、スネイプ先生がクラスで話してた
自分以外の誰かに変身できる薬ね?」
「そうよ。考えてもみてよ!わたしたち四人で、
スリザリンの誰か四人に変身するの。
誰もわたしたちの正体を知らない。
マルフォイはたぶん、何でも話してくれるわ。
いまごろ、スリザリン寮の談話室で、
マルフォイがその自慢話の真っ最中かもしれない。
それさえ聞ければ。」
あいつの自慢話なんて聞きたくないが、
真相を確かめる絶好のチャンスだ。
もし、リーマスが聞いていたら即退学にさせられるに違いない。
図書室の『禁書』の棚から『最も強力な薬』という本を開き、
ポリジュース薬を作るのに必要な材料の欄を眺めた。
なりたい相手の一部か・・・・・・確かに爪は勘弁したい。
動物ならまだいいのだけど・・・。
「ハーマイオニー、造るのにどのくらいかかる?」
「材料が全部手に入れば、だいたい一ヶ月ででき上がると思うわ。」
「一ヶ月も?マルフォイはその間に学校中のマグル生まれの半分を襲ってしまうよ!」
ロンがそう言うが、ハーマイオニーの目が吊り上がって険悪になってきたので、
ロンは慌ててつけ足した。
「でも、いまのとこ、それがベストの計画だな。全速前進だ。」
***
まさかの名前変換なし。