「、僕らもホグズミードへ行こう!」 「でも、吸魂鬼は透明マントでもお見通しだって言ってなかった?」 「大丈夫!あいつらのそばさえ通らなければ・・・・・・多分。」 学期最後の週末に、皆がホグズミードへ行くのが楽しみだと笑っていたのを思い出す。 ホグズミードの話題には消極的だったハリーが イキイキと透明マントを片手に私の前に立っている。 根拠のない自信だが、一人でも行く気だ。 何かあったら大変だろうし、私はうんの一言で応じた。 そしたらどうだろうか。吸魂鬼よりも先にまさかのウィーズリー兄弟に見つかるなんて! 「やあ、嬢はあの『ニンジュツ』ってのは使わないのかい?」 「ちょ・・・!」 「ニンジュツ?」 「なんだ、ハリー、聞いてないの?」 「あーあー・・・・・・今から言うよ。」 ナチュラルに言い振らすフレッドとジョージに頭痛を覚えつつ(今に始まったことじゃないけど) 自分が忍者(のタマゴ)であること、その忍者でしか使えない術のことも話した。 いつかは言おうと思ってたから、全く苦にならなかった。 この国では聞き慣れない単語を聞いて、いまいちピンと来ていないハリーだが、 『変化の術』や『分身の術』の簡単な説明をすると、ぱあっと目を輝かせた。 「分身って本当に何人か現れるってこと?そりゃすごい! 杖の必要もないし・・・・・・変化は変身術と同じなの?」 「うーん、似てるようだけど私ができる『変化の術』は自分と同じ大きさじゃないと駄目で、 私や父さんの他に動物に変化できる忍者はいるかいないかなんだよな〜。」 「ジャパニーズは皆できるんじゃないの?」 「そんなこと一度も言ってないよ!」 「魔法っていろいろあるんだ・・・・・・知らなかったよ。」 「黙っててごめんね。リーマスに止められてて・・・・・・。」 そう言うと、ハリーはなるほど、と理解した顔で小さく頷いた。 フレッドが大袈裟に咳払いして、「そろそろいいかい?」と聞いてきたので、 どうぞと促す。 「二人にひと足早いクリスマス・プレゼントだ。」 フレッドが服の下から何かを引っ張り、それをハリーの手の上に広げた。 見た目はくたびれた羊皮紙だが、ジョージが杖を取り出して羊皮紙に軽く触れて、 「われ、よからぬことを企む者なり」と言うと、細いインクの線が広がり、 交差したりしてあっという間に地図となった。 この見覚えのある敷地に、名前が細かく書いてある。 「"ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ われら『魔法いたずら仕掛人』のご用達商人がお届けする自慢の品 忍びの地図"・・・!?」 「俺たちの成功の秘訣さ。」 「ホグズミードへの道は全部で七つある。ところがフィルチはそのうち四つを知っている。 ―――おすすめは「これだ!」」 「ハニーデュークス店の地下室に直通だ。」 「使ったあとは忘れずに消しとけよ―――もう一度地図を軽く叩いて、こう言うんだ。 『いたずら完了!』」 「―――じゃないと、誰かに読まれっちまう。」 ムーニー、プロングズ・・・・・・どこかで聞いたことある名前だな。 *** 『叫びの屋敷』が見えるロンとハーマイオニーと合流し、 キラキラ光る雪道を歩きながらクリスマス仕様のホグズミードを眺めた。 週末というのもあってか人通りは多いものの、賑やかで見てるだけで心が弾んだ。 特に私を含むこの4人の中でハリーが一番楽しんでいた。 念願のホグズミードに来て、とても嬉しそうだ。 ブラックのことや箒が暴れ柳にぶつかって折れるなど、 暗いことばかり続いたのもあったので、何だか私も嬉しくなる。 たくさんのお菓子に囲まれながら、いろんな味を楽しめて美味しかったが、 先程、透明マントを使ってマルフォイ達にイタズラをしたのも最高だった。 (心底ビックリして怯えていたマルフォイの顔はなんともいえない!) 「じゃあ、はそのニンジャっていう一族の生き残りで、 ニンジャが使える魔法があるんだね!」 「正確には父さんがその生き残りなんだよね。私はハーフだから。」 「ニンジュツ・・・・・・まさか本当に実在していたなんて! まさかとは言わないけど、・・・・・・。」 「ホグワーツ内では使ってないよ!・・・・・・授業では。」 「でも、流石に先生達もその区別くらいできるんだろ? なら大丈夫だろ。」 「それも、そうね・・・・・・。」 相変わらず堅いなあ、と渋々なハーマイオニーに苦笑した。 『三本の箒』に入ってバタービールを飲もうと話が上がった頃、 ちょうどそのお店の前に見慣れた人達がいてドキッとした。 マクゴナガル先生にあれは・・・・・・「魔法大臣だ。」 居酒屋の前で何やら話し込んでいて、それから店の中へ入っていった。 気付けばハリーは透明マントを使って店の中へ入っていった。 私達も慌てて後を追う気だったが、この店の看板であろう生首達に追い出されてしまった。 「どうする?」 「待つしかないでしょ。」 「私が様子見て来る。」 「えっ?ちょっと、!」 裏に回って屋根に跳び乗り、マクゴナガル先生達のいる窓を見ていく。 最後の窓にたどり着いて一瞬、見られたかと身を引いたが、その心配はなかった。 とても深刻な表情で何か訴えているように見える。 そっと耳を澄まし、区切られた言葉しか聞こえてこなかったが、 それだけで十分だった。 『ブラックとポッター』 『一番の親友』 『例のあの人』 『ピーター・ペティグリュー』 『秘密の守人』 『ハリーの名付け親』 この内容を明確にハリーは聞いているに違いない。 ドアが開く音を聞いて首を動かす。 すぐに二人がいるところへ戻ってくると、ハリーはこっちだと一緒に追いかけた。 今日初めてロンとハーマイオニーに会った場所だった。 ぐすぐすと涙声が聞こえる。ハーマイオニーが透明マントを手探りに見つけて引っ張った。 悲痛な表情を浮かべるハリーの目に、激しい怒りがあった。 とても、嫌な予感がしてならない。 「友達だったのに裏切ったんだ・・・・・・友達だったのに!」 お願い、それ以上の言葉は口にしないで・・・・・・ 「来るなら来い。そしたら仇を取ってやる!ブラックを、殺してやる!」