ハリーが先に護衛つきで屋敷を出て、 私達は各々に別れ不死鳥の騎士団と共にキングズ・クロス駅へ着いた。 追跡されていないと後ろから会話を交わしている中で、 犬になったシリウスが足元に寄り添ってきた。 「どうしたの?ハリーのとこへ行かなくていいの?」 「ウォン!」 シリウスが何かを伝えようとしていると、警笛が鳴った。 急いでとウィーズリーおばさんが私をシリウスから引き離し、ぎゅっと抱きしめた。 ほぼ強引に押しやる形で汽車に乗り込み、開けた窓からホームを見た。 皆の姿があっという間に消えていく中、黒犬は汽車を追いかけていた。 汽車がカーブを曲がったところで姿は見えなくなった。 「シリウスは一緒に来るべきじゃなかったわ。」 「おい、気軽にいこうぜ。もう何ヵ月も陽の光を観てないんだぞ、かわいそうに。」 空いているコンパートメントを探しつつ、くしゃくしゃに丸めた紙を広げた。 よだれがついていたが、気にせずパッと素早く目に通した。 急だったもんで殴り書きを渡すことになってしまってすまない。 昨夜、ダンブルドアから話を聞いたんだが、ファッジはお前を警戒しているらしい。 お前は死ぬ直前までの記憶を覚えていないだろうが、 ロードヴァリウスは闇の帝王と対立し、 未だ遺体が見つかっていない者として報道されていた。 だがそれだけではお前にだけ目を光らせる理由にはならないはずだ。 詳しいことはわたしにも分からない。 二つ言えることはヴォルデモートに関わっていること、 その見つかっていないロードヴァリウスと同じ顔をしているってことだ。 この状況だ、魔法省が目を光らせている間は妙なことはするなよ。 気をつけて新学期を過ごしてくれ。 ダンブルドアが昨夜来たなんて、初めて聞いたぞ。 シリウスに気をかけてもらえるのは嬉しいが、 やはりリーマスから一言でもかけてほしかった。 「でも、魔法省は何で私を・・・・・・?」 まだ思い出せない前世の記憶がその答えとなっているのだろうか。 *** 「おかえり諸君―――今年は先生が二人替わった。  グラブリー-プランク先生が戻られて、ハグリッド先生が不在の間、  『魔法生物飼育学』の担当をなさる。  また『闇の魔術に対する防衛術』の担当はドローレス・アンブリッジ先生じゃ。  先生のご検討を皆で祈るとしよう。  さて例年の如く、管理人のフィルチさんからの要請で―――」 すると誰かがわざとらしく「ェヘン、ェヘン。」と咳払いをしたことで、 ダンブルドアは言葉を切った。席を立ったのはガマガエルのような顔をした女性だ。 派手なピンク色のカーディガンを着ていて、先生達の中ではかなり浮いていた。 「尋問の時にいた。ファッジの部下だ!」ハリーは愕然とした顔で言った。 「ありがとうございます、校長。歓迎のお言葉恐れ入ります。」 女の子のような甲高い、溜息まじりの話し方だ。 「みなさんの幸せそうなかわいい顔が私を見上げているのは素敵ですわ!  みなさんとはきっとよいお友達になれると思いますわよ!」 私はなりたくないなと思ってると、後ろから『だろうね。』と双子が呟いた。 「魔法省は、常に若い魔法使いや魔女の教育は非常に重要であると、そのように考えてきました。  この歴史ある学校に歴代校長は何らかの新しいことを導入してきました。  しかしながら、進歩のための進歩は奨励されるべきではありません。  保持すべきものはもちろん保持し、正すべきものはしっかりと正し、  禁ずべきとわかったものは切り捨てようではありませんか。断固として、フフッ」 長い演説を終えてアンブリッジ先生は悠々と席に戻った。 パラパラとあまりよいとはいえない拍手が送られた。 「ありがとうアンブリッジ先生。まさに啓発的じゃった。」 「啓発的?中身なんかないだろ。」 「どういう意味?」 「魔法省がホグワーツに関渉するということよ。」 ハーマイオニーの言葉を聞いて、シリウスの手紙の内容を思い出した。 アンブリッジが彼の言う警戒する者なのではないかと・・・・・・。 *** 『日刊予言者新聞』の内容を鵜呑みにしている生徒はグリフィンドールでも多数いた。 特にシェーマスの攻撃的な言葉のせいで昨日からハリーの気分は悪かった。 ホグワーツに戻ってきたのに、余計に気持ちは沈んでいた。 「はどうするの?」 「うぇ?何を?」 突然話を振られて変な声を出してしまった。 完全に聞いていなかったとハーマイオニーは呆れながら怒った。 「進路についてよ。」 「五年目からOWL(ふくろう)を受けるだろ?  OWLって、どんな仕事に応募するかとかいろいろ影響するし、  今学年の後半には進路指導もあるって、ビルが言ってた。  相談して、来年どういう種類のNEWT(いもり)を受けるか、も前世でやっただろ?」 「ちょ、ちょっと待って!」 私はもう一度瞬きした。 「OWLって・・・・・・何?あとNEWTって?」 三人は驚き、ロンとハーマイオニーは互いに顔を見合わせた。 「・・・・・・それ、本気で言ってるの?」 「え、どうして?」 「『O・W・L』、『普通魔法使いレベル試験』。  『N・E・W・T』は『めちゃくちゃ疲れる魔法テスト』よ。  前世でもホグワーツに通っていたのだから当然その試験を受けていたはずよ!」 「・・・・・・ああ、そりゃあ知らないはずだ。」 一人納得している私に対し、三人は「どういうこと?」と伺った。 「前世の私は、五年に上がる前に中退したんだよ。」