私は今、周りから見てもすぐ分かるくらい、かなり落ち込んでいる。 原因はもちろん、此間の飛行訓練の授業での事だ。 結果的に怪我人が出ることなく済んだのだが、 マルフォイの言動に、『いつもの』私らしくもなく、 突然手を上げてしまった。 そんなに親しくもない相手に、罵倒語まで浴びせた。 それが原因か、ハーマイオニー達まで怖がらせてしまった。 あの時は血が上って冷静に考えていなかったが、 今は罪悪感でいっぱいだ。 「(うがあああ〜〜〜何てことしたんだ私は・・・・・・!)」 自分の部屋だったら真っ先にベッドの上で躊躇もなく 転がっているのだが、ハーマイオニーが部屋の同室者であるため、 私は図書室にある机の上で頭を抱えていた。 このまま自分の頭を机に当たりたい衝動が起きるが、 先ほど険しい顔付きでマクゴナガル先生にこっ酷く怒られたのを思い出し、 何とか耐えた。 「(いつ机を壊してしまうか不安だし、  ハグリッドのところへ行こうかな・・・)」 そしてファングに癒してもらおうと、図書室を出た。 廊下に出ると、タイミング良く噂のマルフォイとバッタリ会ってしまった。 彼も彼で、私と同様に凝視している。 互いに沈黙。あまりにも苦しすぎる静寂さに、思わず口を開くと、 「「あの(さ)・・・。」」と同時に言葉が被った。 「ご、ごめん。」 「い、いや。こっちこそ・・・・・・。  僕の過ぎた行為に指摘してくれなかったら・・・  危うく自分の寮に不名誉な杯を与えてしまう所だった。」 「えっ?」 てっきり反抗的な言葉が返って来るとばかり思っていた私は。 マルフォイの顔を見る。 目が合うなり、マルフォイは視線を逸らした。 あの時、頬を強く叩いた側面が、 未だに(?)痛みが引いていないのか、ピンク色に染まったままだった。 嗚呼!私はとんでもないことをッ―――! 「ごめんマルフォイ!罵倒した上、ぶったりなんかして!  痛かっただろ!?いや、謝るだけじゃ済まないことは  重々承知してるけどそれでも言わせてッ!!」 「お、落ち着いて。ミス・。」 マルフォイの慌てた声で、 自分が彼の体を激しく揺さぶっていたことに気づく。 私は離れて何度も頭を下げた。 そんな私に対し、「もういいんだ。」とマルフォイは制止した。 「君が謝る必要なんてない。  考えてみても、僕がしたことはあまりにも意地汚かった・・・。」 「で、でも平手打ち・・・・・・。」 「確かにあれは痛かったけど・・・・・・。」 ―――『けど』? その次の言葉をずっと待っているのだが、 何故かマルフォイの顔全体が徐々に赤くなっていった。 「き・・・・・・君、だったら・・・・・・・・・全然・・・。」 え?何それ、どういうこと? そう聞き返すつもりが、先に「そういえば・・・。」と言葉が発された。 「君、さっき図書室から出て来たけど一人かい?」 「あ、うん・・・。そういう君もいつもの二人はいないんだね。」 「ああ、僕も図書室に行くつもりだったんだ。  クラッブとゴイルは本読むタイプじゃないし。」 確かに・・・。 ボディガードのようにマルフォイの両脇に立つ二人を想像し、 思わず心の中でこぼす。 「あ、そうだ!せっかくだからスリザリン寮においでよ!  僕が案内するから!」 「はっ・・・!?」 またしても意外な言葉に、今度こそ声を表に出した。 これは一体どういうことなんだろう? グリフィンドール生の私を自ら寮に誘うなんて―――はっ! もしや逃げ場のないスリザリン寮内でリンチする気かッ!? 「い、いや。気持ちだけ受け取っておくよ。  別寮生の私が来たらマルフォイに迷惑かけちゃうし・・・。」 「ぼっ・・・僕を心配してくれるのかい・・・!?」 やんわり断っているのが分からないのか、 マルフォイはぽっ、と頬を赤らめる。 さっきから赤くなったりピンク色になったり・・・・・・ 相当私のビンタが強すぎたのか!? 「君がそう言ってくれるのは嬉しいよ!  でも安心してくれ。  特に同じ一年生には僕が事前に言ってあるから  大いに歓迎してくれるさ!」 いや、そういう意味じゃなくてッ! そんな心の叫びは空しく、 結局マルフォイに腕を引っ張られる形でスリザリン寮に案内された。 その途中、「あら、久しぶり。」やら「また会えたね。」やらと、 不可解な言葉を投げられたが、 「ようこそ、スリザリンへ!」マルフォイの言ってた通り、 一年生全員が満面の笑みで迎え入れたことが 一番ショック(もろもろの意味含めて)であった。 *** 微妙にマゾに変化してしまったマルフォイ。