が父に内緒で始まった友達との交流。 リリー、スネイプ、ペチュニアに加え、遊ぶ時はいつも一緒だった。 しかし、十歳を過ぎてから用事が増え、皆が揃う日は徐々に減っていった。 マグル生まれのリリーとペチュニアに合わせて手紙を送ればいいのだが、 あの厳しい父親の目に入れば二度と会えない。 未だに父の圧力を恐れてる自分に嫌気がした。 今日はリリーとペチュニアは家族で出かけている為、二人しか集まらなかった。 はスネイプと川の側で石投げをしながら、他愛な会話を繰り返していた。 「じゃあ、セブルスの母さんが魔女なんだね。」 「それ聞いて、楽しいのか?」 「うん、その人がどういうことしているのか僕は知りたいな。  僕が今まで会ってた大人って、あんまりいい人がいないし。」 「そんなもんだろ、特にマグルは。」 スネイプの父がマグルであり、魔法を信じないのもあって家族との関係は最悪であった。 スネイプは小石を握りしめ、思いっきり投げ飛ばした。 「でも、マグルにもいい人だっている。  リリーとペチュニアが―――僕の母さんだってマグル出身だ。」 「ああ、そうだな。」 スネイプは石を手の中で遊びながら、愛い人を想うような表情を浮かべた。 その様子から、リリーだけを切り取って聞こえていたようだ。 自分やペチュニアには素っ気ない返事を出すスネイプだが、 リリーに対して明らかに態度が違うのを、は今になって気付いたのだ。 そんなある日―――雨が降って肌寒い日に、は遊び場へやって来た。 水溜まりができた遊びは更に寂しさを増していた。 こんな天気だから誰も来ないだろうと思っていた。 だがブランコのすぐ側に、傘を差したペチュニアが立っていた。 「チュニー!」 驚きながらも、は嬉しそうに駆け寄った。 傘の手元を持つ手が小刻みに震えていた。 「いつからここに?」 「ずっとよ。帰ろうとも考えたわ。けど、あなたのことだから来ると思って・・・・・・。」 ペチュニアは傘の陰に顔を隠した。 自分がセブルスのように呪文に詳しかったら温めることができたはずなのに・・・・・・。 「待たせてごめんね、チュニー。」 「別にいいわ。それより、お願いがあるんだけど・・・・・・。」 ペチュニアは傘を持ったまま、指を忙しくなく動かした。 「何?」 「・・・・・・笑わないで聞いてくれる?」 「うん。」 「誓って?」 「絶対に。」 ペチュニアはきゅっと結んだ口を、意を決してゆっくり開いた。 「私に魔法を、教えて。」 雨音にかき消されないよう大きく言った言葉を聞いたは、思わず復唱した。 「魔法を?どうして突然・・・・・・。」 「馬鹿なことを言ってるって分かってるわ―――でも、でも―――。」 「チュニー、大丈夫、落ち着いて話して?」 は声を詰まらせたペチュニアの背中をそっと撫でた。 体を揺らしながらも、ペチュニアは震える口で言った。 「私、聞いたの。その年の九月一日の時点で、十一歳である魔女や魔法使いに手紙が届くって。  それで、ふくろうが運んでくるっていうけど、リリー、というか私も・・・・・・。」 「学校の先生が直接来るらしいね。」 ペチュニアは顔を上げて、の顔にぐいっと近づいた。 「私だって、魔法が使えるよね・・・?リリーができたのだから、私だってできるはずよ!  私達、姉妹なんだから!」 「チュニー、でも・・・・・・何で僕なの?  リリーのような独創的な魔法が使えるわけじゃないし、  セブルスのように何でも詳しくないのに・・・・・・。」 ペチュニアはふるふると首を左右に振った。 「リリーは本当に何も学んでないのだから聞いても無理よ。  スネイプだけはお断りだわ。私から行かなくても、あいつは絶対教えないわ。  それに・・・・・・スネイプには負けたくない!  私だけ、独りぼっちなのは嫌よ・・・・・・私も、ホグワーツに行きたい・・・!」 いつも強気なペチュニアが、涙を流して何かを訴えるのは初めてだった。 リリーとスネイプには秘密する理由を理解したは冷たいペチュニアの手を握りしめた。 「わかった、僕、力になるよ!一緒に、ホグワーツに行こう!」 「本当ね?約束よ?」 ペチュニアは涙を拭って、半分微笑んだ。 「私にも魔法が使えるんだってスネイプに見返してやるわ!」 「相変わらずだなあ、チュニー。」 苦笑を浮かべながらも、誰かに頼まれ事をするのは初めてであったにとって、 これからがとても楽しみだと、今まで以上の興奮を覚えた。 *** それから少し経ち、父の不在に皆と遊ぶのは変わらずだが、 は合間を縫ってペチュニアに呪文を教えていた。 自分の知っている魔法だけでは彼女のためにはならないと考え、 実家から『呪文書』や『魔法の歴史』の本といったいくつかを拝借してきた。 日を重ねていくが、ペチュニアが魔法を使う姿を一度も見せることはなかった。 「だめだわ、今日も失敗・・・・・・。」 「このくらい、どうってことないよ。誰だって始めから成功するとは限らないし。」 「私には―――私には無理なの?リリーと同じエバンズなのに、同じ親から生まれて・・・・・・!」 じんわりと涙を浮かべ、今にも泣き出しそうなペチュニアを見て、 は必至で頭を回転させ、気の利く言葉を探し求めた。 「チュニー、僕が前に―――僕の両親が魔法使いだって話、聞いたろ?  でも母さんは、君と同じ一般市民だったんだ。  それにも関わらず、本物の魔女にも負けない魔術やその功績を、母さんは成し遂げたんだ!」 「あなたの、ママが・・・・・・?」 ペチュニアはしゃっくりを抑えつつ、の話に耳を傾けた。 「その時、未確認だった魔法生物の飼育の方法とか、その生物の実態について発表した。  小さい頃から動物と触れ合ってて、とても大好きなんだ。  それなのに何でその人が、あんな奴と結婚したのか、よく分からない。」 父の顔を思い出し、は思わず顔を歪めた。 「あなたのパパってどんな人?」 「純血っていう魔法族の両親を持ってる魔法使いさ。  僕にはよく分からないけど、純血の魔法使いじゃなきゃダメなんだって。  普通の家庭から生まれた魔法使いさえ、軽蔑してる嫌な奴さ。  もしかしたら、母さんはそいつに脅されて無理やり結婚されたのかも・・・・・・。」 いつの間にか話が変わっているが、お互いに気付いてる様子はなく、 ペチュニアはもっと聞きたいといった姿勢になっていた。 「それは、あなたが男の子のふりをしているのと関係があるの?」 まるで確認をするかのように言った言葉に、は驚いた表情でペチュニアを見た。 「知ってたの・・・?僕が、女だって・・・・・・。」 「当たり前よ、ずっと一緒にいたんだから。  あの二人もとっくに気付いてるとは思うけど・・・・・・  そういえばちょっと、顔付き変わった?  元から中性的ではあったけど、本当に男の子みたい・・・・・・。」 「そりゃあ薬を呑んでるからさ。七歳からずーっと。」 は懐から『性別転換薬』を取り出して、ペチュニアに手渡した。 灰色の粒が入っている瓶をしげしげと眺めた。 「こんなもので男になれるの?」 「いろんな薬草が詰まってるからね。今も呑んでるから、見てみる?」 そう言って上着をめくろうとすると、ペチュニアがかあっと赤くなった。 「バカ!何考えてるの!?あんたは恥ってもんがないの!?  今は男の子だからっていいとは言わないの!  まさかリリーにこんなこと、したんじゃないでしょうね?」 ジロリと睨みつけるペチュニアには即座に首を振った。 「本当ね?」 「ああ、誓って。」 はきゅっと口を結んで、じっと見つめ返した。 暫く沈黙が続いたが、ペチュニアはやっと納得の色を浮かべてふーっと息を吐いた。 魔法を使ってもいないのに、どっと疲れたような顔をしていた。 「どうやらあなたには魔法以外に別のことを教える必要があるわね・・・・・・。」