十一年目の暑い夏―――。 ついに、ロードヴァリウス家のところに例の手紙が届いた。 ホグワーツ入学許可証だ! 飛び上がるにサルビアは拍手をして、こっそり来ていたジェニファーからお祝いの言葉を貰った。 「おめでとう、!あなたもホグワーツに通えるなんて私も嬉しいわ!」 「ええ、まだ小さかったご主人様を思い出します。」 しみじみと言ったサルビアの言葉は、には聞こえなかった。 は未だにホグワーツの手紙を上に掲げて眺めていた。 「そうだ、皆のところに行かなきゃ!」 こうしてはいられないと、は家を飛び出した。 皆にも手紙が届いたのか聞きたくて、この喜びを分かち合いたい気持ちでいっぱいだ。 遊び場に見慣れた二人の姿があった。だが、二人の表情には喜びとは反対の負の感情を現していた。 は走るスピードを落とし、「やあ。」と声をかけた。 リリーが顔を上げた。その顔には罪悪感で溢れていた。 「ああ、・・・・・・どうしよう、わたし、何て言えば・・・・・・。」 「何があったの?」 「僕らの元に学校の手紙が届いた。それがあいつには届かなかった。」 リリーの代わりにスネイプがハッキリと答えた。 リリーはひどいわ!とスネイプをキッと睨みつけた。 「わたし、教科書や制服を揃えたいから一緒に行こうって誘ったけど、 行かないって飛び出して・・・・・・。」 は何ともいえない表情で突っ立っていた。 スネイプはペチュニアと仲良しとは言えなかったが、 互いにリリーに対する気持ちをどことなく尊重していた。 以前のように心のない言葉で突き放すことはなかった。 「リリー、家の人が待ってる。行こう。」 「でも・・・!」 「チュニーは僕が捜すよ。こっちは買い出しの話はまだないから。」 「ならわたしも捜す!」 「大丈夫だよ!」 は思わずリリーの肩を抱き寄せた。 「チュニーは僕に任せてほしい・・・・・・そんな遠くには行ってはずだよ。」 少しでも不安を軽くしようと笑みを浮かべた。 の言葉を聞いて、リリーは何度も頷いた。 お願い、絶対よ、とリリーはの手を何度も握りしめた。 スネイプは少女の背に手を当てて誘導しようとした。 一瞬、チラリとを見たが、何も言わず両親たちの所へ去った。 曇空は更に暗くなり、ポツポツと雨足が激しくなった。 はペチュニアが行きそうな所を一つだけ把握していた。 それは二人しか知らない秘密の特訓場。 人気のない草むらと転がっているドラム缶の中に、 彼女は自分を体を抱きしめるように座っていた。 水溜まりを踏み、水がはねた音がはっきりとペチュニアの耳に届いた。 見上げた顔には涙が伝った痕が残っていた。 「私、にたくさんことを教えてもらったのに―――グスッ――― 手紙が、手紙が来なかった・・・・・・!」 「チュニー、まだ分からないよ。 ホグワーツの校長先生に、ダンブルドアに直接お手紙を出してみようよ。 もしかしたら、きっと―――。」 「どうして、そんなことが言い切れるの?」 突然、ペチュニアの口調が低く、険しいものに変わった。 「あなたはいいでしょうね、ホグワーツからの手紙が来て。 魔法族の父親がいたから、魔法が使えたから―――。」 「チュニー!」 は思わず赤くなって声を上げた。 我に返った時にはペチュニアは悪いことをしてしまったという顔で、 いつもの口調に戻っていた。 「ごめんなさい、あなたに当たる理由なんてないのに・・・・・・。」 「僕の方こそ、怒鳴ってごめん。」 「私・・・・・・書くだけ、書いてみる。」 ペチュニアの言葉に、は出来るだけの笑顔で頷いた。 自分の持ち物は結局、父の言葉もあって使用人が全て揃わせ、 ダイアゴン横丁に行くことは叶わなかった。 だが彼女のことを考えると、自分だけ楽しい思いをするのは忍びないと思うのだ。