午前から午後まで、指定されている魔法教科の授業を受けることになっていた。 が気になっていた魔法生物飼育学は残念ながら三学年からの選択科目となっていて、 ちょっぴりショックを受けていた。 薬草学ではグリフィンドールと同じ教室でリリーとようやく顔を合わせられ、 嬉しいような、ちょっと複雑な気持ちもどこかにあった。 魔法史はただ教科書を読むだけでとても眠たかったが、 変身術は受けている必須科目の中でずば抜けて難しかった。 「さっきの話、面白かったね。変身術もワイワイできる雰囲気になればいいのに。」 「そういうあなたはビンズ先生の授業を真面目に聞くべきよ。」 「だって、本当に退屈なんだ。リリーも見ただろ?ほとんどが目を半開きにしてる。」 「もう!!」 が軽いふざけで目を半開きにした変顔を作ると、リリーに背中を叩かれた。 スネイプは二人の談笑を聞き流しながら、教科書を持って黙々と歩いていた。 「周りってほんとなんにもないんだなあ。  禁断の森に大きな湖・・・・・・ここからじゃ駅すら見えないね。」 すると、ピタリとリリーの足が止まった。 が気付くと、スネイプも立ち止まってそちらに振り返った。 リリーの様子を窺った。笑顔は消え、暗い表情で俯いていた。 「どうしたの?どこか、痛い?」 「は・・・・・・チュニーに―――チュニーに会ったの?」 「うん?」 おそるおそるといった口調で呟くリリーの声が聞こえなかったは曖昧な返事をした。 突然バッと顔を上げて、詰めよる勢いで言い始めた。 「わたし、汽車に乗る直前、チュニーに・・・・・・  ダンブルドアからの手紙をわたしたちが見たからに―――憎んでいるの。  チュニーは行きたくないなんて言ったけどそんな―――そんなことないはずよ!  わたし・・・・・・今はこうしてホグワーツにいるけれど、本当にここにいていいのか・・・・・・。」 胸が張り裂けそうな声色でリリーはそう言った。 駅の中で会ったペチュニアのあの表情が、鮮明に思い出される。 リリーはごめん、とか細い声で言って、その場から走っていった。 ずっと沈黙を守っていたスネイプがを見た。 「お前、あいつに何か助言でも言ったんだろ?  魔法について教えたのなら、それは誤った判断だ。」 「どうして?チュニーは!本当に心の底からホグワーツに行きたいって!  友達の願いに協力したいのは当然だろ?」 「呆れたな・・・・・・本気でマグルが魔法を使えるようになるとでも?」 「そうさ!」 ムキになって強く言い返した。スネイプの表情は相変わらず渋い顔をしていた。 「マグル生まれが魔法を使えるのはごく僅かだ。  リリーのようにマグル同士の間から魔女が生まれるのも少数しかいない。  でもリリーは元から魔法が使える。」 「そうだよ、だからチュニーだって出来るかもしれない―――!」 「それが誤ってるんだ!」 スネイプが苛ついた口調で声を上げた。 「魔女であるかどうか、生まれた瞬間から決まるんだ。  マグルが十一歳になるまで魔法を使えるようになった例は、今まで一度もない。  あの女の肩を持つ気はないけど、お前はあいつを余計に苦しめたんだ。」 「違う!僕は、そんなつもりじゃ・・・・・・。」 「くどい!嫌いなんだよ、後先考えないお前のようなお人好しが。」 スネイプは振り返らず、リリーの後を追うように足早に去っていった。 何故スネイプはそんなことが言えるのだと、頭の中でぐるぐると回った。 そして、スネイプが言った『苦しめた』という言葉で思考がピタリと止まった。 自分はペチュニアに何かしたかった。けれど、それは結果として彼女を悲しませてしまった。 彼が言った言葉を全部納得したくないが、それが現実なんだと絶望を叩きつけられた。 「くそっ・・・・・・セブの、言ってた通りじゃないか・・・・・・。」 次の授業が迫る中、は一人、静かに泣いた。