私は。 両親が日本人。元から頭がいいとか特殊能力があるわけでもないごく普通の日本人だ。 母に公園へ連れてってもらい、そこで知り合った友達と遊んでいた時それは突然起こった。 「えっ・・・・・・?」 追いかけてくる友達の方へ振り返って目にしたのは見慣れた公園ではなく、薄暗い路地だった。 いつも遊んで通る公園の周囲にこんな場所はなかった。レンガに囲まれ、心細くなかった私は駆け出した。 光が見える場所へ向かい路地を抜け出した。だがそこも自分の知らない街並み。 当時はアメリカやイタリアなど外国のことを知らない私にとってそこは未知なる光景だった。 ぽつぽつと現れ歩く人の顔つきも日本人ではない。 滅多に見ないアジア人である幼児の私に好奇な視線が飛び交う。 どちらかというと強面が多い大人がとても怖く思え、その場で縮こまんでしまった。 「ここどこ・・・?みんな・・・おかあさん・・・」 「どうした?」 頭上からかかった声に恐る恐る顔を上げた。故郷ではあまり見ない白銀の頭髪と赤い目の男子。 自分より年上のお兄さんであると明らかだった。 「ここに住んでる・・・わけじゃあないな?この町でお前のような子供が一人でいちゃ危ないぞ。 親はどうした?」 「っう・・・」 「?・・・おい!」 彼が何を言っているのかわからなかった。 けれど心細くなっている私にかける声色はとても優しくて、ふっと力が抜けて涙が溢れた。 それが返って彼を困らせてしまった。 泣き止まなきゃと頭では分かっているが、ぽろぽろと流れ出る雫は止まらない。 それでも彼は私を突き放さず、ただじっと側にいてくれた。 2019/07/04