*4部本編終了後 *波紋・スタンドは使えるが、未だに記憶は戻っていない体 *シーザー健在 今日の最後の客が帰っていくのを見届けてから、立て看板を中に入れた。 本日も変わりなく、いつもの一日であった。 というのも、このお店は商店街からかなり離れた場所にあるので、来るのはほぼ知人だけだ。 「お疲れ様デス。今日は暑いので帰る前にぜひ、これを飲んでください。」 「『ありがとうございます』『新作ですか?』」 「はい、後ほど感想をお願いしますね。」 そう言ってトニオさんが差し出したグラスに一口つける。 若干苦みのあるレモンの香りがする。とても爽やかで美味しい。 「さて、ワタシの店は明日からお休みをしますので、  次は23日からお願いしマス。」 「『えっ』・・・『それだと』『お盆はとっくに過ぎてますけど』」 「ええ、実は一度故郷へ帰国しようと思ってるんでス・・・・・・。  それに、いつもこの炎天下の地を歩いて手伝ってくれるさんにも休暇が必要デス。  なのでゆっくり羽を伸ばしてください。」 「・・・・・・『どうも』」 何だか照れくさくて、熱くなった体(というより顔)を冷やそうとまたグラスを傾けた。 思いっきり喉に通し、氷がカランと音を立てた。 *** 夕暮れの時とはいえ、由花子さんの家まで距離があると考慮して早めに上がらせて貰った。 本来なら、私がトニオさんのお店を手伝うことはないのだが、 少し前に自分がアルバイトをしたいなとこぼしたことから「ではワタシのとこならどうですか?」と 純粋な笑みに断ることができなかった。 私なんていなくてもトニオさんは普段からウェイターも兼ねてやっているのだが、 女性がいた方が華やかだと、なんともイタリア人らしい返しをもらった。 (何処で聞いたのか、めざとい露伴先生からも依頼が来たが、丁重にお断りした。まあ察して) この夏休み中だけ働かせてもらうだけでもありがたいのだが、次の日から何をしようか考えものだ。 宿題はとっくに終えてるし、そろそろ図書館以外のところにも足を運びたい。 仗助くん達の顔がすぐに浮かんだが、慌てて頭から振り払った。 「(だめだめ!彼らだって予定あるんだから!それに、もう・・・・・・)」 今日は8月13日。 『盆の入り』―――地方によって日にちは違うが、先祖や亡くなった方が浄土から戻ってくる。 彼らが迷わずに自宅に戻ってくるように迎え火を行うのだ。 そういえばトラサルディーは霊園の近くにあったんだったな。と、何気なく後ろを振り返った。 人影もない霊園だが、誰かが線香を焚いたであろうあとがあった。 そろそろ帰らないと由花子さんに怒られちゃう。 『ふう―――。』 火を口で吹き消すような音がはっきりと聞こえて、思わず振り返った。 誰もいない。気のせいか・・・・・・なら、この拭えない不安はなんなのか。 帰路へ足を進ませると、後ろからコツコツと靴を鳴らす。 もう一度後ろを見るが、誰もいない。とてつもないベタな展開だが、いやまさかと脳を働かせる。 このお盆に紛れて、霊がイタズラしに来たのだろうか。 ハロウィンじゃないのだから悪霊ではないと思いたい。悪霊・・・・・・吉良吉影?いやいやまさか。 なんて馬鹿なことを考えつつも、足音は追ってきている。それはわざと(・・・)音を鳴らしているようだった。 何だろう、私、おちょくられてる?そう思うとちょっと腹が立ってきた。 悪いが、こっちは早く帰りたいんだ。あなたは早く遺族のところへ行きなさいってーの! 軽く説教する気持ちで止まろうとした時には、もう足音はしなかった。 あれ?飽きて帰ったか? 『お前は相変わらず百面相だの、七面鳥の様だな。』 またはっきりと―――音ではなく、男の声だった。 聞こえたと認識した瞬間、自分は回し蹴りを繰り広げていた。 『まったく・・・・・・マナーのない女だな。』 ピタリと止まった自分の足の先には、シーザーさんとは違ったやや色の強い金髪で、 これまた超身長でがっしりした体系。見るからに外人だが、若く見えるはずなのに、 百年以上生きていたような貫禄がある。 目の前にいる男は唖然とする私を愉快そうに笑みを浮かべている。 『久しいな、声なき好敵手(とも)よ。このDIOの力をもってして尚生きていたとは本当にしぶとい女だ。』 紅い目を細め、手を伸ばして私の頬を撫でた。だが、その手が直に肌に触れることはない。 何故なら彼はもう―――死んでいるから。 「『貴方は一体何者だ?』」 すると、今度は彼が目を大きく見開かせた。 一日目