*小説『OVER HEAVEN』要素あり
あの男が感づかれる前にだけはどうにか始末したい。
どうやってもすり抜けてしまう状態で出来るかは置いて、まずこの最悪な状況を抜け出したい。
だが、『一生分かり合えない』と言い放たれてから、何故か何もせずその場から去っていた。
自分でも理解しがたい行動に驚きを隠せなかった。スタンド攻撃でも受けたか?
しかし、こちらの攻撃が当たらなければあちらも同じのはず。
昨夜と同じようにわざわざ一人でいる時を狙わず、わざわざ関係のない市民が集まる施設へ訪れた。
わざわざ人がいるところを見計らってきたのは余計なまねをさせないためだと自分を納得させた。
しかし、それだけでは甘い。なので少し、からかってやった。案の定、要は激昂した。
昔の幼馴染と似て、自分よりも他人を想い怒っている。
あの男が此処にいるかの様―――とまではいかないが。
も、ジョナサンと同様に自然と仲間が集まっている。 それにも関わらず、何故一人で行動する?
今だってそうだ。約束の時間になる前にいくらでも助けを呼べたはずだ。
「『あんたをここに来て貰った理由はただ一つ』『スタンドで』『あの世に帰す』」
この女が何を考えているか、大方理解した。
互いにこの時代へ飛ばされた条件をクリアする。つまり―――エジプトでの死闘を再現する。
かなりアバウトな内容だが、試す価値はある。成功すれば当然、にも影響が及ぶ。
それは大いに結構だが、もし、私の『計画』に賛同してくれる親友の元へいったらどうなる・・・?
無論、阻んでくるだろう。ジョースターを導くように。嗚呼、悩み所だ。
「『オラァッ!!』」
スタンド同士の拳が飛び交って5分も満たない。攻撃はどちらも透かすだけで進歩がない。
それでも攻撃を止めなかった。私も、も、無言で続けた。
0時といえば・・・・・・カイロの街中で戦闘を始めたのは夕方の5時過ぎだったか。
日本時間に直すとちょうど今くらいの時間だったな。これも、はたして偶然なのだろうか。
自分が企みを立てるとき、頭に浮かぶのはいつだっておまえだ。
―――あの時、本人から直接聞いたわけではないが、彼女が一人で行動する理由は嫌でも察しはついている。
はディオ・ブランドーとの闘いから、柱の男、復活したおれと二度死闘を経験した。
今回再会するまでも、は新たな悪意と闘っていたのだろう。
幾度も戦いから帰還し、あの女は何を感じ、何を思ったか。
戦うために力を得た。仲間も得た。平和も・・・その度に犠牲者は出た。愛しい者も。
今のの瞳に、あの頃のような力強い何かを感じない。もう二度と、失いたくないと悲しみが現れている。
自分がいくら傷つこうが、戦うのを止めないだろう。本当に・・・とても、嫌な女だ。
『ディオ、何があろうと気高く、誇り高く生きるのよ。そうすればきっと、天国に行けるわ』
わたしの母と亡き夫の仇に情けをエリナ・ジョースター・・・最期まで愚か極まりない女だった。
は聖女、淑女のどちらも当てはまらない遠くかけ離れた柄だが、
情けは一切なく、躊躇なく拳をぶつけ合うことができる。母やエリナよりも、まだ好きな方だ。
ひん曲がろうが気高く、誇り高い女であるのは違いない。
『わたしは、そんなおまえを尊敬に値する』
の目が大きく見開く。
カイロで吸血鬼のエキスを流し込もうとした際に言ったが、今の彼女には意味がないのだろうな。
しかし、ここまで感傷的になるとは、ジョナサンの体に馴染みすぎたせいか?
四日目
何度目かの拳がついにぶつかった同時に、謎の光に包まれた。
ついに成功した!喜ぶの束の間で、DIOは消えていなかった。何だよそれ。
確実な根拠があっての実証じゃないから、こんなものかと自分の無謀さを思い知った。
さんざん動き回ったツケが全身に回る。
心の底でクソッ!と吐き捨てる自分に対し、
DIOは『この時間達でも不審者がいるとは限らん。帰れ。』と言った。
疲れを知らない顔をして何を言ってるんだと睨むが、いいから帰れと有無を言わせない。
承太郎さん達からすればDIOらしくないと思うだろうが、私もそう思う。
帰れと言った本人がわざわざ後ろをついて来るし、到着するまでの間も、一度も襲撃をされなかった。
おかしい。初めて会った時からずっとおかしいが、今日は特にだ。
しかし、今日は暴れるだけ暴れて町を何往復もしたからか、疲れがたまっている。
まずはこの汗臭いのを落として睡眠をとったら、明日また行動を再開しよう。
***
ああ、今日もセミが鳴いている。この猛暑の中、隣で一番涼しい顔をしているこの男を殴りたい。
自分の拳が体を通過する。ちくしょう。
『まだそんな悪あがきをするか』
「『するさ、何度でも』『あんたを殴れるまで』『あんたはそのままでいいの?』」
『その理屈でいうとおれやザ・ワールドの攻撃を受けることになるが?』
「『かわすさ』」
能力を直で見たのを覚えていないくせに何を言ってるんだと、彼は思ってるだろう。
そういう私も、どうして友達みたく呑気に会話しているんだろう。
『それで?一体どこへ向かっている?他に方法でもあるのか?』
「『それを試しに向かってるんだよ』」
また確証のないものか・・・と一人ごちたが、通り過ぎる人が見えてきたので無視した。
私が向かってるのは『振り向いてはいけない小道』だ。
鈴美さんが成仏した今でもあの道に行けるか自信ないが、これがダメならもうあてがない。
オーソンとキサラ。その間に道が―――なかった。
項垂れる私をよそに、DIOは此処に何かあるのかとうるさかったので、その場から離れた。
「『此間』『露伴先生が幽霊について話してただろ?』『その時ボソッと口にしてた
振り向いてはいけない小道のことなんだけど』」
『小道?』
「『さっきあったオーソンとキサラ』『その間に地図にもなく通常は見えない道が前まではあった』
『そこのポストを越えて出口に到着するまでは決して後ろを振り返っていけない』・・・・・・
『振り返った者は何であろうとあの世へ引きずり込まれる』」
『またオカルトものか・・・人間は昔から非科学なものによく惹かれる』
「『お前の存在も似たようなものだけどね』『露伴先生が話してたけど』
『無理やり剥がしちゃダメらしい憑き物系のスタンドは
そこにいる存在によってあの世へ行ったってさ』」
『フン、くだらん・・・・・・・・・待て。貴様まさか、その小道でおれを振り向かせるつもりだったのか!』
「『それも叶わずだけどね・・・』」
この男の言う通り、結局無駄な足掻きに終わった。
この先もこの幽霊が付きまとうと思うと気が重い。周囲に見えない分、性質が悪い。
どうして、私にしか見えないんだろう。
『また溜息ついたな。これで6回目だ』
「『することがないからって・・・』『暇人でしょ、君』」
『おまえの百面相を見て、少しは気が紛れるがな』
「・・・・・・『友達、いないでしょ』」
『見かけで判断するな。真実は目に見えるものとは限らん』
本人はいいことを言ってるつもりだろうが、彼に友人がいたとしても、
その人物もロクな人間ではないだろう。・・・もうやめよう、どんどんくだらない方向にいってしまう。
『して、。日本は今、お盆らしいな。16日では夕方に送り火を焚いて先祖を見送ると』
「『へえ・・・』『よく知ってるね』」
『図書館に邪魔した時、職員がそれについて話していたのをたまたま小耳にはさんだまでだ』
やっぱり暇人なんじゃ・・・と言いかけたが、
DIOが今にも襲い掛かって(無理だろうけど)きそうな睨みを利かせていたので、黙っておいた。
『先祖・・・この地に承太郎はもういないが、今も滞在していればあいつも来ていただろうか』
「『ジョナサン・ジョースター・・・?』」
『ああ、その風習が本当なら、おまえの所にも会いに行っただろうにな・・・』
「・・・『そうだね』『あんたじゃなくて』『彼に会ってみたかった』」
『残念だったな』
それ以上、何の会話もなく、ただ歩いた。
時折、ご近所の方に手を振った。夕日が沈んでいくと同時に、人の数も減っていった。
気づけば最初に顔を合わせた霊園の前に着いていた。
『思うのだが、貴様はあの時何故ここにいた?』
「『仕事帰り』『職場が霊園の近くだったから』」
『ほう、すぐ近くに世話になってる職があったのか。それはいいことを知った』
「『来ないでよ』『幽霊がうろついてるなんて知ったら評判下がる』」
『どうせ見えまい』
ざあ、と風が吹いた。線香の香が鼻につく。
私は何を思ったのか、「『あのさ―――』」と横を見ると、DIOの姿はなかった。
また悪ふざけでもしているのかと考えたが、靴音も視線も、感じることはなかった。
由花子さん達が帰宅し、いつもの日常に戻った。
何の前触れもなく、DIOは最初の最後まで勝手に消えていた。
次の日、露伴先生が勝手に連絡を寄こしたみたいで、
わざわざアメリカから承太郎さんが険しい表情で迫ってきた時は正直怖かった。
「電話で大まかなことしか聞いてないが平気か?特徴からして奴が浮かぶんだが・・・!」
あの冷静な人がここまで切羽詰まるのは、やはりDIOのことだからだろう。
その幽霊は彼が倒したはずの男なのだから。
一応、怪我するようなことはなかったと無事だけは伝えた。肝心な部分は・・・・・・うん。
信じてくれないかもしれないが、4日間あったことを書き残しておこう。
私に絡んできたDIOと名乗る幽霊は何だったのか、全ては幻なのか、今になっても不明のままだ。
念のため、トラサルディーの扉の下にもお清めの塩を置いておこう。
「君が遭遇した幽霊があの吸血鬼だってな!その記憶をじっくり読ませてくれ!」
「テメーいいかげんにしろよッ!」
「あたしの許可なくの記憶を見るんじゃないわッ!」
***
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
前からDIOの魂が突然、夢主の前に現れて何やかんやするネタが浮かんでたので
ネタ消化のも含めてこの機会に書けてよかったです。
結局原因は何だったのか、またDIOが現れるのかと気になるところ満載ですが、
一旦話はここまでにしておきます。
今回お盆を取り上げ、色々と調べてみたら知らないこともたくさん知れたのでいい勉強になりました。
文章の方も良くなっていればいいんですが・・・。
2017/08/16