『患者は二名。あなたはこの人をお願いね。』
『!!・・・あ、はい・・・・・・。』
「あなた・・・また会えたわね。」
あのの声だ―――すぐに目を覚ましたが、自分以外誰もいなかった。
少し狭い室内だが、誰かが運んでくれたのだろう。すると扉から見知らぬ女性が入って来た。
「あら良かった。元気そうね。」
「気分はどう?痛い所はない?」私は素直に頷いてみせる。
後から知ったが、気を失った私はそのままジョナサンと共にこの病院に運ばれたのことだ。
少し体を動かしてみれば意外にも大きなケガすらなかった。
「この調子ならすぐ退院してもよさそうね。」
「でもあと1日ゆっくり休まなきゃダメよ?」
看護婦さんに念を押され、「(はい)」と頷く。
暫くするとドカドカと大きな足取りでスピードワゴンさんが入って来た。(何故か怒ってる・・・?)
「おっと・・・無礼な入り方だったな。すまねえ。・・・・・・具合はどうだ?」
「(おかげ様で)」笑顔で迎えると、突然こんなことを言い出した。
「聞いてくれよ!あの女ァ・・・おれが貧民街の人間であるのを知ってか面会謝絶って追い出しやがった!!」
私の所に寄る前、ジョナサンの病室をたずねた際、
美人な(スピードワゴンさん談)看護婦さんに冷ややかな目で(スピード以下略)そう言われたそうだ。
・・・あれ、彼の腕・・・治ってる・・・?
「ん・・・?ああ、おれも驚いたんだがあの惨事の後、
気付いたら腕だけじゃなくアバラ骨まで元に戻ってたんだ。」
惨事―――そこで自分が彼にしたことを思い出した。
「(ごめんなさいスピードワゴンさんッ!!
悪気があって外へ押し出したんじゃあないんですッ―――!!!)」
「えっ・・・!?急にどうした!?」
ベッドの上で土下座して何度もペコペコと頭を下げた。
ちなみに焦ってうろたえていた彼がちょっぴり可愛かったと思ったのは内緒だ。
***
後日、制服がボロボロだった為、看護婦さんにもらった古着を着用してジョースター邸の跡地へ向かった。
あれから三日も経っていたなんて・・・もうあの頃の面影は見当たらない。気になるのは『石仮面』―――。
「(アレのせいで・・・ジョージさん達は亡くなった)」
ガレキを掘っても出てこない。邸が崩れた同様に粉微塵になったと信じたい。
そう思う・・・そして、早く忘れよう。私はこれから一人で生きていかなくてはならないのだから。
「失礼、お嬢さん。」
周りに気を配っていなかった為、声を掛けられただけで心臓が飛び上がった。
気がつけば後ろに印象的なシルクハットをかぶった紳士が立っていた。
「ここは事故で立入禁止区域になってるはずなんだが・・・君はこの土地に住んでいる者かね?」
≪―――いいえ。ジョースター家当主の許しで居候していた人間です。≫
「ふむ・・・先程から何か探し回っていたように見えたが、見つかったかい?」
彼の問いに首を振った。「手伝うことはあるかね?」と返って来たがアレをどう説明すればいいのか・・・
むしろ話していいのか・・・?
「―――『石仮面』、か?」
「・・・!!?」
「(何故それを―――)」再び彼の顔を見ると「やはりな。」と何か考え込んだ。
「ここで何があったか君は知っているね?」
≪そうですけど、貴方は・・・?≫
「わたしはツェペリ男爵だ。訳あって『石仮面』を追っている。」
「・・・!」
「だが本題に入る前に一つ断っておかねばならん。」
思わず首を傾げるが、その口調と強い眼差しから何故だか深刻さを表していた。
でも―――。
「それを教えれば君の心に平穏はおとずれないだろう。
君にとって酷なことだが、知らないままが幸せであるかもしれん。」
≪―――構いません。それに彼らと関わった時点で、他人事とは言えないから。≫
「・・・そうか。では落ち着いて聞いてくれ。」
まだ話していないと言うのに、嫌な汗が出て来た。呼吸まで乱れて息を吐く音がうるさい。
「『石仮面』は壊れていない・・・・・・!」
ドクン、と心臓が鼓動する。
「『石仮面の男』ディオがもっている!」
『物語はそう簡単には終わらない』とは、まさにこのことだ。