『石仮面』で吸血鬼になったディオと対抗すべく、東洋人の言う『仙道』―――『波紋法』の取得を試みる。
この修業に入る際、何らかのきっかけで自然に『波紋』が使えていたことが判明した。
あの時自分やスピードワゴンに触れた時、波紋でケガを治癒していたようだ。
「・・・!?何故君が!?」
後からツェペリさんに連れて来られたジョナサンも参加することになったが、
私まで戦いに出ることを知ってから、何かと退くことを勧められたが、結局一緒に波紋法を覚え今に至る。
「それがとうさんから貰った時計かい?」
「(うん)」
しばしの休憩の中、首にかけ直した懐中時計を見たジョナサンが言う。
ジョージさんから頂いた最初で最後のプレゼント。自分の父が贈ったものからか、
それを懐かしむように微笑んでいた。
「(父も家も失ってどうしていたかと思ったけど・・・心配する必要はなさそうだね・・・)」
否、他人の心配をしている場合じゃないな。最も女である私が一番力をつけないと確実においていかれる。
再びジョナサンを見るとじっとこちらを見ていた。え?何か顔に付いてる?
「ずっと思っていたんだけど・・・・・・・・・。」
「・・・?」
「の瞳ってキレイだね!」
・・・・・・・・・はい?声が出ていたらそう言ったに違いない。
「『日本』・・・であってるよね?その国の人達って皆そういう色かい?」
≪皆、茶色だと思うけど・・・。≫
考えてみれば日本人(ハーフの人は分からないが)皆そうじゃないか。
否、もしかしたら私が会っていないだけで違う色の瞳を持つ人がいるのかも。
・・・それにしてもどうして揃いに揃って彼らは瞳についてやたらと指摘するんだ?
外国はともかく、自分の故郷ではどうだろう。
言っておくがこれといって特別なことはしていない。(念の為)
私が単に意識過剰になっているだけなのか、それとも他に言うことなくてそう言ってくるのか―――。
(流石に後半でないことを願いたい)
―――・・・あっ。
「(そうだ!スピードワゴンさんにどういう紹介したんだあんたは・・・!!)」
『え!?どっ、どうしたんだい!?」
このままジョナサンの肉付きのいい胸板を叩き入れたい所だが、
『チキン』であるのを抜け出せない私には出来ない。
だが、このどうしようもない羞恥心を吐き出したい一心で芝生の上を何度も叩いた。
***
一週間か二週間も経ったのだろうか。
スピードワゴンさんが「ディオらしき姿を確認した。」と情報を聞きつけ、
奴のいる『風の騎士たちの町』へ向けて馬車に乗り込んだ。
暫くするとウインドナイツロットへのトンネルに入る。何事もなければ太陽のあるうちに行動がとれる。
皆沈黙の中、突然馬車が停止した。出口までまだ間もない。
「おい御者ッ!なぜ止めるんだ?」
「気をつけろッ!ここは太陽がとどいていないッ!」
イラ立ちを隠せないまま外に出ると、前を見たスピードワゴンさんが悲鳴を上げる。
一瞬体をビクつかせながらも中を出ると馬だけでなく、御者まで刃物で串刺しにされていた。
こんな残酷シーン、中々映画では観ないぞ。しかも首元が何かうごめいている。
人・・・!?いや、コイツは―――。
「屍生人だな。
人間を喰って永遠の生命と力を与えられ・・・・・・しかしディオの思いのままに操られる、いわば肉人形。」
腐臭がすると思ったら本当だったなんて・・・
だけどディオが吸血した警官もゾンビになっていたから不思議じゃない。
「最高の恐怖を与えて・・・・・・・・・・・・
青ざめた面にしてからおまえらの鮮血のあたたかさをあぁぁ味わってやるぜ!」
苦痛を知らないといった風に己のナイフで自分の頬を貫く。異常だ。
「絶望ォ―――に身をよじれ虫けらどもォオオ―――ッ!!」
「さて、奴はどう出るか。わしが奴なら―――。」ツェペリの言葉に自然と彼の方へ向く。
「ジョジョ・・・。これは大事な物の考え方じゃぞ!その@『もし自分が敵なら』と相手の立場に身をおく思考!
わしが奴ならッ!!まず太陽までの逃げ道!トンネルの入口をふさぐッ!!」
その言葉通り奴は馬車を片腕で持ち上げると、それをぶん投げた。
(ゾンビが『怪力』であることは昔でも共通しているようだ)
ガレキが崩れ完全に入口がふさがってしまった。今度は全身からメスが飛び出す。
あれで御者らを串刺しにしたのか。ガレキの一部を盾にしても簡単に貫いたので意味がない。
しかし前に出たツェペリさんはそれらを彼曰く『波紋カッター』で切り裂いた。
波紋呼吸法の利用によってワインにものすごい圧力をかけて歯の間から押しただけ、と言うからすごい。
「戦い思考のそのAじゃ!ノミっているよなあ・・・・・・・・・・・・ちっぽけな虫けらのノミじゃよ!」
「あの虫は我我巨大な人間にところかまわず戦いを挑んでくるなあ!これは『勇気』と呼べるだろうかねェ。
ノミどものは『勇気』とは呼べんなあ。では『勇気』とはいったい何か!?」
「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ!『恐怖』を我が物とすることじゃあッ!」
ワインボトルの底にゾンビが向けたメスが突き刺さる。呼吸は全く乱れていない。
「呼吸をみだすのは『恐怖』!だが『恐怖』を支配した時!呼吸は規則正しくみだれないッ!
波紋法の呼吸は『勇気』の産物!!人間讃歌は『勇気』の讃歌ッ!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!いくら強くてもこいつら屍生人は『勇気』を知らん!
ノミと同類よォーッ!!」
ツェペリさんの跳び膝蹴りがゾンビの顔半分を直撃した。その部分だけ熱された鉄ように溶けている。
しかもワインを一滴もこぼしていない。やべェ・・・すごすぎる。
すると脳に波紋が届くか届かないかで損傷したゾンビが壁にできた抜け穴に入り込む。
明らかに罠だろうな。
「まさか、奴を追って行くんじゃあねえでしょうね!」
「行かにゃあなるまい・・・。」
「しかし!行くのはジョジョひとり。」残りのワインを足したグラスをジョナサンに投げ渡す。
「戦い思考のそのBじゃ!!北国ノルウェーにこんな諺がある・・・・・・
『北風が勇者バイキングをつくった』」
「そのワインをほんの一滴こぼせば倒したとしても見捨てる。」と冷たく言い放つ。
すかさず「正気かテメーッ!」とスピードワゴンさんが咬みつくが、
ジョナサンはそれに応じて一人秘密の通路を通る。
渋い顔をするスピードワゴンさんにカリブ海で出会った漁師の話を始めた。
静寂に包まれる中、ぽつりスピードワゴンさんが口に開く。
「今更なんだがよォ・・・本当に嬢ちゃん連れていく気か?いくら波紋が使えてもよォ・・・。」
私の表情を伺いながら言葉をしぶる。・・・また『声』が出ないことに関してだな。
「何も言ってないのか?」ツェペリさんがそう言う顔に私は頷く。
「の体に何の支障もない。それに同行を決めたのは彼女自身だ。」
「こちらとしては、戦力は1人でも多い方がいい。」余計なことは言わずフォローしてくれた。
スピードワゴンさんは苦い顔をしたままだが、私のことを気遣って言ってくれたのだから有難い。
ありがとうスピードワゴンさん。