その後無事戻って来たジョナサンと共にトンネルから出ると既に太陽は沈みかけていた。 働いている人達がいる。まだ町はなんともないようだが、この町のどこかにディオは潜んでいる。 それにしても山が多いな・・・。 「そういえば・・・目(・)の方は大丈夫なのかい?もう何日も前からメガネをかけていないけど・・・。」 「(―――あ)」 通りで目元が『軽い』わけだ。 もしかしたらあの惨事中、窓から飛び出した勢いでメガネを失くしたのかも・・・ でも以前よりかなり視えているからいいか。すると後ろからおかしな声?がもれる。 「どうかしましたか?」 「い、いや・・・・・・スピードワゴンくんがあまりにも言うもんだからね。  一時的に軽い波紋なら作れるようにしてやろうかと思ったんだけど、ちょいとミスッた。  指がスベっちゃった。いや、ごめん!スマナイ、スピードワゴンくん。」 見る限りかなり痛そうだ。それにしてもツェペリさん、お茶目なところあるんですね。 なんて呑気に思っていると飛んで来た子供がスピードワゴンさんのカバンをぶん取って池に飛び込んだ。 中々見ないぞ、こんなひったくり現場。 「あの子に町の案内をしてもらうとするかね。」 まずツェペリさんが池の上を歩く。ジョナサンは膝まで濡れてしまっているが私はどうなんだろう。 ・・・お、なんとか出来た。ついでに顔まで沈んだスピードワゴンさんの体を引き上げる。 「ハッ、あ、あれ?何?あんたたちだれ?」 「この少年様子が少しおかしいですよ。波紋が強すぎたかな?」 「いや、おかしいのは少年だけじゃないぞ!周りを見ろ!!」 陽が落ちたと同時に広がるのは墓場。その地面から私達の足をつかむ。 スピードワゴンさんが指摘する方向へ視線を移すと―――その目的の男がいた。 「陽は落ちた・・・・・・・・・・・・。きさまの生命も没する時だ!!」 「奴がディオか・・・。なるほど、奴やゾンビィは太陽のもとでは行動できない・・・。  だから人間の子供に催眠術をかけ、我々を自分の戦いやすい時と場所におびきだしたか?」 ディオならやりそうだ。まさか催眠術まで得るなんて思ってもいなかったが・・・。 と思ってる内に騎士の死体のゾンビが迫って来た。さて、私の波紋はどの程度か・・・。 「(波紋疾走(オーバードライブ)!!)」 「ぼっきゃあああッ。」 足に波紋エネルギーを込めて頭に直接蹴り入れた。 だがこれに満足せず、次々とやって来るゾンビに蹴りをお見舞いする。 う〜ん、どうも拳が出ない。ようやく一掃できた所でツェペリさんが先頭に出てディオと対峙する。 「個人的には、きさまのことは知らん・・・・・・。  だがきさまの脳を目醒めさせた石仮面に対してあえて言おう。」 「とうとう会えたな(・・・・・・・・)!」ディオは警戒心をむき出すかの如く、牙を見せる。 「ヘイ、ベイビー!そんな不安定なところで戦う気か?おりてこい・・・・・・。」 「図にのるなよ、たかが虫ケラが。  おれは生物界の頂点・・・・・・・・・・・・未来を拓く新しい生物となった・・・・・・  人間ごときと対等の地におりていけるか!」 これが悪の大気、というものか。完全に暴帝に成り上がっている。ムカつくな。 「この腹のキズを癒せばジョジョのやつにつけられた負傷はすべて完治する!こい!呪い師!  きさまの生命でこの傷のくんじょう消毒してくれよう!」 「きさま―――いったい何人の生命をその傷のために吸い取った!?」 「おまえは、今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」 この外道め。心の内でしか罵れないから残念だ。 戦意を上げるジョナサンを制止するツェペリさんがディオに拳を放つ。 奴はその場から微動だにせず異様な反りで受け止めた。 「流し込む!太陽の波紋!山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!!」 波紋がディオの腕を伝わっていくが、何故かそれ(・・)は途中で止まる。 「貧弱!貧弱ゥ!」 あの時と同じ人間の努力を否定する言葉を口にして、自分の腕だけでなくツェペリさんの腕まで凍らせた。 その腕に亀裂が入り、凍った血が地面に弾かれる。 「おれが自分の肉体を自在にあやつれるということは知っていよう!  おれはきさまのふれた腕の水分を気化させた!水分は気化する時、同時に熱をうばって行く!」 瞬時に『凍らせた』というのか。そういうのもアリなの・・・!? 「そして!」 すかさずツェペリさんが防御の姿勢をとるが、あのままでは確実に当たる。 一回り大きく見える拳を、横からジョナサンが止める。 「ディオッ!君の野望、僕が打ち砕く!!」 こちらから見てかなりアンバランスな体勢になっているが、まだ動こうとしない。 二人合わせれば、あの能力に太刀打ちできるかもしれない。 「「くらえディオ!」」 「UREEYYYYY!」 二人の波紋が一時的に流れるだけで再び停止してしまう。 このままではジョナサンまで腕を凍らされてしまう。ピンチの最中、ポケットに忍ばせた物を握る。 ・・・やるか・・・私が考えた『技』で・・・!