「どうやらは生物を活性化させる力が強いようじゃな。」
それは修業中、私が暇つぶしに地面に転がっていた何かの植物の種で遊んでいた際、
無意識に流してしまった波紋エネルギーによって『発芽』したのだ。
前に傷ついた小鳥を波紋エネルギーで治癒したことがあるが、
まさか成長を(まだ植物しかやってないが)促すことが出来るなんて初耳だ。
「肉弾戦になった場合、波紋エネルギーで肉体の負担は多少軽くなる。だがはっきり言えば今の体では
戦闘には不向きだ。」
それがどういう意味か、痛いくらい理解した。
元々体育会系ではない私にいきなり「一般男性と同じ筋肉をつけて下さい。」と言われるように、やはり無理がある。
この修業期間でそれなりの筋力はつくだろうが、それまでディオが待ってくれる訳ではない。
「そこで君の特徴を生かした波紋エネルギーで戦う!
『波紋法』を完全に得とくすれば、後は自分の使い方次第じゃ!」
***
なす術もなくジョナサンの手に血がふき出す。彼だけは負傷させてはなるまいとツェペリさんの右足が動く。
それをねじ伏せようとディオが片手を出した瞬間、蔓が奴の腕に絡みつく。
「何だこれはッ!?」
彼らが戦いに集中している間にこっそり波紋でまとった『種』を岩場の隙間に仕込んでおいたのだ。
生憎、蔓で腕をつかんだ部分は凍っていたので直接ダメージには至らなかったがツェペリさんの左足は守れた。
続いてもう一つ編み出した『種子弾丸』(技名がそのまんまであることはスルーしてほしい)を繰り出す。
と言ってもただ波紋エネルギーで種を飛ばすだけなのだが。
「(くらえディオ・・・!)」
ジョナサンらとセリフが被ってしまったが胸の内にしまっておこう。
奴の頭に向けて弾こうとした瞬間、奴がこちらを見た。それと同時に種が飛ぶ。
「(げっ・・・!)」
僅かな怯みで方向を誤って撃ってしまった。その流れをスローモーションでも見ているかのように凝視する
ディオは隣りの岩場がその種によって崩れていく様に「―――フンッ。」と不敵な笑みを浮かべる。
「先程の攻撃にはほんのちょっと驚いたが実際たしかめてみて、もう問題ではないな!」
そう言うと腕をひねり、二人(いや三人?)を振り払う。
スピードワゴンさんがポコという少年をうまくキャッチしたので、私が代わりにツェペリさんを抱えた。
間近で見るその負傷した腕はもう『冷たい』だけでは済まない状態だ。
「『波紋』?『呼吸法』だと?フーフー吹くなら・・・・・・。」
ディオの視線の先に突然地響きが始まった。
「このおれのために、ファンファーレでも吹いてるのが似あっているぞッ!」
「もはやおれの出るまでもない!」「出てきてこいつらにファンファーレという悲鳴を吹かしてみろッ!」
かなり余裕ぶったディオの態度だが、このわき出てくるオーラがただ事ではない。
ジョナサンのいる岩だけが上がってると思いきや、
その下に一人、更にジョナサンごと岩を指一本で持ち上げるのが一人。
「十六世紀エリザベスT世暗殺をくわだて処刑された悲運の女王メアリー・スチュアートに仕えた
獰猛な騎士達よ!!」
「―――後始末!この虫けらどもの駆除はおまえたちふたりにまかせるぞ。好きにしろッ!!」
タルカスと呼ばれたゾンビが岩を砕く。二人がかりでジョナサンを狙いに定めた。
・・・完全になめられてるな私。
「む・・・無理だッ!今のジョジョでは!二対一では勝てん!こ・・・この腕に血液さえかよえばッ!!」
「通ったらどうなる?」
「血液さえ通えば呼吸法で少しは傷を癒せる・・・・・・。」
そうだった。彼の腕を何とかしなければ―――
するとスピードワゴンさんが凍傷覚悟の上で自分の肌に当てた。後で彼の火傷も治そう。
・・・後さっきから奴の視線が背中に突き刺さってるんですけど・・・!?
「(本当にこっち見てた・・・)」
「おまえも波紋を使えるとはな・・・。」
「先程の攻撃は見事だった。」アンタに褒められても何も出ないんだが。
「短い間だったが、おれはおまえのことを気に入っているんだ。できれば手にかけたくない。」
「・・・。」
「最初は苦痛をともなうがその暁に永遠の命を得られるぞ。
今のままの若さで永遠を楽しみたいとは思わないかい?」
あいつはその口調で人間をゾンビにしているのだろうか。彼らを下僕化させて・・・。
すぐにでも奴を殴りたい。だけどそれをできずに呼吸が乱れているのはディオを恐怖しているから?
何で―――?それでも抵抗を示そうと彼をにらむ。それを不敵な笑みで返される。
「(クソッ・・・!)」
悪態ついて歯軋りする私をよそに、
ジョナサンが腕に絡みついた黒髪を焼き切って黒騎士ブラフォード(さっき知った)と対峙していた。
だが乱入して来たゾンビの鼻を指で千切るなど、とてもディオの下僕とは思えない。
ブラフォードは黒髪を意思を持っているかのように操り、背中に装備していた剣を振りかざす。
予想外の攻撃にジョナサンはなんとか避けたが、バランスが取れぬまま岸辺へ落下する。
それを追ってブラフォードも彼が沈んだ水中へ落ちる。
「ま・・・まずいぞ!水中では呼吸ができない!つまり『波紋法』ができないッ!」
助けに行こうとするツェペリさん達を阻むタルカス。最悪な状況だ。
でも一番最悪なのは―――・・・・・・・・・
「このディオ・・・もうこの場にいる必要なし!いよいよこのウインドナイツロットの町住民全員を屍生人にするッ!
おまえが来るのを待ってるぞ、。」
―――何もできない自分だ。