村に下りてから全員沈黙だ。 呼吸法によって何とか歩けるようになった私をジョナサンは時折見ては何か言おうとしている。 お互い目が合うと「何か言いたいことがあるんじゃないのか?」と目で訴える。 「傷は・・・・・・・・・もう大丈夫なのかい?」 「(うん)」 「・・・、やっぱり―――・・・いや、むしろ君の意志を侮辱することになる。ごめん。」 細かくは言わなかったが、彼は「引き返すべきだ。」と言いたかったはずだ。 けれど、今その気にはなれない。 「(・・・ツェペリさんには大まかなことしか伝えなかったけど)」 ディオが生きていると知った瞬間、ツェペリさんの言う対処法があることにすぐ筆記で伝えた。 ≪あいつを放っておくくらいなら戦うことを学んだ方がいい。≫ けれどそれは表(・)向きの言葉で、本当はこれ以上あいつに関わりたくなかった。 私が『波紋法』を覚えたかったのは―――あくまでも自分のため(・・・・・)。 二度もディオに平穏を奪われるのはご免だからだ。 「(けれどツェペリさん達だけでは敵わなかった・・・)」 そして彼が死に―――どうしようもない怒りと悲しみを今必死に堪えている。 自分はとんでもない大馬鹿者だ。 私は今・・・本当に心の底から、奴を倒したい! 「ジョースターさん!ディオのやつはさっき一昼夜中にこの町を全滅させるといった!  屍生人は屍生人を生み、その早さはネズミ算だぜ!!」 一体町はどうなっているのか気がかりだ。 月が雲に隠れたと同時に前方からポコの知り合いである男がやって来た。 「アダムスさん!おいらのねえちゃんは!?ま・・・町は!?だっ、だいじょうぶ!?」 「ああ、だいじょうぶだとも。」 「オメー・・・だいじょうぶどころか。」ポコは緊張からか思わず口を開ける。 「カンカンもんよッ。帰ってきたらオメーを牛小屋にとじこめるとよォ!」 あんぐりと口が開けっ放しのポコに他の二人も唖然としていた。 「町はまだ無事のようだ!」 「いそぎやしょう。」 「あっ、ありがとうアダムスさん!」 ・・・町は無事だって? 『ウヒヒヒ!子供のあったけー血がすいてェーぜ!』 伸びた長い舌をつかみ、襲って来るゾンビに目掛けて蹴り飛ばした。 ・・・最近こういう(・・・・)のが聞こえてくるから自分の体が怖ェよ。 「町はずれに屍生人がはびこりつつあるぞ!」 小さく溜息つく中、突然ダイアーと名乗る鋭い眼光の男がこちらに近づく。「新手の屍生人か!」 ・・・でも、聞こえてくるこの呼吸(・・)は・・・!? 「必殺!稲妻空烈刃(サンダースプリットアタック)!!」 両手をふさがれたジョナサンは後方に頭をさらすことなく、逆に負傷覚悟の頭突きをかます。 ・・・流石に彼も焦っているな。 「待て!ジョナサン・ジョースター。わたしは人間だ(・・・・・・・)・・・・・・・・・。」 「!」 「失礼だったが君がツェペリさんから学んだ実力をためさせてもらったのだ。」 「え!?今ツェペリさんと?」 ダイアーさんが言うには、ツェペリさんとは共に苦行を乗り越えた20年来の親友だと言う。 そして助けを求める文面の手紙を送ってよこしたのだとか。 後から現れたもう一人の弟子のストレイツォさんに、ツェペリさんの恩師であるトンペティさん。 彼の師匠だけあって貫禄のある方だ。彼らの習慣に合わせて互いに挨拶した所で「ツェペリはどこかな?」 トンペティ師の言葉にまた空気が重くなる。 「それにしてもそのディオとかいう男・・・・・・圧倒的かな!凄まじい悪の生命力を持つヤツよ。」 確かに・・・今視界に入っている城から、恐らくディオであろう悪気がここにまで届いていた。 *** 廃城に乗り込み、ポコのお姉さんを助けた後、 奥の階段を上がった先には倒すべき敵の後ろ姿があった。 「地獄から戻って来たぞ、ディオ!」 「生きてたのか・・・・・・ジョジョ。」 「と言うことは・・・・・・あの二人の騎士を倒してきたと言うこと・・・・・・らしいな・・・・・・。」 ディオの側に数対のゾンビが出現する。「こいつを殺らせてくれ。」と声が飛ぶ。 しかしディオは「こいつだけはこのディオが殺る!」と下がらせる。 「おれはな、お前をこの手にかけたくなかったのだ。  幼なじみで共に同じ家で育ったお前を亡者にしても面白くも何ともないんでな・・・・・・。  だからあの二騎士に処刑を任せてしまった・・・・・・。」 静かに対峙する中、「最後のつめでおれは甘かった・・・・・・。」ディオは続ける。 「生きているきさまを見て、それは帝王としてのこのディオの精神的弱さと悟ったよ・・・・・・。  今!ためらいもなく貴様を惨殺処刑してくれよう!」 「同じこと!お前を葬るのに罪悪感無し!」 「それはそうとジョジョ・・・あのハデな帽子のヒゲのおっさんはどうしたね?どこにいるんだ?」 更に怒りを煽る挑発をしている。今すぐにでもコイツをぶん殴りたい。 だが、今その怒りを最も抱いているのは彼の方だ。 「ディオ!ぼくの気持ちを聞かせてやる・・・紳士として恥ずべき事だが、正直なところ今の  ジョナサン・ジョースターは・・・恨みをはらすために(・・・・・・・・・)!ディオ(・・・)!貴様を殺すのだ(・・・・・・・)ッ!」 ジョージさん、ツェペリさん、そして黒騎士ブラフォード・・・。 彼らの思いを背負っているなど知る由もないディオは鼻で笑った。 「来おい!ジョジョ!」