新年を迎えたジョースター邸の復興記念に、忘れかけていた笑い声が飛び交っていた。 しばらくこの地に滞在することになったトンペティ師達も同席していた。 祝う気持ちがあるのはもちろんだが、留まる理由は私(・)にある。 最も、ジョナサン達にはまだ話していないのだが―――。 「。」 噂をすれば何とやら、だ。 「君に会わせたい人がいるんだ。」自分のことのように嬉しそうに笑みを浮かべる。 一体誰なんだろう?その人物はどういう人なのか、 ワクワクしながらジョナサンに案内された先に、言葉を失った。 「まあ・・・あなたなのね!」 天使のように微笑み抱きしめて来たのは何を隠そう、私にとって恩人の一人であるあの(・・)女性、もとい ―――エリナ・ペンドルトンである。 まさか・・・この人がジョナサンの言う人だったとは―――。 再会できた喜びよりも先に私は土下座した。 「(ごめんなさい!ごめんなさい・・・・・・エリナさん!)」 突然の行動に戸惑うエリナさんに、これまであったことを筆記で伝えた。 「何を言っているの?」少し怒った口調だが、それでも穢れを知らない両手で私の手を包み込んだ。 「返すことよりも・・・無事生きてくれる方が嬉しいわ!」 ジョナサンといい、エリナさんといい・・・どうして私の周りにいる人達はこんなにも優しいのだろう。 そんな私達に気を遣って、ジョナサンがこっそり部屋から抜け出したのを目にした。 *** あのパーティの際、ジョナサンに前ぶれもなく≪もう、いつの間にか年とっちゃったよ。≫ 思ったことをそのまま伝えると、「どうしてもっと早く言わなかったんだい!」と珍しく慌立てた。 それ以降、パーティの参加者から次々と私に食べ物やら本やら、高価そうな服まで贈ってくれた。 そんなつもりはなかったのに、悪いことしたなあ・・・。皆にもらったプレゼントを眺めながら頬を緩めた。 「どうかしたかい?」 私がにまにましている所を見られてしまったようだ。(恥ずかしい・・・) 自分は相変わらずジョースター家に居座っている。 と言うよりも「ここにいてほしい。」とジョナサンの強い要望でそういう流れになったのだが、 満更でもない自分がいたりする。 「たくさん貰ったみたいだね。」 ≪ありがたすぎて、特にお菓子なんか食べ切れないよ。≫ 山のようになっているそれらはスピードワゴンさんの舎弟にあたる人達からだ。 彼らとはあまり面識がないが、スピードワゴンさんが私について語ったらしく、何故か『姐さん』と呼ぶ。 見る限りあの人達が年上なのに、これっていいのか? 「ごめん・・・あんなこと言っておいてぼくはまだ―――。」 ≪いいんだよ!そんなこと気にしなくて・・・!≫ 何気ない一言だったのに、真剣に受け止めてくれるだけでも嬉しいものだ。 ≪その気持ちだけで十分だよ。≫そう宥める。今だ悔いのある表情だが、ふとこんなことを言い出す。 「・・・寂しいかい?君だけ(・・)が・・・この時代にいて・・・。」 ディオとの戦いからようやく落ち着いた頃、私が未来から来たことを打ち明けたのだ。 彼の口から出たその言葉があの時亡きジョージさんが言った言葉と酷似しているのは言うまでもない。 ≪―――突然すぎて、英語もほとんど理解できなくて・・・孤独だった。≫ 「・・・。」 ≪でもジョナサン達がいるから平気だよ。≫ 笑顔で答えると、「よかった・・・。」とホッとするジョナサン。やっぱり彼の顔を見るとほっこりするなあ。 「本当は不安だったんだ。君を戦いにまで巻き込んでしまって・・・。  がタルカスに重傷を負われた時はもう・・・・・・。」 とても目にあてられない、と嘆く素振りをするジョナサンに―――何も言えない。 「あの時は状況で仕方なかったかもしれないけど・・・・・・もう戦わないって約束してくれないかい?」 「君が傷つく姿はもう見たくない・・・。」急なお願いだが、彼の言うことは最もなことだ。 ぶれない意志を秘めるその瞳は優しい。 私が答える前に、「ダニーと仲良くなって間もない頃だった・・・。」ジョナサンは語り出す。 「邸の後ろ側に森があるだろう?」 うん、覚えてるよ。そこで一緒に歩いたり、星を眺めたりしたもんね。 でも内容からして昔のことみたいだ。 「先に森に入っていったダニーを追って森の奥を歩いたんだ。  そしたら女の子が幹の側で眠っているのを見つけてね・・・。」 「ちょうど君と同じ黒髪だったよ。」しかも顔立ちまで東洋人であるようだ。 「風邪を引いたら良くないと思ってその子を起こしたんだ。でもお互い言葉が通じなくてね。  なんとかぼく名前を伝えることができた時は思わずホッとしちゃった。」 そうだろうなあ、と妙に納得しつつ思わず笑みをこぼす。 「話を聞いてみたら何か探してたみたいで、一緒に森の中を歩いたんだ。」 ≪見つかったの?≫ 「ああ。」 「でも・・・。」すると何故か暗い表情で項垂れる。 「見たこともない・・・狼だと思うんだけど・・・  そいつに追いかけられた女の子とはぐれちゃって・・・・・・。」 ≪―――会ってないの?≫ 「・・・・・・ちゃんと会ったよ。もう10年も経ってしまったけどね。」 「(じゅっ・・・!?)」 そんな長い間会っていなかったなんて・・・・・・でも再会できてよかったね。 すると、何だかいつもと違う雰囲気のジョナサンと目が合う。 何も言わずじっと見てくるだけで首を傾げる。 「・・・・・・・・・ぼくは・・・あの時(・・・)会った頃からずっと―――・・・。」 「(ジョナサン・・・?)」 「・・・ごめん!何だか眠くなってきちゃった。・・・さっきのは気にしないで!」 「(?・・・うん)」 急に話が中途半端で区切られるが、仕方ないと決めて頷いた。 さっき一瞬悲しそうな目をしていたように見えたけど・・・眠気のせいかな?