遠い昔、天の狩人と呼ばれた青年がいた。
猟犬と連れて狩りに行くのが日課だった。
その青年はとても野蛮な性格であったが故、周囲には距離を置かれていた。
そんな彼を気遣った両親は彼の荒々しい心を静めるため、一匹のウサギを贈った。
しかしそんな思いは届かず、青年は邪魔だと言わんばかりに追い払った。
時にはいじめる行為もした。
誰もが逃げ出すだろうと思われていたそのウサギは、
彼の足元を逃げ回りながらも側から離れようとしなかった。
「訳のわからんウサギだ。」
無視を決め込んで、いつものように狩りに出かけたが、事件は起きてしまった。
普段より調子よく獲物をとらえているように見えた猟犬は、
何かにとり憑かれたように血の気の多さを感じた。
その猟犬がなんと、今まで相手にしなかったウサギを襲おうとしたのだ。
「止せ―――!!」
この時、何故体が動いたのか分からなかった。自分が何を言ってるのか分からなかった。
しかし不注意にも視線を凝らさなかった青年は一瞬にしてウサギを踏み潰してしまったのだ。
誰も近づこうとがしなかった青年に唯一、片時も離れなかったのはこのウサギだ。
いい友人になれるはずだったのに・・・何てことをしたのだろう!
「嗚呼、友よ・・・。わたしが愚かだった。」
哀れに思ったそのウサギを灰に変え、星へ還すように撒いた。
それ以来、穏やかな心を持つようになった青年に、多くの友人に恵まれた。
そして夜が来る度、一番に輝くあの星を、ウサギの姿を思い浮かべながら祈りを捧げた。
しかし―――これはほんの始まりにすぎない。
星のように美しく、誇り高き者の光を追い求めるウサギの物語はこれからだ。
ウサギと逃げながら
猟犬と狩りをする