早くも1939年に入り、1月末の頃。
同盟国であるドイツ軍から連絡を取っていたシーザーはこれからローマへ行って来ると言って来た。
その時知ったジョセフとスピードワゴンの健在に笑みがこぼれる。
「ジョースターと暮らしていたそうだが、実際どうなんだ?その男は協力するに値する人間なのか?」
何故ジョースター家に対してこの言い方なのかは、50年前のことに関わっているからだ。
祖父が無残な死を遂げたのは力不足であったジョナサン―――
ジョセフの祖父が原因であると彼は冷たく言い放つ。すぐに抗議できない自分が憎い・・・。
≪正直に言うと波紋の力は弱い。けれどそれをカバーする機転がある。≫
「・・・まあ、実際に確かめなきゃ物言い様がないしな。」
何だか行く先不安な予感がする・・・。
ジョナサンとツェペリさんのように共闘できなければ―――『柱の男』と対峙すら難しいだろう。
***
今日、ジョセフがシーザーと共に波紋の修業をするためにこちらへやって来るそうだ。
ジョセフが出て行った後から何の連絡もなしに修業を積んだからなあ・・・どんな反応するんだろ。
しばらくすると見慣れた人物―――シーザーとジョセフが現れた。
久しぶりにジョセフの顔を見るが、
今彼の体内に毒入りのリングが埋め込まれていると聞いたので気が気でない。
(本当によく生きてられたなって思うよ)
≪おかえりなさい、リサリサ先生。≫彼らの迎えに出ると、
ジョセフは私の顔を見た途端、金魚のようにパクパクと口を震わせた。
「オッ、オメー!ほっ・・・本当にあの女のとこで修業してたのかよ!?」
≪―――私のこと言ったの?シーザー。≫
「ああ。あまりにもしつこく聞いて来たんでな。
ここにいる間だけのことしか伝えてないが・・・問題あったか?」
≪いや、大丈夫だよ。≫
「おれを無視して勝手に二人だけで会話進めるなコラ!」
無視したつもりないんだけど―――というよりまずジョセフの不機嫌が気になる。
いくら私が修業をしていたのを伝えていなかっただけでそんなに怒ることはないと思うのだが。
≪それはそうとスピードワゴンは?エリナさんも元気?≫
「なっ・・・・・・何でじいさんのこと―――ハッ!」
≪エリナさんのこと・・・責めないでね。
アンタがメキシコに行ってからずっと悲しい顔していたんだから。≫
そう伝えると「うっ・・・。」居心地の悪い表情に歪める。だがそれで退くような男ではない。
「け、けどよ!おまえまで修業するこたァねえだろ!?
どういう紹介でリサリサっていう女のとこまで辿り着いたか知らねえが何で―――。」
≪アンタと同じ理由だよ。ジョセフ・ジョースター。≫
とりあえず、私の現時点の目的は柱の男やらを倒し、エリナさん達のところへ帰るのが一番だ。
(元の時代に戻れるまでは・・・)
でも今のジョセフからすれば自分のためにしかここに用はないのだろう。
50年前(私からすれば1年前)の私のように―――。
「お喋りはそこまでよ。あなた達にはここに入ってもらうわ。」
「なっ、『地獄昇柱』だと・・・!?」
コレのおかげで日々の特訓に耐えられたから成果は大きい。
けれどまだ一度も挑戦したことがないシーザーはかなり焦っていた。
「この試練をのりこえなくてはこの島にとどまる資格なし。」
リサリサ先生が柱の門を開くと、二人を足払いして問答無用に中へ放り込んだ。
「素手で高さ24mの頂上まで登ってきなさい・・・。出口はそこしかない・・・・・・・・・・・・。
登れぬ場合は死ぬまで外に出られない。」
「、手本を見せてやりなさい。」と視線をもらい、すぐさま靴を脱いで後から中へ飛び込んだ。
油の中に突っ込む前に、両足に波紋を放出させる。
先生が先程見せた動作で水(油)しぶきを上げず着地した。
二人して凝視するが、気にせず柱を登り始める。そこで我に返ったシーザーが後に続いていく。
「ざけんじゃあねえ―――ッ!ここへ来たばかりのォ―――ッオレの波紋でェ―――ッ。
このくそったれの『柱』に、ひっつく力はまだねーのは知ってるだろ!くそォ!あの女〜〜〜!!」
頂上以外閉ざされた空間なので、ジョセフの怒声がより大きく響く。
イジメのアイディアとか何とかと聞こえたので下を見ると、
自分の服を引き裂いて綱状にしたそれでよじ登ろうとしていた。
けれどその綱が発火したのでジョセフは再び油の中へ落下する。ちなみに燃やしたのは私だ。
ちょうど頂上に着いたので、そこから『種子弾丸』を綱に向けて撃ったのだ。
「何しやがるッ!」
「、よく止めました。」
タイミングが良い所にリサリサ先生がやって来るなり、ジョセフに向かってこう言い放つ。
「波紋以外の方法でのぼることは『柱』へ対しての冒とく!
この『地獄昇柱』は波紋だけを好み、波紋以外ははね返すッ!それを忘れてはならぬ!!」
「ま・・・待ってくれ!ま、まさか・・・・・・お前までおれを見捨てるつもりじゃあないよなあ?」
真下からそんな声がかかる声が、私は一切振り返らずその場を後にした。
これでジョセフに再びシカトされるのは確実。だが冷たい態度を装うのは彼のためである。
普段通りにジョセフを甘やかしては、いつまで経っても自身の力で開花させることはできない。
本当にごめん、ジョセフ・・・。
けれど完璧なまでに『波紋法』を自分のものにしなければ戦えない。
・・・だから一人前になるまでジョセフ、私は心を鬼にする―――。