最初は兄妹(もしくは姉弟)、それか友人として好きなんだと軽く思っていた。
けれど私を見つめるそのグリーンは、そういう風には見れなかった。
それが異性として好き―――と理解するのに数秒かかった。
えっ?ちょ、おまっ・・・ええッ―――!!?
好きな人ができてもその思いが続かなかったり、異性から易々と声をかけられるなんて、
この時代に来るまで一度もない。
そんな残念な私に恋愛感情を持っていたなんて・・・それがこのジョセフだったなんて―――
一体誰が想像できよう!?
冗談だろ冗談だろ!?何でこんなに顔熱いの!?
まさに月までブッ飛ぶ衝撃。混乱する私をよそにジョセフが動き、思わず硬直させた。
「信じてねー顔してるから一から順に言ってやるぜ。
最初はちょっとうるさい妹みてーに家族付き合いして来たけどよォ・・・。
シーザーがおまえのこと知ってたり・・・おれが知らない内に波紋の修業してたとかよォ〜〜〜
マジで頭に来てンだぜ?」
何でそれを今更・・・!?
「が戦いに出るのは嫌だっつーのにおまえは反論するし・・・
シーザーはシーザーでおまえにくっ付くしよォ・・・。」
何でそこにシーザーが入って来るんですか!?何でそこで過去を掘り下げて来るの!?
あと息が大分荒いんですが・・・!!!
「もう『兄妹』とかそういう形でいンのは終わりにしてェんだよ!
おまえと結婚してッ!!本当の家族になるッ!!いいだろッ!?」
告白されるだけでも衝撃なのに、何で更に爆弾投下するんだ!
こっ恥ずかしいセリフを何回も聞いたからか、段々いつものようにツッコめる。
そんな時、あろうことかジョセフが抱きついて来たのだ。筋肉のせいで余計苦しい。
そんな事とは裏腹に、私の頭を撫でるしぐさはとても優しい。
「なあ、答えてくれよ・・・。おれのこと・・・・・・嫌いか?」
私の前で弱々しい表情を見せるジョセフ。
最初は困惑して訳がわからなかったが、こんな真剣に想ってくれるとなるとやはり嬉しくなる。
私もジョセフが好きだ。でも・・・・・・。
自分が思っていることは、ジョセフの好意には一生応えられない。
私はジョセフの胸を押して彼から離れた。
名残惜しむ表情が見えたが、気にせずメモ帳を開く。
≪―――ごめんなさい。ジョセフを・・・異性として見られない・・・。≫
「えっ・・・。」
≪仮に付き合っても・・・本気で結婚を考えているのなら・・・・・・・・・
あなたにふさわしい女にはなれない。≫
「っ・・・そんなことねえよ!」
≪ジョセフに対する兄して・・・友人としての気持ちは変わらない・・・。
だから私よりもずっといい人を―――≫
「それ以上言うんじゃねえ―――ッ!!おれは、おれは・・・!!
おまえじゃなきゃ嫌だッ!!!」
っ、苦しいよ、ジョセフ・・・・・・。乱暴だけどその言葉・・・嬉しすぎるよ。
普段じゃ絶対言葉にしないけど―――アンタかっこいいんだから絶対いい女性見つかるよ。
涙を流す姿に心が動揺したけど・・・ダメだ。自分がキッパリ断らなきゃ彼のためにならない。
もう、いつもの関係には戻れないんだろうけど―――・・・。
「(さっきより息が荒いな。興奮してるせい・・・・・・?)」
そのせいか背中に巻きついている腕や、私の顔を圧迫させようとしている胸も何だか熱い・・・。
えっ・・・・・・・・・熱い・・・?
改めてジョセフの目を見ると、虚ろになっている。軽く手を振ってみても反応がない。
次の瞬間、腕の力がなくなった同時にジョセフは後方へ倒れ込んだ。
一体何なんだこれは―――ッ!!
まさかの高熱を発現させたありがた迷惑に、何度目かとなる心の叫びを上げた。
***
ジョセフの腕に打った鎮痛剤が発熱を起こしたらしい。
命に関わるようなことではなかったが、私は今ある疑問を抱いている。
例の告白がジョセフ自身ではなく、熱によって作り出されたものなのか―――。すごく複雑だ。
「うっ・・・。」
≪―――大丈夫?ジョセフ。≫
「・・・おれ、いつの間に寝てた?」
高熱のせいで前後の記憶が飛んでいるようだ。・・・となると昨日のことも―――
「昨日は・・・ごめんな。ガキみてえに泣きついてよ・・・。」
覚えてました。
何だよ、バッチリ記憶してるじゃないか。
「そっ・・・それでよ!あのォ・・・・・・またいつも通り・・・ってだめかね?」
てへっとハートマーク付きで苦笑を浮かべるジョセフに私は黙々と返事を書く。
≪ふざけるな、このタコ。≫
「え”っ・・・。」
思った通りのリアクションに、思わずニカリと笑った。
≪―――なんてね。これからもヨロシク。≫
そう見せると、ブワッと涙を流して
「よがっだ―――!!本気で嫌われたと思っだア―――ッ!!」と私に抱きついた。
(だから首がしまってるって・・・!!)
「(嗚呼、でも・・・いつものジョセフでよかったあ・・・)」
ホッとしている半分、罪悪感的なものが少し入り混じっているが、
ジョセフに新しい想い人ができたら、きっと消えるだろう・・・。
―――それがまさかのスージーQで、私の貴重な癒しを奪われた気持ちが上回って、
ジョセフに怒りを覚えたのは言うまでもない。