タイムスリップ(・・・・・・・)してほぼ2年。 何も知らない土地で突然『声』を失い、いろんな意味で絶望の淵に立たされた。 そんな私を救ってくれたのはジョナサンを始めとするジョースターの人間と、その友人達。 彼らと過ごした影響か、声が出なくても苦ではないと思うようになった。 私にとって彼らは特別な存在―――。 カーズとの戦いでは自分の予想をはるかに超える死闘の連続に、とにかく生きようと必死だった。 その時「将来漫画家になりたいから。」という理由すらなかった。 (当時からすれば私の夢なんてどうでもいい事だが) そんな生と死の境を往来したからか、今では命を懸けてでもジョースター達を守る――― そんな使命感に駆られていた。 兎死すれば狐これを悲しむ 私の耳に入って来るのは電子音に点滴の音。そして微かな薬品の臭いがつんと来る。 眠りから覚めたばかりなのだが、またもやデジャヴを感じた私には嫌な予感が・・・それしかしない。 誰かがこちらに近づいて来るのを悟った私は一つしかない扉に視線を向けた。 入って来たのはお医者さんでも看護婦さんでもなく、全く知らない美人さんでした。 「よかったあー!目が覚めたのね!」 「病院内ではお静かに!」 たまたま通りかかった看護婦さんに注意されたその女性は苦笑いしながら頭を下げた。 その光景にぽかんと呆気に取られていると、女性はにっこりと私に微笑んだ。 「・・・ちゃんね?具合はどう?」 !?・・・何で私の名前を・・・!? 「あっ、ごめんなさいね。あなたが持ってた時計にそう刻まれてあったから・・・。」 そう言われてハッと気付いた時には、いつも胸元にある二つの懐中時計がなかった。 そんな私を察知した女性は「時計ならあたしが預かってるわ。」とジョースターの家紋がある懐中時計を 手渡された。けど、もう一つない―――。 「アラ、どうしたの?もしかしてあなたの時計じゃなかったの?」 違う、とすぐに顔を横に振った。何か書くものはないか周りを見渡すと、ちょうどペンとメモ帳を見つけた。 ≪あの・・・もう一つありませんでしたか?赤い石がはめられている懐中時計を―――。≫ 「・・・ごめんなさい。あなたが今持っている物しかなかったわ。」 そう言って頭を下げて来る女性に私は慌てて制止した。 無くすのはあってはならないのだけれど、仕方ない。ここが病室であることを思い出した私は、 何があったのか聞き出した。 「あーそうそう!昨晩うちの池から何か落ちた音がしたから行ってみたらね、  あなたが本当に池の中にいたのよ!もうビックリしたわ!  その時うちの息子が先に見つけて引き上げてくれたから良かったけど、意識がなかったから・・・。」 「でもこうして(・・・・)いる訳だからホッとしたわ。」と胸に手を当てて言う女性に、 「この人本当は聖女じゃないのか?」と思うくらい感涙した。(その息子さんにも是非お礼が言いたい!) 「大したケガはないみたいだし、退院しても大丈夫そうね。」 ≪本当にご迷惑をおかけしました・・・。≫ 「そんな謝ることはないわよ!ほら、日本ではよく言うでしょ?"助け合うのはお互い様"って!」 ・・・残念なことに、しょっちゅう聞くことはないが本当によくできた人だと思う。 よりによって人様の家(しかも池!!)でまた病院に運ばせてしまった・・・。 それを嫌と感じないなんて本当にいい人だ! ≪あの、話を変えるようで悪いんですが、どこの病院ですか?≫ お礼したい気持ちでいっぱいだけど、まず場所を把握しなくては。 「ここは東京都内の○○病院よ。ちゃんの家はここから近いかしら?」 ・・・・・・・・・・・・・・・東京だあッ!!? *** まず日本語で喋ってた時点で気づけっていう事実。