まぶたの裏から光が差し込み、その明るさに顔を歪めながらも目を開けた。 すると今度は全く知らない大人の面子が揃っていた。 「シーザーさん!目を覚ましました!」 「―――!無事でよかった・・・!」 涙ぐむシーザーに、私は訳が分からないでいた。 何でも、自分はほぼ一日中寝込んでいたらしい。 これを異常だと思い、急遽SPW財団の医師達を呼び寄せたと言う。 けれど、ずっと寝込んでいたにも関わらず、むしろ今の私は快調だ。 それよりも―――・・・。 ≪皆は?足音どころか気配すら感じない。≫ 「・・・JOJO達は―――」 ≪ホリィさんはどうしたの(・・・・・・・・・・・)?≫ 「おい!まだ起きては―――ッ!」 ホリィさんの部屋から『無数の呼吸音』と、 彼女のものだと思われる『呼吸』がひどく荒く聞こえて来る。 嫌な予感を胸の中にしまい込みつつ、障子を開けた。 財団の医師達と、ひどい汗をかくホリィさんが横になっていた。 「・・・彼女は君よりも症状が悪い・・・。だが彼らがいれば心配することは―――」 ≪何を隠してるの?≫ 真顔で訊ねる私を見て、シーザーがここで初めて言葉を止めた。 ≪私、本当は知っていたんだ。シーザーが来てから皆よそよそしい態度で・・・。  あなたもジョセフも―――本当のこと(・・・・・)を言っていない。≫ 「・・・・・・。」 ≪お願いだよシーザー。私だけ隠し通すその訳を―――ホリィさんの症状を教えて。≫ 重い静寂の中、視線を下に落とすシーザーは口を閉ざす。 その背景で着々と医師達がホリィさんの容態を確認する中、それとは全く違う別(・)の『音』を感知した。 ≪―――貴方は何をしているんですか?≫ その人(・・・)に向けてメモ帳を見せる。その文字にシーザーが怪訝な表情でその人物を見た。 「ちょっと待て。君・・・・・・財団の人間か(・・・・・・)?」 その言葉に周りにいた医師達も、動きを止めて視線を変えた。 一斉に注目の的になったその『男』は、徐々に不敵な笑みを浮かべて片手をこちらに向けた。 その瞬間―――気づけば私は再び池の中へダイブしていた。 池の中が浅くて助かった。 不意打ちを食らったおかげで鼻に水が入った。(地味に痛い) 起き上がると家の中にいるシーザーが『男』に向かって得意の構えを取りながら警戒していた。 「貴様何者だッ!」 「シーザー・A・ツェペリ・・・。『スタンド使い』ではない人間に用はない。  DIO様の命のもと(・・・・・・・・・)、!おまえを連れてゆく(・・・・・・・・・)!」 ・・・・・・・・・何・・・だって・・・・・・? ディオ(・・・)・・・・・・だと―――!? 「っ・・・余計なことを・・・!!」 「貴様に用はないと言ったはずだぞ!」 「ぐあっ・・・!?」 「(シーザー!!―――ぐえっ)」 こちらに目掛けて飛んで来るシーザーを受け取るつもりが、 速さと重みで思いっきりぶつかった私達は、池の水面に倒れた。 「す、すまない・・・。」 「(大丈夫・・・)」 「余計なことはするな。できるだけその娘だけは生かして連れて来いとの命令なのだ。」 アンタの都合なんか知らねーよ!(いや、ツッコんでる場合じゃないな・・・) 「しかし・・・どうして奴が財団の人間じゃないと分かった?」 ≪そこまで考えてなかったよ。それより私の質問に答える方が先だ。≫ 「・・・ああ、わかったよ。」 ようやく観念したシーザーが順序を追って話し出した。 スタンドのこと、ホリィさんのこと・・・承太郎が言っていた『悪霊』は『スタンド』らしい。 だが一番驚いたのは、やはりディオ・ブランドーが復活したことだった。 奴はまだ生きている――― そして、何よりもジョナサンの肉体を奪ってのうのうと生き延びていることが許せなかった。 「本当にすまなかった・・・。その事を打ち明ければ、また君は―――」 ≪言わなくていいよ。シーザーもジョセフも、皆悪くない・・・。≫ そう、貴方達が責められることはない。 責められるべき相手は―――『部下』と称するそいつを送ったディオ! 「わたしについてくれればいい・・・。そうすればツェペリもジョースターの娘にも手を出さないと約束しよう。」 「!聞く耳持つな!」 普通ならそう言うだろう。だけど、ここはあえて彼の言うことに従おう。 ・・・と言ってもほんの少しの間だけど。 「(蔓の波紋疾走(ヴァイン・オーバードライブ)ッ!!)」 「うげぇ―――ッ!!」 完全に油断しきっていた『男』に向かって波紋を流した。 もちろん、外の方に向けて。額から何か(・・)ちょろっと出て来たような・・・。 「(今度はお前が池に落っこちな)」 一瞬だけあいつの背後から霊体のようなものが出て来たけど、あれが『スタンド』かな。