まさか吹き飛ばされた先が香港で、 こんなにも早くジョセフ達と再会できるとは思いもしなかった。 日本にいるはずの私が何故ここにいるのか、彼も当然驚きを隠せないでいる。 不時着?するまで何があったのか全て話した。 「そうか・・・・・・おまえにもスタンドが・・・。」 ≪ちなみに聞こえる範囲内まで『音』が拾えるし、『再生』できる。≫ 「『そうか・・・・・・おまえにもスタンドが・・・』」 ジョセフの言葉をそのままリピートすれば、本人はおおっと目を見開いた。 静かに見ていたアヴドゥルさんが「ジョースターさん。」と忠告するように言えば、 我に返って咳払いした。 「じゃ、じゃが、いくらそのスタンド使いを倒せたといえどまぐれ(・・・)にすぎん!  おまえを日本に送りかえす!」 「『何故?』」 そう頑なに私が戦陣取るのを拒む理由を求めた。 大体見当がつくが、彼の口から直接聞きたい。 「・・・48年前にいなくなる前、誰と一緒にいた?」 ≪スピードワゴン。≫ 「おまえが消えた後―――ひどい落ち込み様だった。  スピードワゴンのじいさんが亡くなる直前、頼まれたんじゃ。」 「彼女を二度と―――戦いに巻き込まないよう・・・頼むぞ・・・。」 ジョナサンのものと酷似したスピードワゴンの言葉に、心が奮えた。 「じいさんの願い以前にわしも同意見じゃ。もうおまえさんの心を傷つかせたくない。」 「―――『わかった』」 「えっ?」 意外にもあっさりと承諾を得たジョセフは間の抜けた声を出した。 前の私だったら「私が『女』だから連れていかないのかッ!!」と怒りを露わにしていたに違いない。 それにこれ以上言ってもジョセフは首を縦に振らないだろう。 本人は素直に応じた私に疑念を抱いたままチャーターした船への案内を始めた。 香港からシンガポールに着いた後、 私はそこで合流するであろうSPW財団の人達と共に日本へ帰されるようだ。 「(ごめん、ジョセフ、スピードワゴン、そしてジョナサン・・・・・・)」 危険であることは承知している・・・。 けれど、貴方達が旅する理由が、私が戦う『理由』でもあるということを、 これから嫌がられても伝えなくてはならない。 *** 船に乗ったが何もすることがない私は中を探索しつつ、もう一度海を眺めた。 (ちなみに機能を果たしたパジャマの上にジョセフの上着を借りて羽織っています、念の為) 吸い寄せられるかのように来たカモメに、ポケットに入っていたお菓子をあげた。 (もしかしてお菓子の匂いを・・・?まさか、ね) 「・・・ゴクリ。」 「(ん?)」 「っ・・・ゴッ、ゴホゴホ!いやー海がキレイだなー。」 明らかな棒読みで視線を外したのは確かポルナレフって言ってたな・・・。 不覚とはいえ、痛い思いさせてしまって申し訳ない。 どういうタイミングで謝ろうか考えていると、向こうから知らない(・・・・)『足音』が この船のクルーの『足音』と共にやって来る。 私達以外の者は乗せないとジョセフが言ってたはずだけど、どうやら密航者のようだ。 あ、飛び込んだぞ。 「ま・・・まずいっスよ。この辺はサメが集まっている海域なんだ。」 そう言ってるそばからその子の真下にサメが潜んでいる。 しかし承太郎のスタンド(スタープラチナと言うらしい)で一気に吹き飛ばされたサメは綺麗な円を描く。 が――― 「『ジョセフ・・・!』『海面下から何かが襲って来るッ!』」 「じょ、承太郎ッ!下だ!早くッ!早く船まで泳げッ。」 「あの距離ならぼくにまかせろッ。『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』っ!!」 花京院のスタンドが承太郎を引き上げ、何とか窮地を脱することができた。 どう考えても今海底にいたのは『スタンド』だ。女の子であった密航者に当然疑いの目が向く。 でもこの(・・)『音』を聞いて、とてもウソをついているようには見えないんだよなあ・・・。 「この女の子かね、密航者というのは・・・。」 船長(キャプテン)とジョセフに呼ばれた男はその子を容赦なく拘束した。 更にちゃっかりタバコに火をつけていた承太郎が口に加えていたものを取り上げると、 帽子の金具に押し付けた。物言いはさせない行為に周囲は沈黙する。 「待ちな。口でいうだけですなおに消すんだよ・・・。大物ぶってカッコつけんじゃあねえ、このタコ!」 「おい承太郎!船長に対して無礼はやめろッ。おまえが悪い!」 「フン!承知の上の無礼だぜ。こいつは船長じゃあねえ。今わかった!スタンド使いはこいつだ。」 意外な言葉に誰もが声を上げた。「いい加減な推測は惑わすだけだぞ!」と声が飛ぶ中、 船長は困惑した表情と素振りを見せる。だが承太郎の言動がきっかけで、私も確信を得た。 ≪間違いないよ。その男は偽者だ。≫ 「まで何を―――!」 ≪私のスタンドはどうやら距離の近さで『呼吸音』や『心臓音』まで聞こえるらしいんだ。  さっき承太郎が"スタンド使いはこいつだ"と言った瞬間、ものすごく大きな『音』がしたよ。≫ 「しっ・・・心臓音だと?バカなことを言わないでくれないか―――ハッ!」 「ん?おい、なんじゃそれは?」 私が取り出したガムテープでぐるぐる巻きにされている物体に、船長はかなり焦った顔に変貌する。 一瞬口角が上がりそうになるのを抑えて、ジョセフの問いに応じた。 ≪さっき探検していたら見つけたんだ。バカに重くて船に積んだものじゃないなーと思って。≫ 「貴様ッ!いつの間に爆薬を―――アッ!」 意外にもすんなり認めたな。でもこれで奴に逃げ場はなくなったが、側に女の子がいる。 人質として捕まえられるより早く『種子弾丸』を船長に撃ち込んだ。 その後に承太郎の『スタープラチナ』の一撃が決まった。 (それによって全部彼にいい所を持っていかれたが良しとしよう) 「(しかしバカな奴だな・・・こっちはニセモノなのに)」 本物の爆薬は後でちゃんと処分してもらおう。 けれどこんなにも順調に『スタンド使い』を発覚できるなんて・・・『ピーター』って便利!