人口600万の首都カラチへ到着するまで、私は周囲に注意を払った。
ホル・ホースが早く殺した方がいいと忠告して来たが、
ディオが敵味方関係なく切り離すことは既に承知している。
だから尚更、油断できない。
「おっ。ドネル・ケバブがあるぞ。ハラごしらえでもするか。
すまない、6人分くれ。」
このお婆さんの分も入ってるとは優しいなー。
なんて思ってると何かが近づく『音』を察知した。
「ハエかな?」と思いつつ、スタンドでそれを掴んだ。
「ふぐあッ!」
ケバブ商人の口から奇妙な―――否、悲痛な声が漏れる。
『ピーター』が掴んだそれをスタンド越しに確認すると、かなり小さい。
どうやらスタンドらしい。それと同時にお婆さんが目を覚ます。
「わ・・・わしは!わしは!何もしゃべっておらぬぞッ!
な・・・なぜ、おまえがわしの前にくる。
このエンヤが、DIO様のスタンドの秘密をしゃべるとでも
思っていたのかッ!」
「え!?」
やっぱりその刺客が奴か・・・。早めにつんでおいてよかった。
しかしホッとしているのも束の間、後ろから誰かがやって来るのを悟り、
すぐ皆に知らせた。だが相手の方が一番行動が素早かった。
「やはり金だけで雇われるスタンド使いでは話にならんな・・・。」
目の前にいるのがスタンドだと分かった時には、
既に視界が別の世界へと変わっていた。
***
ここ、どこ・・・?
カラチではなく、砂漠だけが続く殺風景な場所に、
私と『鋼入りのダン』はいた。
未だにピーターがこいつのスタンドを持っていた為、
一緒にここへ行き着いたらしい。
・・・となるとさっきのスタンドは『触れた相手を別の場所へ移動させる』能力といった所か。<
b>あれ?私の時だけ移動系のスタンド使いに出くわしてる?
私から距離を取るダンの方へ振り返ると、「ヒッ!」と情けない声を漏らす。
「『私はジョセフ達のところへ向かう』『その為に地図か何かが必要なんだが・・・』」
「はっ!?ち、地図なんて何も・・・。」
「『それは悪かった。まあ頑張れ』」
「わーっ!待って、いや、お待ち下さい様!
砂漠を抜ければ町に入れます!そこで地図を買います!
どうか見捨てないでェ〜〜〜!」
あのスタンド使いとどうなっているか気になるが、彼らのことだ。
私がいなくなっても目的地へ向かってるはずだ。私も進むしかない。
(よりによってコイツと同行する、というのは癇に障るが)
ようやく砂の地を抜けて、ダンに地図を買わせて現在地を確認した。
ジョセフ達はカラチにいたと考えて、次に行く所はアブダブだろうか?
イランからイラクへは政情不安というのもあるから、
そのルートは避けるはず。
ここからそこまで着くと、次はヤプリーン村かな?
無事合流できればいいけど・・・。
再び砂漠地帯へ突入する訳だが、
何だかダンの表情が少し余裕を取り戻したよう・・・な・・・・・・。
「(何ィ・・・!?)」
さっきから汗が止まらない。異常に暑い!気温が上昇しているんだ!
「う、嘘だろ・・・!?何でおれまで・・・!」
この動揺ぶり、DIOの刺客による攻撃らしいな。
高温に耐えきれず、ダンは倒れ込んだ。(男のくせに体力ないってオイ・・・)
精神が熱でやられる前に岩場に引っ込んで、『ピーター』を発現させた。
周りに人影はない。
だが目の前にある岩とまったく同じの対称の形をした岩がある。
しかも影も『逆』についている・・・・・・ということは―――
「(種子弾丸ッ!)」
そこに向かって何発か撃つと、「ドギャス!」と響く。
背景に穴が開いたというシュールな画が出来あがった。
タネがバレてみればアホらしい敵だったな。
「あ、あの〜・・・。」
「『何だ?』」
「私めも・・・連れてって貰いませんかねえ?え・・・えへへ。」
「『断る』」
冷えた砂漠の夜を過ごした私は後日、
お礼という名の『蹴りの連打』をプレゼントしてやった。
もちろん、返答はない。