ヤプリーン村に着いた時には、 既にジョセフ達はセスナ機を買って飛び立っていた。 しかも熱を出した赤ちゃんを連れてのことだ。 私達と関わるだけでも十分危険だというのに・・・・・・これは急がなくては。 「(これは・・・・・・SOS信号?)」 まさかとは思うが、墜落したのか? そういえば此間、エジプトまで向かうはずの飛行機が、 スタンド使いのせいで墜落したって聞いたな。 ・・・・・・・・・。 「(うん、急ごう)」 ピーターの察知能力があるおかげで何とか再会を果たすことができたが、 何故か花京院だけ浮かない表情でいる。 ≪皆無事でよかった。あのお婆さんとスタンド使いは?≫ 「そのスタンド使いがバアさんを殺しおった・・・。  口封じとして、な。ちゃんとそいつを再起不能にしといたがな。」 ≪―――それで、墜落したのもスタンド使いの仕業?≫ 「いいや。これはみんな花京院が原因だ!」 舌打ち混じりに叫ぶポルナレフに事情を聞き終え、 チラリと例の赤ん坊を視界に捉えた。 一見、何も変わったことはないみたいだけど・・・。 ≪大丈夫?花京院。≫ 「え、ええ・・・さんもご無事で・・・・・・。」 皆はかなりまいってるんじゃないかと心配しているが、 寧ろ、何か(・・)を気にしている様だった。 ≪何があったの?私でよければ聞くよ?≫ 「・・・さん・・・実は・・・・・・。」 突然、袖を捲って腕を見せて来た。 視界に映ったその腕には生々しい傷跡があった。 『BABY』『STAND』――― いつ付けたのかすら分からないというキズの文字を見て、 花京院は「あの赤ん坊はスタンド使いじゃないか。」と 疑心暗鬼になっていた。 「やはりぼくは相当まいっているようだ・・・。赤ん坊を疑うなんて・・・。」 ≪―――花京院。私達はここに着くまでオランウータンのような  スタンド使いにも遭遇している。仮に赤ん坊がスタンド使いであることは  決しておかしくないと思う。≫ ホラー映画にどっぷり浸かっていたから、なんて流石に言えない。 渇いた笑みで「ありがとう・・・。」と遠慮気味に答える花京院を見て、 思わず頭を撫でた。 かなり驚いた様子を見てすぐ謝ろうとしたが、 いきなり立ち上がって赤ん坊を凝視していた。 「サソリを殺した・・・・・・こっ、この赤んぼうやはり(・・・)ッ!」 その言葉を聞いて思わず、私もその赤ん坊を見た。 何もなかったような顔に戻っているが、 大きく鼓動して心臓音を聞き逃さなかった。 「ジョ―スターさん、ポルナレフッ。今のを見ましたかッ!  やはり(・・・)この赤んぼう普通じゃ―――ッ!」 「(ごめん、花京院・・・)」 全て言い切る前に彼の腹部に拳を放った。 呻く花京院をよそに≪喉を詰まらせたみたいだから気にしないで。≫と嘘をついた。 そんなことを知らないジョセフ達は不思議とも思わず、すぐに食事を再開した。 皆から少し離れた場所で、ようやく落ち着いて来た花京院の顔を窺う。 一応手加減したんだけど、やりすぎたかな・・・? 「はあ、はあ・・・っ・・・さん、何故ッ・・・!」 ≪抑えるんだ花京院。今ここで下手に出たら益々皆に誤解されるよ。≫ 「だっ・・・だが・・・!」 ≪気持ちはわかる。だけどこれ以上悪化させて全員リタイヤしたらどうするの?≫ 私が目を鋭く細めると、花京院は何も言わなくなっ 皆が寝静まる頃を、敵は確実に狙っている。 いざという時の為、スタンドを出したまま花京院は寝袋に入り、 私は『監視』という形で、朝まで起きることにした。 (徹夜経験のある私には持って来いの話だ) それもあってか、赤ん坊は何もせず、ただ籠の中でじっと動かないでいた。 そして夜が明けて真っ先に花京院の元へ行くと、やけに爽やかな笑顔で迎えられた。 (おいおい、ちょっと怖いぞ) ≪上手くいったみたいだね≫ 「ああ。君のおかげだよ。」 ≪―――私、何もしてないよ?≫そう書いたが、花京院は首を横に振った。 「・・・あの時ぼくは冷静じゃなかった・・・。  さんに止めてくれなかったら・・・・・・最悪の結果になっていたかもしれない・・・。  本当にありがとう。」 そんなお礼を言われるようなことしていないんだけど、いいのかな・・・。 でも、役に立てられたのなら私も嬉しい。・・・そして非常に眠い。 「寝ておいでよ。承太郎達にはぼくが言っておくから。」 苦笑いを浮かびながら寝袋を指す花京院の言葉に甘えて、中に入った。 この調子なら真昼まで眠りそうなんだけど本当に大丈夫か? 「おぶってあげるから思う存分寝ていいよ。」 「『無理に決まってんだろ』」 こんな時こそ目覚まし時計がいるというのに・・・ 残念ながら今回、持ち合わせていない。 花京院がちゃんと起こしてくれることを願いつつ、 太陽の光を浴びながら目を閉じた。 あ・・・だめだ。絶対熟睡しちゃうぞコレ。 「さん、寝ましたか?」 ううん、これからです。ちゃんと起こしてくれよ・・・? 「・・・おやすみ、。」 うん、おやすみ・・・・・・・・・・・・・・・ん?