私が目を覚ました時には、病室のベッドで横になっていた。
胸元だけ包帯が巻かれてあるのを見て、私は全てを悟った。
「(そうか・・・。私、気を失って・・・)」
「おっ!、気がついたかー!」
ポルナレフの声に続き、ジョセフ達が病室に入って来た。
首を切られたアヴドゥルさんにも包帯が巻かれているが、大事に至らなくてよかった。
そう安堵した途端、ジョセフに頬を引っ叩かれた。
「バカモンッ!無茶はするなとあれ程言っただろうッ!」
かなり間近で叫ばれ、鼓膜が破けるんじゃないかと思うくらい響いた。
結構脳まで揺れて一時的に放心していたが、我に返ってゆっくり頭を下げた。
「『ごめんなさい』」
「いいや、許せん!今度ばかりは見逃せんッ!この機に日本へ帰ってもらう!」
そんな・・・!いくら何でもそれだけは・・・!
「もういいじゃねえかジョ―スターさん。今こうして無事な訳だし・・・・・・。」
「簡単に言うなッ!もし手遅れだったら本当に―――」
と、言いかけた所で、ジョセフは口を閉じた。
アヴドゥルさんの占いのことだろう。事情を聞かされていない承太郎達は、ただ首を傾げるしかない。
「帰すかどうかはさておき・・・一人にさせるのは危険です。
敵がいつ来るか・・・。」
「よし、SPW財団に連絡を―――」
その後は聞かなくても以下の通りだ。
私は全治退院するまで、この病院で居残りだ。
皆が病院を出ている頃、何故か承太郎の『足音』が近づいていた。忘れ物でもしたのか?
「『どうしたの?』」
「『忘れ物?』」と訊いたが、承太郎は首を横に振った。
何か言いたそうに、私が手にしているジョージさんから貰った懐中時計を見ていた。
「おまえのか?」
「『貰ったんだ』『ジョージT世』『君のご先祖の父親から・・・』」
「・・・先祖の?」
「『ジョナサン・ジョ―スターだ』」
彼の名を言う(スタンド越しではあるが)のはいつぶりだろう。
不意にじーんと瞳の奥が熱くなった。・・・ハッ!いかんいかん、人前だというのに・・・。
「・・・・・・もしかして・・・・・・。」
「承太郎!何をしとる!早く行くぞ!」
ジョセフがやって来て、承太郎は「やれやれだぜ。」と口にして病室を後にした。
(ジョセフの小言を残して)
「(承太郎は何を言おうとしていたのだろう・・・)」
運ばれて来たご飯を食べ、ウトウトしてそのまま瞼を閉じた。
***
久々に、夢を見ていた。
二日か三日も連日に見ていた『悪夢』ではなかった。
月だけがぽつんと浮かび上がっている夜空に、広い砂漠。私以外に誰もいなかった。
風が吹き始め、足元の砂が舞い上がった。
「(そうだ・・・ンドゥール戦でもこういうとこで・・・・・・)」
「。」
そうはっきりと、力強い声だった。
声をかけられるまで全く気付かなかった。
私はおそるおそる振り返ると、首に傷跡を残したジョナサンが立っていた。
「よく、ここまで来れたね。さあ、抱きしめさせておくれ。」
両腕を広げて微笑むジョナサンと対面し、私はスタンドを発現した。
「『それは無理な話だ』『何故ならお前は―――・・・』」
次の言葉を口にすると、ジョナサンの口角が不気味につり上がった。
次の瞬間、目の前にはディオが立っていた。
「『意外だな』『そっちからこんなに早く姿を見せるなんて・・』」
睨みつける私に視線を逸らさず、微笑を浮かべてゆっくり拍手した。
「よくぞ、ここまで来れた・・・。度重なる困難を乗り越え、スタンドも成長した・・・・・・
あの頃と全く変わらない良い瞳だ。」
相変わらず上から目線だなオイ。
元からディオをぶっ飛ばす気満々だったが、状況を考えると分が悪い。(情報少ないし)
それを見透かしたディオが卑しい笑みを作る。
「安心しろ。おまえと戦う気はない。わたしの部下がおまえを私の元へ連れて来るのだからな。」
「『何・・・?』」
だったら早く覚めないと―――・・・。あ、そうだ。あの時も・・・!
「『随分とご丁寧に送って来るね・・・』『そんなに私が憎いっていうのか?』
『日本といい、カラチの時だって・・・!』」
「恨むなら自分を恨め。
始めから従っていればジョセフ・ジョ―スターの娘に手を出すことはなかったのだ。」
「『よくもぬけぬけと・・・!』」
一歩前に出ようとした時、ふいに懐中時計が私の手に触れた。
まるで、制止してるかのように。すると、「ッ!」と呼ぶ花京院の声が空に響いた。
ディオは苦々しく舌打ちした。
「・・・直々会うことになりそうだ。それまでよーく覚えておけ。」
「『さっさと失せろ』」
そう吐き捨てた途端、視界が暗転した。
ゆっくり瞼を開くと、皆と出発したはずの花京院が立っていた。
「ああ、。ごめん、起こしちゃった?」
「『花京院』『どうして・・・・・・』」
「ジョ―スターさんに無理を言ったんだ。『二人の方がより安全だ』
『一人にさせたらまた単独行動をしかねない』と言ったけど、理由はそれだけじゃないからね?
退院できたら皆を追いかけよう。」
「『・・・!!』『・・・・・・うん、うん!』『ありがとう・・・花京院』」
翌日、病院に侵入しようとしていたスタンド使いを花京院が退治したと聞いて、
目を見開くのは、暫くしてからのことであった。
***
正体は実はアレッシー。