テレンス・T・ダービーの言う兄は、私達のいない間に承太郎達が再起不能にした
『9栄神』のスタンド使いの一人らしい。
(相手の魂を引きずり出す能力・・・どっかの二次創作にもそんなのがあったような・・・)
「いかがなされました?私との勝負を・・・・・・お望みですなら・・・・・・・・・・・・。
さ・・・・・・。・・・・・・・・・館の中へ・・・・・・・・・・・・。」
相手は丁寧に言っているが、ハイそうですかと簡単に従うわけがない。
「おれたちは魂のうばいっこしているヒマはねえ・・・・・・・・・・・・。とっととDIOにあわせな。」
「承太郎!気をつけろッ!何か出てくるぞッ!」
見慣れない人影がスーッと現れた。テレンスのスタンドか・・・。
自分からスタンドを出す敵って今までいなかったな。
「最初は誰です?誰がわたしの相手です?」
「面倒くせえ!承太郎、ブチのめしちまいな。」
アンタは行かねえのかと心の中でツッコミを入れていると、テレンスはこんな事を言い出した。
「第一攻撃はまず、左腕のパンチ。賭けよう。」
「承太郎!なんでもいいッ!おまえのパワーで殴れば同じことだッ!やっちまえ!」
すぐに動かない承太郎に対し、ポルナレフの怒声が飛び交う中、相手のスタンドが動き出す。
「オラアァ!」スタープラチナの右腕の拳が、見事に避けられた。
皆はとんでもないスピードだと冷や汗を流しているが、私はそうに思えなかった。
今の動きは明らかに、スタープラチナの攻撃を『予知』していた・・・!
「残念残念・・・。今の賭けはわたしの負けでございましたな。
わたしも兄と同じで賭けは好きなのですがどうも弱くて。フフフ。」
「おわびに、とっておきの世界へお連れしましょう。」と言って、
スタンドがスタープラチナの腕を掴んだまま、突如現れた穴の中へ引きずり込んだ。
ジョセフと花京院が承太郎の両腕をスタンドで掴むも、逆に彼も引っ張られてしまった。
蔦をジョセフの足首に絡ませたが、ブチンと切れてしまう。
「アヴドゥルゥゥゥきこえるかァァァ、アヴドゥルゥゥゥ。」
「ジョ―スターさんの声だ!落ちながらしゃべっているッ!」
「10分たってわしらからなんの合図もなければァア・・・・・・館に火を放てッ!
いいな・・・・・・アヴドゥル・・・・・・ゥゥ。」
ジョセフの声は、穴が完全にふさがった同時に消えるのだった。
***
すでに10分経った。何の合図もない。
私達が館の中へ突入しようとした時、ふとアヴドゥルさんが口を開く。
「ポルナレフ、突入する前にひとつだけ言っておきたい。
わたしはもし、この館の中でお前が行方不明になったり負傷しても、
助けないつもりでいる・・・。」
私は思わず、アヴドゥルさんを見た。
すると、「、イギー。おまえたちもだ。」とこちらを見て言った。
「冷酷な発想だが、我々はDIOを倒すためにこの旅をしてきた・・・・・・・・・。
おまえたちの方も、もし、わたしがやられたり・・・・・・おまえたちとはぐれても・・・・・・
わたしを助けようとしないことを約束しろ。」
アヴドゥルさんの言うことは最もだ。占い云々など、気にかけてる暇はない。
全滅してしまえば、貴重な戦力が大幅になくなってしまう。
ポルナレフがアヴドゥルさんと握手を交わしているのを見て、私も手を差し出した。
アヴドゥルさんは暫し間をあけるも、ポルナレフと同じように強く握ってくれた。
「、今だから言っておく。どうか生き残ってくれ。
ジョ―スターさんに言われたからではない。わたしの・・・本心だ。」
「『・・・・・・ありがとう、アヴドゥルさん』」
「『勿論、あなたも生き残って下さいね』」と付け足した。
後ろから、「おれには言わねーのかよ!」と怒鳴るポルナレフに思わず笑った。
「よし、入るぜッ!アヴドゥル!、イギーッ。」
ポルナレフは銀の戦車を発現させ、剣の先で異常がないか確認すると早速中へ入った。
延々と続く迷路のようだ。これでは埒が明かない。
こちらもスタンドを発現させ、耳をすませた。左前方から別の人間の呼吸音がする!
私が目配りすると、イギーは『愚者』でその壁を攻撃した。
途端に、男が悲痛の叫びをあげて姿を現した。倒れた同時に、回りの迷路が消えていた。
「どうやらこの幻覚を作っていたスタンド使いだったらしいな・・・・・・・・・・・・。
あっという間だが、イギーがやっつけたぞ。」
これで館の間どりも普通に戻ったわけだ。
壁につけていた手を外そうと、ふと目に映ったものに、私は目を見開かせた。
"このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえらは死ぬ"
壁に直接刻まれたであろうラクガキだが、ただの悪ふざけとは思えなかった。
ピーターの耳には今のところ、不審な音は察知していない。
イギーの鼻にも何もにおっていないようだ。
嫌な予感がして後ろを振り向こうとすると、アヴドゥルさんと目が合った。
あの顔は―――この人もあのラクガキを見たのか!
いや、待ってアヴドゥルさん!ここは私が様子を―――ッ!
ほぼ同時に後ろへ振り向くと、謎の物体の姿があった。
アヴドゥルさんがポルナレフ達を助けようとしているのを見て、
私は彼の背中を強く蹴った。(本当にごめんアヴドゥルさん!!)
ガオン!
ある空間をまるごと食べたような音が、本当にすぐ近くで聞こえた。
次に、頭の上が軽くなっていた。
そのまま床に倒れた時、私はようやく帽子がなくなっていた事に気がついた。
「おい・・・?おまえ、一体どうし・・・!?」
アヴドゥルさんと共倒れになっていたポルナレフが、言うのを止めた。
何故なら視界には、さっきまで後ろにいた『奴』がいるからだ。
一体コイツは何なんだ?何故気配を感じなかったんだ?
疑念が渦巻く中、近くでアヴドゥルさんの呻き声を聞いてハッと我に返った。
アヴドゥルさんの背中の皮膚が、服ごとなくなっていた。
「『アヴドゥルさん!!』」
「ぐっ・・・・・・・・・何故わたしを庇った・・・・・・。」
「『それはこちらのセリフです』」
貴方だってポルナレフ達を助けようとしたじゃないか。自分でああ言ったくせに。
「・・・・・・。」
静かな怒りが籠った男の低い声が、スタンドらしき口から聞こえた。
「DIO様に特別視されているのは気に食わんが、
それにも関わらずDIO様を倒そうなどと思い上がった考えは・・・・・・・・・・・・
正さねばならんからな・・・・・・・・・・・・。」
その口はまるで、暗黒空間のように暗かった。
その奥からゆっくりと、本体らしき男が顔を出す。
「このヴァニラ・アイスの暗黒空間にバラまいてやる。」
させてたまるかッ!と言わんばかりに発現したピーターを素早く移動させた。
連続蹴りを浴びせたと思えば姿を消していて、代わりに館の壁が粉々に砕かれていた。
さっきの感触・・・・・・完璧に攻撃が当たったとは思えない。
しかも、あいつはいきなり空間から現れる。早くこの部屋から出なければ!
「(コイツもディオへの忠誠心が高いタイプらしいな・・・。
さっきから私ばかり狙ってないか!?)」
だったらここは別れた方がいい。二人だったら絶対反対するだろうけど・・・・・・。
アヴドゥルさん、悪いけどもう少し辛抱してくれッ!