「うむむむ〜〜〜んんんんんん。予想どおりジョセフの血はなじむ。
この肉体に実にしっくりなじんで、パワーが今まで以上に回復できたぞ。
なじむ。実に!なじむぞ。」
実際、それ程にも長くはなかったが、私の思考は何時間も停止していたのを実感した。
高笑いするディオの後ろには、息絶えたジョセフの姿が。
すると上空に、ジョセフの魂を思わせる像が現れる。
承太郎から私へ目を向けると、小さく微笑んだ。
「(ジョセフ―――)」
瞬きした時には、彼の像はなかった。幻覚・・・なのだろうか。
承太郎も同じ姿を見ていたのか、じっと空を見上げていた。
「おい、どこを見ている?承太郎。」
ディオの声に我に返ると、奴は魂のないジョセフの遺体に指を突き刺していた。
皮膚がカラカラに、肌からハリがあっという間に消えた。
「しぼりカスだッ!フフフフフフフフ。」
ジョセフやアヴドゥルさんだったら『怒るな』と言うだろう。
だが!こんなこと見せられて、怒っちゃいけないなんて無理があるッ!!
私はほぼ感情任せに、地を蹴って勢いよく飛び出した。
「『世界』、時よ止まれッ!WRYYYYYYYYYY―――ッ。」
再び時を止められ、気づけば承太郎が橋の方へ吹っ飛ばされていた。
呼吸がさっきより酷く乱れている。ディオが間髪入れず時間停止しようとした時、
私は蔦を使ってディオを縛りあげた。
「どうせ波紋を流そうとする策であろう?なまっちょろいぞッ!」
いとも簡単に破り抜けられ、ディオがこちらへ迫って来た。
左足を振り上げるも、『世界』の膝蹴りで止まってしまう。
攻撃はそれだけに留まらず、素早く私の首を絞めた。
「っ・・・ハッ・・・・・・!」
「百年前はちと手を焼いた『波紋』だが、『世界』の前ではまったく無力のものよ。」
こ・・・呼吸、が・・・ッ・・・・・・!
「これが本当の最後だ・・・・・・。おまえに敬意を表し、楽にしてやる。」
「『・・・・・・・・・フ、フフフ、フフフフフ・・・』」
「ヌッ、こいつ・・・!まだスタンド能力を使え・・・ッ!?」
私が・・・このままくたばってあげるとでも思ったかッ!
「『ディオ、君をこの世にいさせちゃあいけない!』」
「き、貴様!」
『世界』の左拳が飛んで来た同時に、『ピーター』の右拳を放った。
「バカが!貴様のスタンドパワーは・・・!特に拳は一番弱いと知っているはずだぞッ!」
ディオの言葉など、もはや耳に入って来てなかった。
コイツを、ブチのめす事以外は・・・!
ピーターの拳は胸へ、世界の拳はピーターを通して腹を貫いた。
ピーターの拳に血が噴き出したのを見てニヤリと笑うディオだが、次の瞬間その笑みが崩れた。
『世界』の胸に、貫いたであろう大きな穴がぽっかりとあいたのだ。
「うぐおおおああああ!?なああにィィイイイッ!」
「・・・へっ。」
やっと・・・!一発かましてやったぞッ!
けれど、腹を貫かれた勢いは止まらず、そのまま河へ落下したのだった。
***
・・・体が・・・・・・重い・・・・・・。
もう、岸まで泳げる力は残って、ないな・・・。
ポンチョも水を吸っている分、重みを増している。
水の中だからか、視界が悪い・・・・・・。下から揺らめくこの濃い色は・・・・・・私の血、かな・・・。
腹を貫かれたのに・・・よく生きてられたなあ・・・。
そう思うと花京院も・・・・・・本当によく頑張った。
今にも死にそうな私が言うセリフじゃないんだけどね・・・。
「(私がここに落ちて・・・まだ1分も経っていないんだろうな)」
それ以前に水の中に落っこちたのは空条家の・・・池だったな・・・。
ウサギの懐中時計はともかく、ジョージさんに貰った時計をダメにしてしまう・・・。
嗚呼、ごめんなさいジョージさん。
そして、生き残ってくれと言ってくれた皆・・・・・・本、当に―――。
―――・・・・・・・・・
―――・・・・・・
―――。
「(・・・・・・・・・え!?)」
「、久しぶりだね。起きれる?」
目の前に差し伸べられた大きな手を、何の躊躇もなく握った。
とても温かくて、懐かしくて・・・誰なのか分かった途端、目頭が熱くなった。
「ああ、泣かないで・・・。ごめんね・・・。本当にぼくは君を泣かせてばかりだね。」
優しい言葉に、私は顔を伏せたまま『違う』と首を横に振った。
「(貴方は・・・何一つ責めることなんてない!何も悪くないよ、ジョナサン・・・)」
ここは私が落ちた河の中ではなかった。全体が真っ白で、とても広い空間だ。
夢の中で会った以前のジョナサンではなく、ちゃんと全身のある姿だ。
ここにいるのはジョナサンと私しかいなかった。
「(ごめん、なさい・・・!ジョナサンは・・・!
私のことを思って戦いから遠ざけようとしてたのに・・・ッ・・・私は・・・ッ!)」
「そんなに自分を責めないで。寧ろ、君には本当に感謝の気持ちしかない。
よく、ぼくの子孫達を・・・手助けしてくれた。」
「(ま、待って!達って・・・承太郎は?ジョセフは!?)」
「大丈夫。もう、決着はついたんだ。承太郎のおかげでぼくの孫は救われた。
だから安心して―――自分の幸せを見つけてくれ。」
「(それはどういう・・・ッ!?)」
気がつくと、自分の体が消えかかっていた。
それはジョナサンも同じだったが、どうも様子がおかしい。
「(待って・・・待ってよ!わ、私は自分の目的を果たした!だからジョナサン達と一緒に・・・!)」
「ありがとう、。でもね、君の居場所はここじゃないんだよ。」
「(そ・・・ん、な・・・・・・)」
「どうか、元気でね・・・。ぼく達はずっと、君のことを見守っているよ。」
ジョナサンの後ろに、スピードワゴンやエリナさん達の姿を最後に、
完全に思考停止した。