『怜花聞いて!来月ロードショーする新作ホラー映画があるんだけど―――』 『はいはい、一人で観に行けば?』 『うっ・・・電話してすぐ辛辣な返事・・・。』 『そう言うが挨拶なしに誘うからでしょ。 そういう趣味だけはテンション高いんだから・・・。』 『ご、ごめん・・・・・・。』 『・・・今後口走ることがないようなら一緒に行ってもいいけど?』 『直します直します!やった、怜花と映画デート!』 『調子いいんだから・・・あ、さっきお母さんがおかず作りすぎたって言ってたから 弟君と食べにおいでよ。』 『あー・・・・・・悪いんだけど今日家族と久しぶりに外食なんだ。』 『あれ?おばさんって今日夜勤って言ってなかった?』 『それがずっと予約取れなかったお店の席がようやく確保できたって 夕方まで内緒にされてたんだよ! 弟なんて部活から帰ってすぐ店に向かったって連絡来たし、あの2人め〜。』 『へえ・・・いいじゃない。滅多にないんでしょ?』 『・・・まあね。でも怜花のお母さんの料理食べたかったな〜。』 『どうせ明日か明後日に食べに行くんでしょ?早く行って来なよ。』 『・・・うん。ありがと怜花。おやすみ。』 『おやすみ。』 他愛のない会話を終えた怜花はの家に行くつもりの母に早速伝えに行った。 母は残念そうに肩を落とすが、別のお隣りさんの所へ行って来ると笑顔を取り戻した。 事を済ませ部屋に戻った怜花は時間潰しに本でも読もうと本棚の戸を開ける。 ズラリと並んだ参考書に混じって置いてある小説に目を動かしていたが、 見慣れないタイトルの本を見て手に取った。何だっけ・・・? 「(あ、そうだった・・・が貸してくれた―――というより無理やり押し付けられたのがまだあったな・・・)」 何故か恐怖ものをいたく気に入っている彼女がオススメだと 言って来た小説をまだ手につけていない。 『ホラー』という単語だけで敬遠していたが、 本人の好きなジャンルを自分にも提供してくれたのもあって その時は断ることができなかった。せっかく貸してくれたんだし、読んでみようかな。 「―――怜花!怜花ッ!」 いざ読もうとした途端、意外にも早く帰宅して来た母親が 顔を真っ青にして部屋にやって来た。 本を机に置き、とても普通ではない様子の母を見て「どうしたの?」と訊いた。 「大変よ!ちゃんのお家が家事だって!」 予想だにしていなかった言葉を聞いた直後、の自宅方面から爆発音が響いた。 その時になってようやく焦げ臭いがするのを実感したのだった。 絶望を二度孕む