年に何度目かとなる東の都のクリーンデーがあるとブルマから悟空へ、
悟空から界王へ、界王からメルヘス界王神へと伝言を貰ったはウイスに許可を貰い、
颯爽と地球へ降り立った。(ちなみにビルスは絶賛熟睡中である)
表情は依然として無のままだが、ゴミを拾う姿はイキイキしていた。
掃除終了の時間が過ぎ去り、一人だけ物足りない感を漂わせていたが、
寄ってらっしゃいとブルマに腕を引かれ、差し出されたジュースを飲んでいた。
「。」
彼女の背中に向けて放つ威圧感のある男の声に、はゆっくり振り返った。
まだ幼かったサイヤ人の王子の面影は変わらず、鋭い目つきは更につり上がっている。
ラディッツやあのナッパでさえたじろいでしまうのだが、
は依然としてストローで吸い上げながら彼を見上げていた。
「何か御用ですか、ベジータさん。」
「話がある。来い。」
有無を言わさず背中を向けられ、すぐにその場から移動し始めた。
「もし何かあれば貴女の判断で行動して構いません。」とウイスの言葉を思い出し、
は席を立って後に続いた。
皆がいるところから少し離れた庭へ移動して、背を向けたままベジータが口を開いた。
「いつからだ?」
「何がですか。」
「お前の主人が破壊神ビルスに変わったのは一体いつだと訊いている。」
「40年前です。」
「・・・・・・あの時から既に貴様はビルスの従者だったというわけか。
何故初めから言わなかった?」
「訊かれなかったので。」
「・・・フン、まあいい。通りで力が通じなかったわけだ。」
あのプライドの高いベジータが他者を認めるのは悟空以外ないに等しい。
まだ幼かったとはいえ、まったく歯が立てなかったのは事実。
顔をしかめながらも、の強さは本物だったと息を吐いた。
だがウイスの『授業』を実際受けたのは魔人ブウ戦の後であることを本人は知らない。
「あと数年早く生まれていればオレ様の家来にしてやったものを・・・・・・。」
「それは光栄です、ベジータ王子。」
「だからその呼び名は・・・!・・・チッ、相変わらず腹が立つ女だぜ・・・・・・。」
独り言のつもりで言ったであろう言葉を普通に拾って受け答えしたに、
思わず苦言をこぼすが、絶対に見せんとする表情は赤くなっていた。
「あら!ベジータに、ここにいたの?
まさか襲おうとしたんじゃないでしょうねえ?」
「なっ・・・馬鹿野郎!その下品な言い方はどうにかならんのか!」
「まあ、失礼ね。この子が心配だから言ったまでじゃない。」
「私はベジータさんと話をしていました。」
「本当?何かされたらちゃんと言うのよ?」
「ブルマ・・・貴様〜っ!」
怒りで体を震わせて先程よりも顔が真っ赤になっているベジータに対し、
ブルマは余裕な態度でフンと鼻を鳴らした。ある意味似た者同士な夫婦である。
「今から皆でカラオケ大会やるんだけども参加しない?」
「せっかくのお誘いのところ申し訳ないのですが、
ウイスさんにお土産を沢山頼まれましたので。何かお勧めな食べ物ありませんか?」
「よっぽど地球の食べ物が気に入ったのねえ・・・・・・よし!このブルマ様に任せてちょうだい!
かなりの量を食べる二人だから大荷物になるわよねえ・・・・・・あ、ベジータついてきて。」
「こ、このオレ様を荷物持ちにする気か貴様は・・・!?」
「此間の遊園地でしてくれなかった分、きっちり働いてもらうんだから当然よ!」
「付き合っただけでも有難いとも思わんのか〜!」
「ベジータさんも何かいいのがあれば教えて下さい。古い付き合いということで。」
「・・・・・・まさかオレがビルスとは友好的だと思っているのか?」
「ここに降り立ってビルス様がそう懐かしむように言ってたので。」
「(コイツ・・・・・・ビルスがオレ達サイヤ人が気に食わんという話を知らないのか!?)」
そんな言い争いをしながら街を回ること三時間。
もはやお土産とは呼べない膨大な大荷物となったその山を、
周囲の者が苦笑など浮かべて見上げる中、は特殊なオーラで包み込んだ。
「今日は本当にありがとうございました。またお誘い下さい。」
「もちろんよ!たまには清掃以外の時でも寄ってらっしゃいな。」
「考えておきます。」
「その時は今度こそオレと手合わせに付き合え、。」
「私よりも適任がもっといるのではないですか?」
はブルマからベジータに視線を向けた。「適任・・・?」
ベジータはニヤリと口端をつり上げた。
「オレは最初から貴様を師など認めてはいない。
まだ未熟だったオレを容赦なくコケにしたお前に借りを返す相手・・・・・・
このオレに技を教えたことを後悔させてやるまでだ。」
「―――検討してみます。」
彼女の口から出た返答に、ベジータは呆気にとられた。
はもう一度深々とお辞儀をして、土産の山と共に消えていった。
スッキリとした庭を眺めた後、未だに固まっているベジータにブルマは首を傾げた。
「どうしたのよベジータ。ははーん、口ではああ言ってるけど本当は寂しいんでしょ?」
当初からは依頼主の命令がなければ自分から動くことも、考える素振りもなかった。
彼女から声をかけることすらなかった。
それがさっき、間をあけて考える姿勢をしていたのだ。
人間の姿をした機械だと言われていたがより人間に近づいている。
それがビルスの下にいる影響だろうと思うと何だか複雑であった。
「ベジータ聞いてるの?」
「やかましい。耳元でぎゃあぎゃあ騒ぐな。」
「何よ!ちょっと心配だけなのに・・・・・・フン!」
***
「此方が東の都名産のスイカです。旬なので今が食べ頃ですよ。」
「これは瑞々しくてちょうどいい甘さですね!水分補給にはちょうど良い。」
「そんなことよりウイス、何で勝手に外出許可出したんだ。」
「ビルス様の次に一応私にも決定権があるのをお忘れですか?」
「知ってるに決まってるだろ!39年前もそうだけどさ・・・・・・はボクの付き人だよ?
そんなにホイホイと別の星へ行かせないでよ。もう掃除屋じゃないんだろ?」
「私は生まれた時から清掃することが使命として生きているので、
掃除しないと拒絶反応が・・・・・・。」
「もういいって!それ前にも聞いた!」
「いいじゃありませんか。ビルス様が寝ている間に仕事をしていたのですから。」
「だからって・・・!地球に行くならボクも誘ってよ!」
「ビルス様は眠ったばかりじゃないですか!」
ちなみにベジータが考えに考えた土産の品は中々好評であった。
王子は少女に勝ちたい