女性との関わりが全くないに等しかった僕。
こんな時代だから仕方ない―――なんてこの世のせいにしている。
好きになった子と思いっきり恋愛して・・・・・・結婚して、静かな田舎に暮らしたい。
けれど、そう上手くいかないのが現実。嗚呼、畜生ッ!
男共に囲まれながら、参加したくもない戦で血を流して働き死ぬなんてまっぴらだ!
だが、こんな時代に僕の理想とする女性は巡り会えるのだろうか。
・・・・・・・・・ええ、いましたよ一人!
日ノ本の生まれにしては珍しい金色の髪。忍であるからか、つり上がった瞳がどこか冷たい。
女性の独特な体を全面的に出しているその身なりに何度失神したことかッ!
慣れるまで大分かかったッスよ、本当に。
名は『かすが』―――と言うらしい。容姿だけでなく、名前も素敵だ!
見ているだけでは留まらず、彼女が属する上杉軍に入隊し、大ッ嫌いな戦にも進んで参加した。
とにかく彼女に一歩でも近づきたくて必死に働いた。
けれど、かすがさんには心酔する我が大将の上杉謙信様という大きすぎる存在がいる。
右腕であるかすがさんに近づきたいだなんて、とても無理な話だ。馬鹿馬鹿しい。
それでもこの軍から去ろうとしない僕も、とんだ大馬鹿者だ。
そんな僕にも、ようやく長年の苦労と書いての実績が評価され、今では武将の地位だ。
だけど、かすがさんと軽々しく会話できるなんて遠い先の話・・・・・・と思っていた矢先のこと、
たまたま上杉軍の情報を探ろうと侵入寸前の忍を捕まえたことから、上杉様だけではなく、
あの・・・!かすがさんにまで褒め称えてくれたんだ!!
こんな幸せ―――今までにないッ!
「よくやった。これからも謙信様のために精進しろ。」
彼女が口にする言葉は決まって『上杉様』だ。
心の中では分かっていた。そう簡単に心が動くなんてムシが良すぎる話だ。
上杉軍に入ったのが、『かすがさんに会う為』なんて微塵にも思っていないだろう。
僕の存在なんて、上杉様に比べれば―――・・・。
「いい働きを期待している、。」
―――初めて、名前を呼ばれた。
苗字ではなく、下の名前で・・・!ああッ!なんて勿体ないお言葉!!
貴女の為ならいくらでも命を差し上げます!
例えそれが、彼女にとって上杉様に対する侮辱だと、罵言されても―――。
貴女の存在に僕は惹かれた
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2014/06/04