「お、後輩ちゃーん。調子はどう?」
「じょう、じょう!」
「そうかそうかー。」
軽い口調で彼女に声をかけたのは石田三成の部下である島左近。
豊臣軍入りして長く経つが、三成らほど所属していない。
が豊臣の一員になるまで新参者であった左近はようやく新入り=後輩ができて喜んだ。
何よりも滅多にいない女子(大体は女中)の顔が増えた。
軽率な言い方だが、ムサイ集団の中にやたら暗い人間ばかりいるので、
三成とは全く真逆な性格の子に気軽に話しかけることができるのだ。
「相変わらずほっそいなあ。ちゃんと飯食べてる?」
「う゛・・・・・・かんべ、にも・・・・・・言われ゛た。」
ひょいっと軽すぎる幼女の身体を両手で抱き上げて左近は訊く。
食欲に関しては問題ないのだが、上司でもある三成と同じくらい(とても本人の前では言えないが)
食があまり進んでいない。しかし彼女の場合、食べたくても完食できない理由がある。
「やっぱり傷・・・・・・まだ痛むか?」
決して人に晒すことのない口元。
口布の下には賊に襲われた時に負傷した傷を隠すように包帯で覆われている。
あれから大分経つが、未だ痛みに響くのはその後遺症によるものだろうか。
その傷跡の実態を、左近はまだ知らない。
「うち、ほんとは、食べたい、のにっ・・・・・・もっと、もっど・・・・・・。」
「うんうん、は頑張ってるもんな。
よし、次の戦で俺が先手取ったら城下でうまいもん奢ってやる!」
「お゛!?」
「この俺に二言はない!だからはちゃーんと俺の勇姿を見て勉強するんだぞー?」
「・・・・・・あ゛い!」
元気よく手を挙げて返事する彼女の目は星のように煌めいている。
本当に素直でかわいい子供だ。そんな子が豊臣の者であることを忘れてしまう。
「さーて、三成様のお怒り食らう前に出陣準備しますか〜。」
「しますが〜。」
「何をしている?半兵衛様が立てた戦略を無駄にする気か?」
「げっ!?行く前に見つかったし!」
「み、つかったーみつがったぁー。」
「煩い!」
今日も城内はいい意味で賑やかです。
仲良し先輩後輩
2014/08/16