ひょこひょこと廊下を歩いていると眼前に大きな人影が現れる。 見事に積み上げた荷物がその人物の視界を完全にシャットアウトしていた。 周りから見れば何時ぶつかってもおかしくない状況だが、 その相手が相手なので敢えて声をかけないでいるのが常。 「畜生・・・!小生をコキ使いやがって・・・いつかこの城を・・・。」 大柄の足取りがフラつき始め、は真っ直ぐ走って制止した。 「おお、か。ちょうどよかった。すまんがこいつを半分持ってくれないか?  前が見えなくてな。」 「う゛!」 普通童子の腕力では無理があるでろう量だが、 甲斐・武田にいる忍が持つ手裏剣と同等の重さである変形手裏剣を 片手で扱うようになったからすれば無問題である。 積荷の山が小さくなり、ようやく官兵衛の顔が現れた。 「どこ、まで?」 「刑部の部屋だ。全く、こんな雑用ばかり押し付けやがって・・・。」 嗚呼、やっぱりか。 扱き使ったり陰湿ないじめをするのは主に大谷吉継だ。 (たまに一緒になってイジることはあるが) しかし仕事関係となると一番下の階位である自分が 刑部のように顎で使うなんてことはできない。 思わず、彼に代わって謝った。 「何でお前さんが謝るんだ。」 「ぎょぶさ、謝ること・・・多分、な゛いから。」 「いや、あいつが謝るなんて天と地の差だ。ま、他の奴らもだがな。」 確かに。 思わず相槌を打ったが、生憎官兵衛の視線は前方を向いてるため見られることはなかった。 その後もコキ使って来る同僚達への文句のオンパレードで、 は口出しすることはなかったが、一応話に合わせておこうと何回か頷いた。 愚痴を言いつつも、ストレスで性格がひどく捻くれるようなことはないのだから 相当メンタル強いな。ある意味うらやましい。 目的の部屋の前まで行くとトカゲの尻尾に見立てた羽織が視界に入る。 向こうも此方に気付いて「げっ。」あからさまに嫌な顔で歪んだ。 「阿呆官とチビじゃあないですかぁ。」 「何で小生だけ見て言ってるんだお前さんは。」 「またべ、何してる゛、の?」 「別にぃぃ・・・?外出ようとしたところでオマエ達がいたんですよぉ。」 「今日、いい天気。日向ぼっこ、しだい。」 「お前さんは気楽でいいな。こっちは日の光を浴びる時間も与えてくれやしねぇ・・・。」 「ケケ、そりゃ、ご愁傷様。」 「又兵衛!それでも小生の部下か・・・!?」 「先程から騒がしいと思えばぬしらか。」 廊下で3人も声が飛び交えば小うるさくなるのは仕方ない。 いつもの神輿に乗ってぬっと部屋から出て来た大谷を見て、 今度は官兵衛が不機嫌な声を漏らした。 「暗よ、幼子を使っても雑用までこなせんのか。」 「誰のせいでクソ重い資料を運んできたって言うんだ。」 「ぎょぶさ、どこに置く?」 「うむ、そこに置け。ご苦労、ご苦労。ぬしは日に当たって来るがよい。」 「あ゛い。」 「暗、ぬしの仕事はこれだけではない。引き続き頼む故。」 「おい!一休みくらいさせろ!」 「はて、耳が遠くなったか。」 「ざまーねぇなぁ黒田ァ。キケケケ!」 「な、何故じゃ―――っ!」 どっちが先輩? *** グダグダ感がひどい・・・。 2014/09/08