*現パロ『ゆったり、のんびり』とは別もの *現代半兵衛は前世の記憶なし *戦国半兵衛を亡くしたばかりの忍夢主が現代へ吹っ飛んでます 定時退勤してビニール袋を片手に玄関を開けると、見知らぬ少女がいた。 お互い目が合うと、同時に硬直した。 「あ・・・ああ・・・!」 「・・・君、どこの階の子かな?鍵はみな別々のはずなんだけど。」 一瞬思考が停止しかけたが、すぐに冷静さを取り戻して問い出した。 帰宅して早々こんなことがあるなんて何の罰だろうか。前髪をかきあげてため息ついた。 「はんべ様・・・!!」 拙い口調で自分の名を呼ばれたと分かった時には、小さな腕が自分の腰に抱きついていた。 何故自分の名前を知っているんだ?知り合いにこんな子供がいた覚えがない。 それよりも『様』とは・・・? 「よがた・・・!無事だたんですね!なり様に討だれた、の・・・嘘なんだ!」 「ちょっと待ってくれ。  一体何の話をしているんだい・・・ほら、泣き止んでくれなきゃ話が進まないよ。」 歓喜極まる少女を宥め、状況を理解するのにかなり苦労した。 戦国時代やら、豊臣やら、非現実的なことばかりで全く真実味がない。 だが、という少女の持ち物や服装からして今のものとは考えられなかったし、 セキュリティ万全のマンションに不法侵入するなんて無理があった。 親はどうしたと聞くと、もういないと返ってきた。 半兵衛は警察に連絡しても解決しないだろう思い、さらに頭を抱えた。 *** 「お”かえいなしゃい、はんべ様!ごひゃん、がえー、です!」 あれから数週間ー結局そのまま少女を家におくことになり、今では家政婦のように働いている。 戦国時代から来たと言ったわりには、ガスコンロや家電製品などを見て、 懐かしむ顔をしていた。 「カレーか・・・一人暮らしだから作ることもないからね。食べようか、。」 「あ・・・はい!」 最初こそは同じ席に座っていいのかと戸惑っていたが、 今では当たり前のように共に食事をとっている。 処方してもらった薬での傷を塗り続け、困難であった咀嚼もできる。 だが傷痕よりも、いつ倒れてもおかしくない小さな身体を心配した。 「ねえ、君が言う『はんべ様』ってどういう人物なんだい?」 「う!豊臣の頭!はぎゅしぎ!みんにゃ、しょんけ、しでう!あと、美人しゃん!」 得意気に話す彼女だが、どうもその『はんべ様』を自分本人だと誤解している。 話の内容から推測すると、自分はあの軍師・竹中半兵衛に似ているらしい。 確かに同じ名前だが、顔まで似ているなんて偶然があるだろうか。 しかも、彼女が言う豊臣は力を持つ者だけを生かすー自分が知っている 歴史上の豊臣とは全くの逆であった。 「、ちゃんと噛まないと駄目だよ。ほら、口元についてる。」 一目に晒したくない肌に、濡れたハンカチで拭った。 はぽかんと固まるが、嬉しそうにはにかんだ。 「えへへへ・・・。」 どこかの施設に保護してもらおう、などの考えは隅に追いやり、 の笑顔を見ると、こんな生活も悪くないと思う自分がいる。 今はこうして笑っているが、ここに来るまでどんな生活を送っていたのか。 「・・・今までの暮らし・・・辛くはなかったかい?」 「ん・・・・・・忍の生活・・・楽、じゃにゃい。でもうち、身分低いから、  じゅーぶんじぇいたく。もちろん、今も楽しいです!」 半兵衛はこの少女を見て時折思う。 自分は彼女の言う竹中半兵衛の生まれ変わりではないかと・・・そして同時に、 その『半兵衛』に対して疑問を抱いた。 忍として生きる道を選んだのは本人だと言っていたが、 十分辛い思いをしたというのに何故無理やりでも引き止めなかったのか。 戦に放り投げ、更に命を削らすなんて・・・何を考えているんだ。 は既に亡くなっている男の面影を、今も自分に追い求めている。 この子はいつになったら、『現代』の半兵衛として見てくれるだろうか。 相容れない *** 『記憶無し現代半兵衛様のところに何故か戦国半兵衛様を亡くしたばかりの ちゃんがトリップしてしまい、あまりの嬉しさに飛びついてくるちゃんに 困惑する現代半兵衛様がいろいろと問うて来るけれども感極まったちゃんは 言葉が出なくて仕方なしに自宅に〜』 Twitterからやってほしいシチュタグでみあさんに頂いた案より。 2016/02/24