*サタニスター夢主
*『サタニスター』の世界とは混合していません
「インテグラ。貴女は決して一人じゃないよ。」
いつの日だったか・・・最愛の幼馴染がそう口にしていたのを日に日に思い出す。
の家系とヘルシング家とは長い付き合いで、
彼女の母と私の亡き父・アーサーとは仕事上でもよく顔を合わせれば
「必ずトラブルが起きる。」という。
その母の娘である幼馴染も、その血を立派に受け継いでいる―――。
「・・・何回言わせれば気が済むんだ・・・?」
「いや〜でも、あの、ですね・・・?
敵地に踏み込んだのはこっちですけどケンカを売って来たのはあちらでして・・・。」
「そう言ってアンデルセンとアーカードがドンパチして一体何回目だ?」
ヘルシングの『切り札』とイスカリオテの『切り札』を対峙させれば十中八九戦いが起きる。
元々、十三課のやり方と考え方が気に喰わない彼女は今回、
思わず毒を吐いてしまったらしい。
と言っても『極小』と呼べるほどの小さな声なのだが・・・
まあ何とか理性を保っての発言をしたのだからそこは褒めておこう。
それでも戦いは起きた。罵言が聞こえた訳ではない。
つまり自分の上司の制止すら耳を貸さない両者なのだから、からケンカを吹っかけようが関係ないのだ。
「止めるよりもまず煽ってどうするんだ!?」
「だって十三課が嫌いなのは事実ですし、それに2人がああなるのはいつものことじゃないですか。」
それでもシスターか。修道服を着ている意味がないじゃないか。
修道服やめて制服を着ろ。私がそう言っても「一応シスターですから。」笑みではぐらかされる。
昨日か一昨日にも見たことあるような光景に思わず溜息ついた。
「問題児な下僕を持ってさぞお疲れでしょう・・・。仕事ばかり切り詰めては身も滅ぼしますよ。」
「・・・わかってるなら自重しろ。」
「おぉ・・・怖い、怖い。」
低い声で軽く睨むと、やっといつもの口調に戻る。
何故かシスター(と言っても悪魔寄りだが)について以来、私に対しても敬語で話すので、
違和感ありすぎて気が持たない。
久々に幼馴染に戻った彼女に気が楽になる。
「何日ぶりになるんだろうね・・・『幼馴染』同士でお喋りするのは。」
「最近お前達に任務を押し付けてばかりいたからな。すまない・・・。」
「はいはーい!今は仕事中じゃないのでそういう話はNG―――です!」
「・・・そうだな。」
昔からバカやっていた彼女らしい言葉に思わず笑みが浮かぶ。
やはり彼女はこうでなければ―――。
「(・・・そういえばコイツを『』と呼ぶようになったのは・・・あの日だったな・・・)」
彼女の使命は『殺人鬼』を狩りつくすこと―――初めて会った時、本人の口から聞いた。
古くから先祖代々、彼女の家系はそれを受け継がれる。
しかしそれはあくまで先代から伝えられた使命だけの話。
何故なら彼女は吸血鬼を始めとする『化物』を対象に狩っているからだ。
まだヘルシングの継承者になって間もない頃、私がその理由を聞いた。
「化物と殺人鬼ってさ・・・何だかんだ言って昔から存在するんだよね・・・。
一般市民からすればどんな殺人鬼だって『化物』なのさ。
別に殺人鬼をターゲットから外すって訳じゃないよ?」
それ以降のことはよく覚えていない。
ただ、そう言っていた彼女の目の奥に怒りがあったのは事実だ。
お互い無傷だけでは済まない『宿命』を背負っている。生まれた頃からずっと―――。
「インテグラ・・・?おーい、インテグラさーん?」
「お前が『サタニスター』になっても・・・。」
「ん?」
「『サタニスター』でも、『』になっても―――お前はお前だ。」
あの時、私の幼馴染が別人になってしまったのではないかと流石に不安はあった。
だがどんなに戦場へ送り込まれようと、私の側にいてくれた。続けて口には出せないが、お前は私の支えだ。
「・・・ふふ。勿論だよインテグラ。」
嗚呼、この微笑みはそう―――叔父上を殺し、当家を継承して孤独の闇を抱いていた当時の私にも、
彼女は同じ笑みを向けてこう言った。
「インテグラ。貴女は決して一人じゃないよ。」
、君がいてこそ『今』の私がいるんだ―――。
君こそ私の光