閉ざされた空間の中央に特設されたリング。窓もない限られた大きな室内に響く歓声。 それが飛び交う中、そのリングの上にが立っていた。 何故私はここにいるのでしょう・・・。 完全なフラグ立ちました。 それは数十時間前―――。 ミホークによる地獄の修行を終えて海に出たはとにかく、情報が欲しかった。 どんなことでもいい。元の世界に帰れるきっかけになるようなものであれば、新聞記事とか図書館にある 本など―――身近なものでも構わなかった。 「ここが"忘れられた図書館"・・・。」 休憩がてらに到着した島で親切な漁師に、それ(・・)がどこかの海の底に沈んでいると教えてくれたのだ。 それが今、彼女がいる場所がそれだ。太陽の光がまだ届いている深さにあり、その図書館全体がシャボン玉で コーティングされている。(悪魔の実を食べたことにより『カナヅチ』になってしまったは 特殊スーツを着て潜るハメになったのだが・・・) 「すごい本の数・・・。これが何百年も放置されてたなんて可哀想に・・・。」 太陽が沈むまでに探し回らなきゃならない。何せここには電気がない。 ちょうど天井が通り抜けになっていて、魚が優雅に泳いでいるのが見える。 ホコリで被った本を軽く叩いて中を開いた。パラパラとページを目に通していると、 気になる内容を発見した。 「『もう一つの世界―――』・・・・・・これだ!」 思わず歓喜の声を上げた途端、一気に視界が暗くなった。 おかしいな・・・まだ夕暮れまで時間はあるはず―――。が視線を上に向けると、 ―――パクン! 巨大なクジラに食べられたかと思いきや、気がつくと『天空闘技場』と呼ばれる場所にいたのだ。 その後どうしたかと言えば、『情報収集と生活費確保』という形で飛び入り参加した結果、僅か数人しか いないと言われる200階クラスまで到達した。そこまではよかった。今日対戦する相手を見るまでは―――。 「ボクはヒソカ。同じ200階クラス同士ってことでヨロシク◆」 「は、はあ・・・。」 リングにやって来た長身の男。旅の途中で会ったバギーよりも、かなり目を引く奇抜な格好である。 「・・・キミ、ここに来て間もないだろ?」 「そうだけど・・・。」 「くっくっくっ・・・◆なるほど、なるほど◆」 「両者、位置へ!」 ・・・あれ。何だろうこの悪寒。 だがそんな不穏な思いを抱く余裕など、すぐ吹き飛んだ。 ヒソカという男を人目見て「こいつは強い。」直感でそう思ったが、直接対決となるとそれ(・・)以上だ。 『カゼカゼの実』で風人間になったはずなのに殴られる(・・・・)。何もないはず(・・・・・・)なのに引っ張られる。 ヒソカに攻撃できるのも精一杯だ。 「(久々に味わったな・・・こんなに悔しいなんて)」 けれどは諦めなかった。相手がどんな力を使って来るかなんて知らずに戦って来たのは、 今の状況だってそうだ。傷ついた体を立て直し対峙して来る彼女を、ヒソカは恍惚に笑んだ。 その不気味な笑みがの背筋を震わせる。その時、ヒソカの指からオーラのような物体が伸びているのが 薄ら見える。何だ、あれ・・・・・・? 「へえ、見えるようになったのかい(・・・・・・・・・・・・)◆」 ヒソカが悪魔の笑みを見せた瞬間、の体がリング外へ飛び出していった。 遠のいていた意識を徐々に取り戻している彼女をよそにヒソカが近づく。 止めを刺す気かと思った矢先、男は壁に背を預けているの耳に口を寄せる。 「キミはもっと強くなれるよ。ボク好みに実ったらまた相手してあげるよ◆」 既に体力はないはずなのに、本気で命の危機を感じたは最後の最後で『風』となってその場を 後にした。その光景をヒソカがすごい笑みで眺めていたとは知らずに。 「(くっそ〜〜〜!二度と会いたくないけど、やっぱりぶっ倒したい!  まずこの世界についてもっと知る必要がある―――!!)」 その後。 伝説と言われる男と、少女を装う心源流の使い手と、運命的な出会いを果たすことになるのは もう暫くしてからである。