『ビスケット=クルーガー』、もとい『ビスケ』に念能力で子供の姿にしてもらったその数週間後。 引き寄せられるかのように『ジン=フリークス』と言う男の下で、彼女はいた。 「そうそう、それが『練』だ。そのまま3時間維持しろよ。」 「オッ・・・オス!」 が何故彼の所にいるのか。この世界にしか聞かない『念能力』というのを修めるためだ。 幸い、この世界の住人ではない彼女にもオーラが出る穴『精孔』があった為、 それをこじ開けてオーラの巡りをよくすることができた訳なのだが、この修業は思ったよりも過酷だ。 "練"を10分維持するだけでも大変だと言うのに、ジンはそれをすっ飛ばして3時間に定めるのだ。 ミホークの下で修業した経験もあっては弱音を吐くこともなく、ぐんぐんレベルを上げていった。 「―――思ったんですけど・・・ジンさん。」 「パパ。」 「・・・・・・パパはどうして私に『念』を教えてくれるの?  悪用されれば恐ろしい破壊力になるから、教える者は選ぶって・・・。」 は最初からジンの下で修業すると決まっていた訳ではない。 ある森でウロウロしていたところ、偶然ハント活動していたジンと会ったのだ。 『世界で5本の指に入る超ハンター』と言われるジン=フリークスは、この世界では有名であるのだが、 はそれを知らずに修業を続けている。 ただ、念を教える代わりに「自分をパパと呼ぶように。」と変な要求があったが・・・。 「可愛いから。」 「・・・はっ・・・・・・?」 「というのは冗談で・・・・・・(可愛いって思ったのは事実だがな)。お前、動物に好かれてるだろ?」 「え?」 「その様子だと気付いてねえな・・・。実はお前と会う以前―――とっくに会ってたんだよ、オレ。」 「・・・・・・・・・え?」 本日2度目の「え?」が出て、益々マヌケ面になるをよそにジンは構わず語る。 「この森が立入禁止区域に入ってたのに関わらず、お前がノコノコと入ってたからどう説教してやろうかって  思ってたんだが―――やけに動物達と溶け込んでいるから気になってさ。」 確かにあの時(最初は食べられる側として追いかけられたけど)変わった動物と戯れてたけど・・・ 全然気付かなかった・・・。 「今だから言えるが、お前と遊んでた動物はほぼ全て危険視されてる生物なんだ。  寄り付くどころか、人と仲良くなる例は今までにない。」 ズバズバと衝撃事実を打ち明けるジンにはぽかんと口を開けたまま。 一体どう対応すればいいのか、軽く混乱していた。 「いいハンターは動物に好かれる―――強いて挙げるとすればそれかもな。」 「・・・はあ・・・。」 「ん、その反応・・・絶対信じてねえな?」 「だって『パパと呼べ。』って言われたギャップが大きすぎる・・・。」 「いっ・・・いいじゃねえかよ!減るもんじゃあるまいし。」 結局その理由はわからず話は終わってしまったが、何だかんだ言いつつジンを『パパ』と呼ぶのは そう満更でもないだった。 父娘になりたい師匠 近い将来―――ジンに勧められてハンター試験に受けることになるのだが、 そこで彼の息子に会うことになろうとは思いもしないだろう。