ジンの下で修業を始めて数ヵ月後のこと。 ジンの弟子であるカイトと出会ったは組み手を頼み込んだ後、 生物調査をする彼の仕事について話を聞かせてもらった。 大型生物の新種を発見したと言うカイトに、が「その生物見てみたい。」と言うと 発見した本人はふいを突かれたような表情に変えた。 「えっ、何?私・・・何か変なこと言った?」 「・・・いや、オレの仲間に生物調査の女が3人いるんだが・・・・・・素人で興味を持つ女は初めて、でな。」 「虫は微妙だけど、それ以外の生き物なら好きだよ。ここに来て早々食べられかけたけど。」 「嗚呼・・・ジンさんも言ってたな。」 カイトはが『異世界から来た人間』というのを既に知っている。 彼女の素性を知る数少ない友人として、は嬉しかった。 「お前がいたとこではどうなんだ?」 「それは私がいた世界?それとも前の世界?」 「どっちも・・・だな。オレの知らない生物が多く潜んでるんじゃないのか?」 「ああ〜・・・そうだね。前の世界はほぼ海の上を通っているから海の生物に遭遇するのが多いな。 そういう生物も調査対象に入るの?」 「そうだな・・・だが地上が主な調査地帯に偏るからな。」 「もったいないよ。海はいいよ。2年以上も海の上で生活してるけど全然飽きない。 地方によっていろんな景色が見える。」 「はは、そうか。オレもその景色が見てみたいな。」 そうだ海・・・・・・ここに来てからまだ1度も見てない・・・。 「・・・・・・・・・帰りたいか?元の世界に。」 突然そう問い始めるカイトには目を見開く。 確かに戻りたいとは思っているが、すぐに帰りたい―――という感じではなかった。 「よく分からない・・・・・・。」と小さく首を振る。 「でも、この世界にもっといたい―――カイトが言ってた生き物にも会いたい。」 「・・・そうか。」 「カイトはどう?」 「・・・・・・オレもお前が見た生き物には出会いたいな。」 そう言っての頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。 ジンと言い、彼と言い・・・何故二人して犬猫のように扱うんだと内心思う。 けれどその仕草が本当に優しくて、思わず涙が出そうになった。 カイトに見られないよう顔を伏せて、無理やり拭った。 もう一度改めて考えてみた。