*6部夢主が3部に飛ぶ *鎖スタンドに加えて寄生型スタンドを抱えてる複雑設定 *名前しか出てこない夢主の両親は固定 『命拾いしたな空条承太郎。貴様はもう少し自分の身を守ることを考えたほうがよいぞ』 そう言ったはずの本人の口は閉じたまま、 お世辞にも可愛いとはいえないパペットの口を上下に開閉させた。 何か言う前にその人物は言うだけ言ってさっさとジョースター一行の方へ戻っていく。 承太郎は帽子のつばを引いて軽く舌打ちをした。 *** 旅の途中、新手のスタンド使いに苦戦していたところをこの人物に助けられたのがきっかけだった。 承太郎の顔と名前を再確認してから自分も旅に加わると強引についてきて今に至る。 当初は「DIOの刺客じゃないか」と誰もが疑った。実際に新たな敵が来ても本人は知らん顔しているし、 今だってそうである。承太郎、もしくは自分の身が本気で危うくなった時だけ動く。 まるで猫のようなやつである。 「といったか、何故君はそうまでして我々を・・・というより承太郎を助けたいんじゃ?」 『何度も言わせるな。は親友のために動いてる。それ以外の理由はない』 「おっ前なあ〜!それでハイそうですかって納得できるかよ?  それとさっきからバケネコの腹話術してねえで真面目にだなあ・・・!」 『無礼者!わしはパンジーというプリチーな名前があるブリティッシュニャンコだぞこの電柱めー!』 「ゲェーッ!バカやめろッおれの頭を毟るなあーッ!」 パンジーという猫パペットでポルナレフの自慢の頭を一心不乱に掻き毟るは虚無の表情だった。 現代でいえば一言で「痛い」人間だが、承太郎たちの今の時代にはまだなく (認知されていないだけかもしれないが)、腹話術でしか喋らない不思議なやつに留まっている。 芝居なのか本物のイカれたやつなのか、敵と疑うのも馬鹿馬鹿しく思えるほどだ。 「何度も言うけどよ〜お前承太郎のこと好きなんだろ!?あいつのこと知ってるっつー顔してよォ〜  承太郎だけ助けてるのを入れてどこに恋してませんなんて言えんだよーッ!」 「いい加減にしろポルナレフ、こっちは疲れているんだ。  他人の恋バナに花を咲かせるのは明日にしてくれ」 「ンだよ花京院ノリが悪いな。こっちはもう少しで全貌が明らかになるんだからよお!」 「さっきから喋ってるのはお前だけだぞ」 全員が寝袋に入っている中、疲れを知らないポルナレフがしつこく話しかけているが、 当の本人 は皆に背を向けて口を開かない。 彼らからは見えないが、もしかしたら既に寝ていると思っている。 ついにジョセフたちにも早く寝ろと言われたポルナレフは子供のように唇を尖らせた。 *** 横になってどのくらい経ったのか。 パキッとしなる枝の音に、自然に目が開く。 まだ日が昇る前の夜空を見上げ、次に視線を横に移動させる。 全員膨らんでいるはずの寝袋が一つだけ萎んでいて、承太郎は上半身を起こした。 消えているのは例の頭がおかしいやつだ。それに気づいているのは自分だけ。 祖父たちに知らせるべきかと頭によぎったが、冷静になって考える。 が本当に刺客かどうか分かる機会なのでは? 今も同行させられているが、完全に信用しているわけではない。 もし、やつが黒であるならその時は堂々とブチのめすと心の内に決めている。 スタープラチナを発現させ、辺りを見渡す。ここから人間の肉眼では見えない距離にはいた。 自分を隠すように大きな岩の内側に背を丸めて座っている。 何をしているのかまだここからでは分からないが、細心の注意を払って歩き出す。 「うっ・・・ぐえっ・・・」 近づくにつれ、承太郎の耳に嗚咽が入ってくる。 嫌な予感を抱いた承太郎は静かにスタンドを発現する。 岩陰から見えると距離が縮まった。 「それ以上近づくな空条承太郎」 はっきりと聴こえた声に同調するかのように承太郎は止まる。 あの巫山戯た腹話術の声ではない。 十中八九あいつだろう。やはり演技だったのかともう一歩近づいた時、何かが空を切った。 条件反射にその場から離れると、黒い何かがカーブを描いて承太郎に向かう。 すかさずスタープラチナで反撃しようとした。 「なっ・・・!?」 黒い塊が口を開けるように裂け、スタープラチナの拳にかぶりついた。 猫に噛まれたなんて生易しいものではない。そのまま牙を立てて養分を吸い取っている。 イエローエンテパスと似たスタンドだろうか?一刻も早く剥がさなくてはまずい・・・! 空いている腕で黒いものを掴むとその感触があった。 だがその黒い物体から針のように飛び出し、本体である承太郎に向かった。 ジャラジャラジャラ――― 承太郎の顔面スレスレの所で金色に輝く鎖が変形した黒い針を巻きついていた。 更にスタープラチナの拳を覆う塊にも巻き付き、ずるりと剥がれ落ちた。 鎖が巻きついたまま引っ張られるそれは岩陰に隠れるの方へ向かう。 視線を自分の拳に下ろして大事にないか確認すると、もう一度岩陰を見た。 「てめー・・・一体どういうつもりだ」 『言ったであろう。親友のために貴様を助けると』 今日までが鎖で攻撃や防御できるというスタンドを使っているのを全員見ている。 だがあの黒い得体の知れないものは見たことがない。スタンドは一人に一体。 あの物体と鎖が同一であるとは考えにくい。は深くため息をついた。 『まったく、貴様の慎重かつ冷静な判断は昔からか・・・それが彼女にも受け継いでいるとなると、  やはり親子じゃのう・・・』 「くだらねー演技はやめて話して貰おうか。てめーは敵か?味方か?」 「・・・あんたが根っからのクズだったら助ける義理なんてなかったよ」 は舌打ちしてパペットを大事そうに抱えた。 「さっきあんたを襲ったのはスタンドだ。忌々しいけど、その黒いのも僕が今の所有者になっている」 「どういう意味だ」 「その黒いのは元々別の人間が本体なんだ。  それも発現するまでそいつもスタンドのことすら知らないただの一般人・・・  いや違う、まるでこいつを弁護してるみたいで腹が立つな」 「おい何の話だ」 「話すと面倒なうえ長くなるんだけどいい?」 「てめーほどの面倒事はねえ」 気になると眠れない性質でもある承太郎はこれ以上厄介事を抱えたくなかった。 母親の命がいつ消えてもおかしくない状況であるが故、祖父も内心焦っていた。 そんな中で敵かもしれない者に振り回され、苛立ちも募っている。 承太郎の心境を知る由もないはやれやれと長く息を吐いた。 「僕は昔勤めていた職場の元同僚にしつこく言い寄られてた。  警察に相談して何度注意しても彼は辞めてくれなかった。  夜、家に帰ってきた時、そいつがうちにいた」 君がおれのものにならないなら、おれに殺されてくれ―――。 「その攻防の中であいつの腹にナイフが刺さった時、あの黒いのが現れたんだ。  そいつに僕の身体の一部を食われながら僕にスタンドが発現した。  鎖で捕縛できた時にはストーカー野郎はとっくに死んでたよ」 「死んでいる・・・?」 「そう、本体が死ねばスタンドも消えるはずだ。それを知るのはもっと後になるけど、  あろうことか僕に寄生してしまった」 は忌々しげに言った。 「こいつを僕の身体に一時的に封印することはできるけど空腹になると暴走する。  だからある程度の食事をさせなくちゃいけない・・・僕はこいつをイーターと呼んでいる」 がそう口にするとそいつは捕縛された状態にも関わらず身体を震わせる。 「お前を直接呼んでない。さっさと寝ろ」 吐き捨てるように言うと、イーターは再び身体の奥に身を潜める。 ようやく静かになっては緊張を解いたように身体を伸ばした。 「長くなったけど、要するにこの寄生型にいつ食われてもおかしくない状況であるってことだよ」 「・・・わからねえな」 「別にいいよ理解しなくて。あんたはその時の当事者じゃあないんだから」 そうじゃねえ、と承太郎が噛みついた。 「ハンデを背負っていながらおれを庇う理由がわからねえし  自分だけ知っている顔でいるのも気に食わねえ。てめーは一体何を知っている?」 「・・・未来から来たって言ったらあんたは信じる?」 「・・・てめー、」 「空条承太郎、僕は至ってマジだ。僕があんたのいうくだらない演技をやめてやったんだ。  僕を殴ったって構わないが、今から言う言葉を聞いてくれ。  この旅が終わって余裕できた時に財団でも何でも調べてみな」 その表情は苛立ちからでも演技でもない真剣な目だった。 どこに根拠があるか断定できないのに、本当にそうであると思えてしまった。 「現在1987年12月20日、時差で差異はあるだろうけど今日から病院に入院してくるのは  母親に抱えられた3歳の幼児。母親はミュール・、幼児は・。  父親のクレフ・は離婚している」 僕はあんたよりずっと年下さ。 は初めてそこで笑った。 彼女の為にあんたを助ける *** 気が向いたら続き書くかも。 2019/02/11