*原作を知ってる夢主がその世界に転生
「ウッソだろオイ・・・」
そう言わずにいられなかった十歳の頃だった。
当時住んでいた近所で一緒に遊んでいた男の子が自分の名前を教えてくれたのをきっかけに、
私は全てを思い出した。
私は二十代半ばに事故死したのだ。
自分は死んだと思った時には記憶はなく、もう一度赤ん坊から新たな生をスタートしていた。
ここがジョジョの世界だと知らなければどれだけ幸せだったことか・・・!
しかも生まれ故郷が杜王町。
1999年には本格的に四部がスタートしてしまう。
スタンドがあれば自分の身を守れるだろうが、私は原作に関してうろ覚えの知識しかないただの一般人だ。
スタンドが見えなければ対処もできない。
私が辿り着いた結論は―――「杜王町を出る」こと。
本編に関与していない土地へいけばスタンドなどの危険はないはずだと考えた結果だ。
高校生になって私は下校以降の時間をアルバイトに費やした。
夜遅くまで働くことに両親には当然いい思いはしなかったが、
前世では終わったら即自転車で爆走帰宅するのをここでも実行している。
お年頃は寄り道したい欲が強いが、本編開始前から行方不明者が続出する町をウロウロしたくない。
そんな感じで高校を卒業後、地元から少し離れた大学に進学。
本当は卒業を機にこの町を出るつもりだったが、大学卒業までここにいてくれと両親に泣きつかれてしまった。
高校から親と話す時間を減らした代償がきたか・・・ごめんなさい二人共。
流石に反省した私は出勤日数を減らした。
それならバイトを続けていいとお許しが出た。いい人たちすぎる。むしろいいの?
けど地道にコツコツ貯めてきたから、町を出たら当分安いアパート暮らしで問題ないと思う。
杜王町脱出計画を立てつつ家族サービスをしていたある日、
今日も金稼ぐぞ〜とバイト先に向かってた途中、突然視界が暗転した。
いや、実際に暗転するのにちょっとかかった。だってあまりにも激痛だったから。
軽く言ってるけどまったく軽くねえよ、めちゃくちゃ痛いんだよ!!
なんで私の首に矢が貫いてるんだよ、ふざけんなよこの矢絶対あの兄貴でしょ!?
クソォ〜〜〜・・・死んだら絶対化けてやる〜!!!
「ちゃん!気がついたのね!道路に倒れてたって聞いた時は本当にどうしようかと・・・!」
・・・なんで生きてるの私??
いやいや、死にたいわけじゃないよ?
どのくらい流したか分からないけど、あの血の量は尋常じゃなかった。
しかものどを貫通していたんだぞ?なんでその傷までないんだ?!
「私、怪我をしたはずなのに・・・」
「怪我?君が運ばれた時にはどこにも目立った外傷はなかったが」
なんと!?
「しばらく勉強に切りつめて疲れたんだろう。先生、娘を一日預けさせてくれませんか?」
「ええ、どうぞお大事になさってください」
自分の意思を聞かず結局入院することに決まった。
「私たちのことは気にするな。しっかり休んで帰って来い」と頭を撫でられた。
本当いい人たちに恵まれすぎてるわ。ありがとう父さん。母さんも心配かけてごめん。
その後怒られる覚悟でバイト先に連絡したら既に話は聞いているようで、
いつもやってくれるからしばらくはシフト休みでいいよと店長からありがたい言葉を頂いた。
とても嬉しいけど今痛い所ないから本当に暇だ。
「さんー!道端で倒れたってホントっすか!?起きてていいのかよ!?」
「見ての通りピンピンしてます・・・あと大声出さないよーに」
「つーかよ〜さん、引っ越してから全然構ってくれないつーか付き合い悪くない?
ははーん、バイトばっかしてたから罰が当たったんスよ!」
「はあ?なんでそんなことでこんな大袈裟にならなきゃいけないの・・・
それと今遊んでる場合じゃないんじゃないの?追試あるっておばさま言ってたし」
「ゲェ!?お、お袋のやつ〜!」
遊びたいのは分かるけど、勉強を疎かにして後々困るのは彼だ。
今度赤点とったらタダじゃおかないわと彼の母がちょっと本気で怒っていたのを思い出す。
「私だって何もしないわけにもいかないんだから仗助くんも頑張って」
「じゃあ追試受かったら付き合ってくださいよ〜!
あとそんなことでって言ってたけどおれにとっちゃ大事なんスから!」
「わかったわかった」
駄々こねるデカイ少年を追い出し、やってきた睡魔に身を委ねた。
矢を受けて生き残った人間がどうなるかは皆の想像通りである。
2019/05/16