*知らなくてもいいこの短編の夢主
元一般人。自分への方向、意思、視線を別の人間に移す能力を持つ。
パワーはないに等しいが本体そのものが強いタイプ。
恐喝やスリなど初めて来る観光客や気の弱そうな人間がターゲットにされる。
私は小さい頃からカモにされやすいらしい。だからといって易々とそうされるのは御免だ。
いつからか私の周りが変わり、そんな傍迷惑行為がなくなった。
それがスタンド能力のおかげだと知ったのはもっと後になってからだった。
「のおかげで最小限に済みました」
「どういたしまして」
あるパーティー会場でターゲットに近づく際、その周りの視界をターゲット以外に向けさせる。
それが私の役割。流血沙汰になろうが、すぐそばにいる人たちは能力を解除しない限りそれに気づくことはない。
殆ど騒ぎにならないのでこの能力は重宝されている。
「もう行って大丈夫?」
「かまいませんよ、後は私たちがやるので」
「ボスからか?」
「うん」
ティアッツィーノとスクアーロと別れてホテル街へ向かう。夜だからか、人通りは少ない。
人目を避けて何度かスタンドを使って指定された部屋のドアの前に立つ。
周りに人がいないかも確認して頭を下げた。
「です、只今到着しました」
「ああ、ご苦労」
その声を聴いた瞬間、既に私は部屋の中にいた。ボスのスタンド能力だろうか。
目と鼻の先に彼がいると判断して頭を下げたまま報告する。
「本日例の件はティアッツィーノ、スクアーロと共に完了しました」
「相変わらず仕事が早いな。頭を上げろ、次の任務はこれだ」
失礼して差し出された紙の束を目に通す。そこに書かれている内容に目を疑った。
「ボス、これは本気ですか?」
「これはお前だから頼んでいるのだ。他の者には任せられない。不都合なことでもあるのか?」
「いいえ。この任務、必ず遂行させます」
記憶に強く刻みつけ必要がなくなったその紙をライターで燃やした。
ボスに関わるものは決して表に出してはならない。
この組織に入ってから、それは暗黙の了解としていた。特にボスから直々に親衛隊に誘われてからは。
「今日の予定は?」
「先程の任務は終わりましたので、今はボスの指令のみです」
「よろしい・・・・・・立て、」
「はい」
膝まづいていた足を上げてすぐに腕を引き寄せられる。引き締まった胸元に自分の顔が当たりそうになった。
今までにない行動にわかりやすく狼狽える私にボスはくつくつと笑う。
「安心しろ、変な真似はしない」
「すっ、すみません・・・」自分がしたことに青ざめてすぐに謝罪した。
「気にするな。今はただ、落ち着きたいのだ・・・」
そう言うな否や、抱きしめらたまま側にあったベットの上に転がされる。
まるで子供がお気に入りのぬいぐるみを抱きしめる、といった感じだ。子供にしては大きすぎるけど。
(こっちが落ち着かない・・・!)
整った顔に身体から香るメンズコロン、成人男性に触れることすらない私には刺激が強すぎる。
ドギマギする私をよそに穏やかな寝息が立てられる。
ゆっくりと顔を上げると長い睫毛が伏せられたボスの顔とぶつかりそうになった。
(どうしてこう平然と寝られるんだ・・・?)
身体が密着していることにパニクっていた私だが、今になって少し冷静に彼の顔を見た。
いつも威圧感のあるボスだが、眠っている様子はそれが抑えられているように思う。
組織を作り頂点に君臨するまで、安眠を得ることはなかったのだろう。
・・・そう言う私も眠たくなってきたな。
全て私の憶測にすぎないがこれだけは断言できる。
良い悪い組織には、絶対的な力があれば安心を得られると。
2020/01/24