「・・・いいかげん娘離れしろよ鷹の目。」
「・・・・・・・・・娘?」
周りに何もない殺風景な孤島に何故か『2人っきり』でいるシャンクスとミホーク。
30代以上のおっさんと一緒など普通はむさ苦しい。
さっきまで無言で静寂しきっていた中、それを破るように突然言い出した赤髪の言葉に、ミホークは首を軽く傾げる。
「おれは子を作った覚えはない。」
「鈍いのか?のことだよ。」
そう言うと眉も動かず「それで?」と答える。
予想通りの素っ気ない一言に、シャンクスは深く溜息ついた。
***
『新世界』―――とある海域の上。
名集る者だけが許されるその場所で、最も世界最強と名が高い海賊
『白ひげ』エドワード・ニューゲートが乗船する海賊船『モビーディック号』が停滞している。
そこから聞こえる楽しげに騒ぐお祝いムードの中、そこにが混じって参加していた。
「〜!飲んでっか〜〜〜!?」
「だから私、未成年。」
「今日は特別な日だからな!遠慮せず飲め!飲め!」
「だからね・・・。」
「やっと船に乗る気になったか!」
「だから人の話を聞きなさい。」
躊躇なく近くにいたその船員の腹に肘鉄を入れた。「ぐへェッ!」カエルが潰れたような変な声が漏れたが気にしない。
ふと目に入った白ひげを見て食べ物を摘んだまま近づく。
「白ひげさん。」
「おい、おれァは『父さん』と呼べと言ったはずだぞ。」
「っ・・・・・・と・・・お父さん・・・。」
「グララララ!よく来てくれたなァ、。楽しんでるか?」
「勿論・・・!」
知らない者はいない世界最強の白ひげと普通に話すは外見上『普通』である。
だがその容姿とは裏腹に、白ひげ海賊団の各隊長とほぼ同格のレベルを持つれっきとした戦闘者だ。
それでも対等に、しかも本当の親子のように楽しんで会話していること事態、驚きものだ。
「あの、白ひ・・・お父さん。」
おずおずと丁寧にラッピングされた袋を取り出し、頬を赤らめながら彼の前に突き出した。
中身は白ひげの体を気遣ってアルコール度数の低い地酒。
「ほお、こいつァいい品物だな。」
「お店の人に聞いたオススメのものを厳選したんだけど・・・あの・・・。」
「どうした?」
「私、まだお酒の味の良さがわからないからお父さんの口に合うかどうか・・・。」
「グラララ!そんなことで悩んでたのか!娘からのプレゼントはどんなものも格別になるもんだ。
おれは酒に殺されたことはねェから安心しろ。」
寛大さを感じる笑い声を飛ばす白ひげに固まっていたの表情はいつの間にか朗らかになっていた。
嬉しそうにその酒の味を楽しむ中、「よく鷹の目が許したなァ。」と突然ミホークのことを聞かれ、
思わず白ひげを凝視する。
「・・・以前お前と初めて会った時ちょうどあいつもいただろう?一風変わった師弟だと思ったが、
頑なに船に乗せるのを拒否しやがったな。」
"一風変わった"―――確かに同じ世界最強の名を持つ剣士が弟子、
しかもそれが女を傍に置いていること等世間では信じ難い話だ。
(と言っても本当に師弟関係だと思っていいのか不明である)
まだ自分が一人立ちしていない頃、偶然出会った白ひげ海賊と自然に仲良くなったことから彼に乗船を誘われた。
それも、ミホークの目の前で。改めて考えるとその時の彼の表情が普段より険しかった。
「まあ・・・まだ認めてもらってなかった小娘だったからね。」
「・・・それだけじゃねェと思うがな。」
「はい?」
「いや―――それよりもう一杯頼む。」
「うん。」
一見師弟で結ばれている2人だが、彼女は気付いていない。
鷹の目がに対する行動や、いつもと変わらないはずの目つきが明らかに違うことを―――。
と言っても顔見知りの者しか、その変化に気付かないのだが・・・。
何年の付き合いか分からないが彼女の反応を見るところ、最近そうなったようだ。
「・・・もう少しゆっくりさせてやっていいだろう?」
白ひげの視線の先には噂すら何とやらの―――鷹の目である。
「―――行くぞ。」
「・・・ごめんなさいお父さん。」
「しょうがねェ野郎だ・・・また来いよ。」
「うん・・・!」
お互い笑みを交わす中、ミホークはその場から微動だにしない。
しかしが白ひげを『お父さん』と呼んだ瞬間、眼光だけで殺せるんじゃないかと思うほど彼を睨んでいた。
「世話になったな。」
「迎えに行くくらいなら何故一緒に来なかった?」
「・・・用があって連れ戻しに来たまでだ。」
―――愛想のねェ野郎だ。
白ひげは最後まで敵意を向ける鷹の目にフン、と愛する娘が入れた地酒を飲み干した。
過保護と言うべきか、はたまた父の一線を超えてしまったのか・・・。
「あいつはどちらの愛情を持ってんだ?」
過保護orLOVE
(結局用事って何なんですかミホークさん)
(・・・)
(あ〜・・・とりあえず、今日は側にいてやってくれ。な?)
(・・・はあ)
(!!・・・赤髪)
(えっ、何で睨むんだよ!!?)